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未来の社会と教育(その2)  2009年4月8日  No.446
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 現在の教育は、テスト中心の教育です。そのテストに対応する形で勉強の努力が行われます。しかし、みんなができるようになると、その努力を上回るようなテストの問題が作られるようになります。なぜなら、テストの目的は、差をつけることにあるからです。もちろんこれは選抜テストの場合です。世の中には到達度を評価するという目的のテストもありますから、そういうテストの場合は、全員ができるようになることが目的になります。
 選抜を目的としたテストの場合、努力に応じて難しくなったテストの問題に対応するために、勉強の技術が生まれます。しかしその技術が普及すると、やがてその技術をいかにこなしたという努力の差がテストの差になってきます。この場合の努力とは、勉強にかけた時間に換算される努力です。つまり、テスト、技術、努力の三つの要素がお互いに影響し合いながら、らせん状に学力を高めていくという仕組みが現代の教育を特徴的な姿です。現代社会に生きていると、教育のスタイルはこういう形でしか考えられませんが、歴史的には教育はさまざまな形で行われていました。明治維新前の若者たちの勉強は、テストのためというよりも、純粋な向上心によるものだったと思います。長い歴史で見ると、テストのための勉強という時代はむしろ少なく、ほとんどが自分自身の知的好奇心や向上心からの勉強だったでしょう。
 選抜テストが目指す教育の目標と、社会が求める必要な人材の方向は、大体において一致していると考えられます。しかし、テストは、評価の方向が人為的に作られているので、社会が求める人間像からしばしば逸脱してきます。中国の科挙などは、社会体制を維持するための試験制度でしたが、その試験制度が有為な人材を社会の重要な役割につけていたとは言えませんでした。なぜなら、科挙によって成り立っていた中国の社会は、近代化の波に大きく乗り遅れ、その後の中国の植民地化を招いたからです。それに対して、同じ時代の日本の青年は、テストのための勉強ではなく、自らの向上心による勉強に取り組み、その青年たちが、日本の近代化を大きく進めました。つまり、社会が本当に求める人材と青年たちの自主的な勉強が一致していたのです。
 さて、明治維新のような激動の時代でない平和な時代では、社会とはその時代の身分制社会をあらわしています。身分制などというと、それは江戸時代までの士農工商の話であって、現代の社会にはあてはまらないと考える人もいますが、必ずしもそうとは言えません。現代もこれからも、社会の背後には、ある一定の上下関係を維持しようとする力が働いています。これが広い意味の身分制です。日本は比較的平等な社会ですが、世界にはまだ独裁制や貴族制の社会が数多くあります。また、表面は民主主義と平等の社会であっても、人種や宗教による隠れた身分制が存在している社会もあります。それらの社会によって構成された国際社会では、さらに国際的な力関係があります。G8、G20、常任理事国、非常任理事国の差は、国際的な身分の差です。こう考えると、身の回りでは民主主義が成立しているように見えても、社会の基調は身分的な上下関係で成り立っているというのが現実に近い見方です。しかし、それは、必ずしも身分制が悪いということではありません。もともと集団生活を営む性質を持つヒトという種は、グループを形成して生活するのが一般的で、そのグループの中では必ず身分的なものが生じてくるからです。つまり、身分というのは、純粋な力関係ではなく、ある力関係を維持する方向に働く仕組みなのです。
 さて、こういうことばかり書いていると、教育の話が出てこないので、次回は勉強に関連する話を書きます。
(つづく)

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