創造と発表の新しい学力
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言葉の森のちょっと未来の話2――どの子も自分に合った進度で勉強でき、学力と創造性を伸ばせる教育システム  2015年9月20日  No.2422
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 日本の寺子屋式の勉強は、従来の欧米式の勉強に比べると、一歩も二歩も進んでいる勉強法です。

 現在、学校教育の中で教育格差が拡大しているのは、その教育が欧米式の教育だからです。
 欧米式の教育とは、等質の生徒集団を前提として、先生が一方的に教える形で理解させ、理解度をテストで評価し、競争で意欲づけを図るという教育です。
 その教育の前提となる社会は、成績が学歴と結びつき、学歴が社会的地位と結びつくという画一的な価値観が中心となっていた社会です。

 戦後しばらくの間は、子供たちは黙っていても勉強する動機がありました。それは、成績が地位と結びつくという社会の価値観があったからです。そして、家庭環境は誰もが等しく貧しいというところで等質でした。

 しかし、その後、受験塾が登場すると、勉強は受験のためのテクニックを必要とするようになりました。
 また、昔は読書とラジオぐらいしかなかった室内の娯楽が、テレビ、ゲーム、インターネット、SNSと多様化すると、娯楽に多くの時間を取られる子も出てきました。
 その結果、等質集団という前提が崩れてきたのです。

 欧米式教育は、できすぎる子と、できなさすぎる子には対応できません。誰もが同じ程度であるときにだけしか効果を発揮できない勉強法です。

 そして、世界の子供たちを取り巻く環境は、社会が貧しいときは等質なので、欧米式の学校教育も効果的ですが、社会が豊かになるにつれて、日本と同じように等質性が崩れてくるはずなのです。

 昔は、等質の生徒集団を、単一の教科書で、一人の担任が教えていました。また、社会全体が教育に求める価値観も共通していました。
 この時期が、欧米式教育の成功していた時期です。

 今は、多様な生徒集団を、多様な教材で、多様な塾がそれぞれに教えています。しかし、先生が教えるという形を前提にすると、欧米式教育を効果的にするためには、少人数学級や習熟度別クラスや個別指導で、等質の集団を細分化する形で作り直さなければならなくなります。
 そして、この多様性を多様性のままに教えるための仕組みづくりの一つとして、ICT教育が期待されているのです。

 しかし、江戸時代の寺子屋教育は、コンピュータのない時代に、多様性を多様性のままに教えるシステムを作りだしていました。
 なぜそれができたかというと、自学自習の方法が確立されていたからです。つまり、今で言う義務教育の年齢では、学ぶべきものはほぼ確定しているので、先生が多様な生徒を一律に教えるのではなく、生徒が自分の進度に合わせて教材を学習し、先生はそれを見守るだけで、ときどき進度の段階を決め直すという仕組みができていたのです。

 しかも、寺子屋教育の利点は、ICT教育のように人間がコンピュータと向き合う孤独な勉強ではなく、集団の中で勉強するという集団の力学も生かしたものだった点にあります。

 その自学自習を進める勉強の一つの方法が、限られた一つの教材を音読によって徹底して反復し身につけるという方法でした。
 つまり、義務教育段階の学力は、理解による方法ではなく、反復による方法で身につければよいという教育観が確立していたのです。

 この寺子屋教育の勉強法をインターネットを活用して現代に生かし、更に、創造性を高める作文教育に結びつけていくというのが、言葉の森がこれから考えている教育のビジョンです。

233-0015 233-0015 横浜市港南区日限山4-4-9言葉の森オンラインスクール 電話045-353-9063
 
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 コメント欄

森川林 20150920  
 日本の寺子屋式勉強法のひとつの名残りが九九の暗唱です。
 欧米では、九九を理解によって一覧表などを使って覚えようとするので、できる子とできない子の差が生まれ、できる子でも大してできるようにはなりません。

 義務教育段階のあらゆる勉強は、九九と同じです。
 しかし、九九は学校の勉強だけではできるようにはなりません。
 ここが、学校と寺子屋の教育法の違いなのです。

森川林 20150920  
 なぜ学校だけでは、九九ができるようにならないかというと、学校は理解の場になっているからです。
 教育の本質は慣れなのですが、学校は理解させる場になっています。そして、その理解を教えるのが先生の役割です。
 では、慣れはどこで身につけるかというと、家庭での宿題か、学校のあともうひとつの塾か、又はその塾で出された宿題かなのです。
 かつての寺子屋では、理解ではなく最初から慣れを身につけさせる教育法が確立していました。それが、限られた教材と音読による反復と集団の中での学習というシステムでした。先生の役割は、教えることではなく、そのシステムをメンテナンスすることだったのです。

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