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6月の森リン大賞(中3以上)  2010年7月24日  No.972
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 6月の清書をもとにした森リン大賞です。

 中学3年生以上のみなさんは、いずれもよく考えて書いています。

 受験勉強の時期に入って多忙な人も多いと思いますが、これからもよい本を読んで、考える材料を増やしていってください。





6月の森リン大賞(中3の部61人中)

光と影
おむふ

 ハレー彗星はいわずとしれた名高い彗星である。古くは紀元前239年に中国で観測されていた。この観測記述をはじめとしてバビロニアの粘土板、日本書紀にもハレー彗星の記録はあり、新約聖書のベツレヘムの星だと説く神学者もいる。この彗星の周期性を見出したのはイギリスのエドモンド・ハレーである。そしてこの彗星は人類史に多大なる影響を与えたものでもあるのだ。先述したように地上のあらゆる文献に記録されている上、世界規模のパニックをもたらしたものでもある。

 1910年のことである。この年はハレー彗星が地球に接近していたときであった。そしてこの接近に世界中は慌てふためいたのだ。太古の古文書に「彗星は不吉の前兆」としているものもある。こうしたことが関与して世界各地にあらゆる噂がとびかった。日本ではハレー彗星接近の際、地球上の空気が一時的に失われるという噂が一部でささやかれた。そのため自転車のチューブを大量購入して、チューブ内の空気を吸気として酸素枯渇に備えるもの、全財産を遊びにつぎ込むもの、水を張った桶で息を止める訓練をしたものまでいたそうだ。ローマではローマ法王庁で「贖罪券」を発行したところ希望者が殺到し、入手することができなかったものがあまりの悲しみ故に自殺するという事例もある。こうしたように世界中が大喧騒となったこの年だが彗星による特殊なことはなにひとつ起こらず、安泰にこの年は終焉を遂げた。 天文学が未発達であった時代であるから十二分に起こりうる騒動であったといえるだろう。しかしこの騒動の根源にあるものを考えると捨て置けない問題でもある。

 人々は非常にメディアなどの報道に惑わされる。かくいう私もニュースなどを目にしている際、特に頭を働かせることもなく全ての情報を鵜呑みにしている傾向にある。先のハレー彗星の報道の要因とはなにか。多くの人が唱えることとしてメディアのいたずらな報道が要因の一つであるそうだ。ハレー彗星に関する誤った知識はメディアによるものが数多い。そうとも、メディアは我々を惑乱させる元凶でもある。ことに我々は視覚的な情報に対して弱い。ニュースの映像を見てしまうとあたかもそれが事件の全てだと錯覚してしまう。ニュースも結局は断片的な映像しか報道しておらず、編集により視聴者に事件本来の姿とは全く違う印象を与えることもできるのだ。 こうした事実を知ったからにはなんらかの対策を取らねばなるまい。1910年のようなかくも恐ろしい事態をさけるにはどうすべきか。この事態の根源にある誤った情報に溺れないようにするにはどうあるべきか。それを考慮していく。

 第一に「自我をしっかりと確立する」ということが挙げられる。 ゲド戦記という小説にこういう一節がある。「川にもてあそばれ、その流れにたゆとう棒切れになりたくなかったら、人は自ら川にならねばならぬ。」この川とは氾濫する情報であり、棒切れとはまさに現在の我々ではなかろうか。そしてこの台詞は我らの行くべき道を示している。そうとも、ただ情報を避けようとしていてはなんら意味はない。周囲を影響するほどの強い自我を確立すればいいのだ。人は何故、情報に惑乱させられるのか。その理由のひとつに自分のしっかりとした考えを持っていないということが挙げられる。どう判断すべきか、どうあるべきか、そういった考えが確立していないとニュースの情報を鵜呑みにしてしまう。こういった映像があるから、これは真実だといった按配で安易に判断する。それではいけない。真に自分が信じるものがあれば情報にも踊らされないだろう。

 先のハレー彗星の話に一旦戻る。1910年の時点で彗星の尾には“シアン化合物”が含まれていることが知られていた(これは真実)。特にこの毒物が地球に害をもたらすということをフランスの科学者、カミ―ユ・フラマリンが唱えていた。大衆はこれに惑わされたともいえよう。確かな事実もあり、科学者も説もある。ハレー彗星はまさに吉兆だ。こう大衆は思ってしまったのだ。しかし心に信ずる一つのことを確立する。それを前提とした上で物事に接する。こうしていればこれを全て鵜呑みにせず多少なりとも騒動を軽減できたかもしれない。現に「“私は学問のみ信ずる”」といったある学者はハレー彗星の騒動の中で平然と「不吉の前触れなど迷信だ」と述べてさほどこの騒動の影響は受けなかったそうだ。“自我を精錬して立てる”これぞ真の道だろう。

 また、第二に「与えられた情報を否定的に考えてみる」ということがある。「人を見たら泥棒と思え」ならぬ、「情報を仕入れたら虚言と思え」だ。情報をまず崩していこうと考えてゆくのだ。例えればこういった具合だ。自分の前に家があったとしよう。だが肯定的には考えない。疑ってみるのだ。これはハリボテかもしれない、ダンボール製の偽物かもしれぬ、いや小さな虫が集まって家に見えているのかもしれぬ、蜃気楼、もしや私は錯視をしているのでは・・・。こうしてみると情報がかなり広く多面的に見えてくるのだ。自分で情報のあらゆる組成を想像するといいだろう。次第に隠れていた陰の面がちらほらと姿を見せてくる。これもまた情報を対処する一つの方法だろう。

 確かにメディアの情報は利便性に満ちている。情報も新鮮であり、分かりやすい。だが、物事とは複雑であり、多面体でもある。メディアも参考として見てはどうだろうか。眼前にある情報の陰になにがあるか。それをまず考える。そうした生き方こそ人間たるものがあるべき姿なのだ。


順位題名ペンネーム得点字数思考知識表現文体
1光と影おむふ872269669110377
2大切なことおのそ86156064737286
3情報をうまく使うこと嵐ちゃん80162548678187
4Are you ready to receive the iarugebak782919568410186
5直感と論理音楽大好き少年7890846677293
6情報のウラポンピー77112651719280
7比喩はいかに大切かなゆか7789353586887
8絶滅(清書)なりし7669351667290
9真実疾風7677656606297
10三分の一の授業トウモロコシ76287638484983


★1位、2位の作品とも、要約の部分が多かったので、代表作品としては表示しませんでした。次回から、清書の場合、要約は省略するか、自分なりの説明に書き換えておいてください。


6月の森リン大賞(高1高2高3社の部143人中)

順位題名ペンネーム得点字数思考知識表現文体
1姿勢と品格いさせ88173364859286
2百年と十年きへあ86113569648786
3身体と心さくら86112959768287
4文化の吸収ゆうちゃり~86117951707496
5自立できない人間いすも83123348647590
6「知る」ことの重要性ちこちこ8298154918792
7人間の生涯は物事を 清書きれあ82110164586590
8身体と精神(清書)PINK81107353849496
9現実的な分析いへゆ8186461677497
10余裕とは何かさきか81104059606886


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