ゲストさん ログイン ログアウト 登録
 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 3312番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/4/26
どんな本を読むか。その前に読まない方がよさそうな本 as/3312.html
森川林 2018/05/20 11:19 

 子供の読む本についての質問を受けることが時どきあります。
 その内容は、どういう本を読んだらよいかというものです。

 確かに、子供にとってよい本を見つけるというのは、大人になってしまうと分かりにくくなります。
 しかし、世の中で読む本は無数にあり、子供たちの本を読む速さは、小学生で1週間平均2冊ですから、年間で約100冊です。
 そう考えると、どんな本を読むかという書名を指定するよりも、どういう本を読んでいくかという方向性を決めておく方が大事だと思うのです。

 その方向性を決める際に、私が考える「読まない方がよさそうな本」というものを挙げてみます。
 それは、子供たちの読んでいる本を見て、時どき疑問に思ったことがあるからです。

 読まない方がよさそうな本の第一は、怖い本です。
 子供たちは、怖いもの見たさという人間には誰でもある心理を持っているので、怖い本というものを意外と喜びます。

 大人は、子供が喜んでいるのだからと思い、そういう本をすすめてしまいがちです。
 しかし、これは、岡潔さんの言う「無明(むみょう)」を子供の心に育てていることだと思うのです。
 子供に限らず、大人でも、怖い話や怖いニュースはよく話題にされがちです。
 それは、無明というものが、人を引きつける力があるからです。

 子供が成長期に読む本は、明るく前向きな、美しい、人生を肯定するような本であるべきだと思います。
 きわめて単純なことです。
 こういう単純なことを、図書選びの基本方針とすることがまず第一です。

 第二に、これは読まなくてもいい本とは言いませんが、それほどおすすめしないという本です。
 それは、「何年生の読み物」というような、短編がいくつかまとめられて編集された本です。
 こういう物語やエッセイが短くつながった本は、手軽に読めるという面があります。
 しかし、それが逆に熱中して読み続けるという、読書の喜びのいちばんの要になる経験をさせにくくします。

 昔、「天声人語」を集めた本を読んだことがありますが、途中ですぐに眠くなりました。
 800字程度の短いエッセイが、次々と始まり、次々と終わるというような本は頭脳を疲労させるのです。

 本の面白さというものは、熱中してその本の世界に没入するところにあります。
 ところが、名作を短編にして、それを数多く並べた「何年生の読み物」という本は、子供が我を忘れて読むということがあまりありません。
 まるで体によいと言われる薬でものむように、その本を少し読んではおしまいにし、また次の日に少し読んではおしまいにする、というような読み方になりがちなのです。

 しかし、短編集であっても、熱中できる本ももちろんあります。
 私が、子供のころ読んだ「世界ふしぎめぐり」という本は、読んでいるとき、声をかけられても気がつかないほど熱中して読んだ経験があります。
 だから、短編集かどうかということよりも、子供が熱中して読めるかどうかということが大事なのだと思います。

▽参考「春風夏雨」(岡潔)より
====
「無明」
 前に京都に行ってピカソの展覧会を見たことがある。馬と女性の二種類の図柄の絵が大部分だったが、そこでわかったことは、これはひっきょう「無明」と呼ばれているものを描いたものだなということだった。無明をこれほどうまく描いているのは全く初めてだ。
 無明というのは仏教の言葉で、私の信奉している山崎弁栄上人の解釈によると、生きようとする盲目的意志のことである。盲目的であるにせよ、ともかく生きようとする意志のことなのだから、それほど恐ろしいものではないだろうし、また、少くとも六道のうちの最高の序列にある人・天の二道における無明は程度が知れていると考えていた。しかし、このピカソの絵を見て、生きんとする盲目的意志がどんなに恐ろしいものかがよくわかった。
 そこに描き出されたものは全く無明そのものなのだった。だから会場でも、一つの絵の前に立ち止ってゆっくり眺めようという気がせず、また二度も見ようなどとは思わず、二十分足らずで出て来てしまったのだった。
 そうして帰りがけに人の顔を見ると、どの顔にも無明が見えて仕方がない。というより、人の顔が無明そのものになっているという感じだった。
(中略)
 ピカソの絵は美を描いたものとはいえない。ここには芥川龍之介のいう「悠久なものの影」は見当らない。しかし、すぐれた人の文化的な作品には違いない。彼が巨匠であることはまぎれもない事実で、その作品は巨匠の傑作というほかはない。彼は醜悪なものを絶えず見つめることによって、その本質を描けるようになったといってよい。
====


 国語読解力は、あらゆる学力の基礎。問題集読書の復読と、読解検定の自主解説で確実に力がつく
国語読解力は、あらゆる学力の基礎。問題集読書の復読と、読解検定の自主解説で確実に力がつく。

コメント欄

森川林 2018年5月20日 11時38分  
 子供の本選びのことを考えていて、岡潔さんの「無明」の話とつながることがあると思いました。
 子供は、無明の方を選んでしまうことも多いのです。


nane 2018年5月20日 11時50分  
 若いときは、無明の方に真実があると思いがちです。
 しかし、無明を直視しようというのは、無明に負けていることです。
 では、現にある無明をどうするのかというと、それは無明のない世界を創造することです。
 例えば、「人間が食べるためには生き物を殺さなければならない」というのは、真実ではなく無明です。
 生き物を殺さなくても食べられるものを創造すればいいだけです。
 たとえ時間はかかっても、こういう方向がわかれば、無明の周囲を堂々巡りをする必要はなくなります。
 これが、手塚治虫の「ジャングル大帝レオ」のひとつの主題になっているのではないかと思います。
 話が飛びすぎか(笑)。


nane 2018年5月20日 12時9分  
 無明とは、暴飲暴食や二日酔いのことです。
 たまには、そういうことがあっても人間味があっていいのです。(よくないか)
 しかし、暴飲暴食や二日酔いが人間の真実ではないということです。

コメントフォーム
どんな本を読むか。その前に読まない方がよさそうな本 森川林 20180520 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
おかきく (スパム投稿を防ぐために五十音表の「おかきく」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
読書(95) 
コメント1~10件
森リンベストの 森川林
じすけ君、ありがとう。 統合失調症のような、また似たような 4/21
森リンベストの じすけ
こわばんは 今日は元気一杯、体験発表をさせて頂きます。 4/20
国語読解問題の 森川林
 あるとき、高3の元生徒から、「国語の成績が悪いのでどうした 3/28
今日は読書3冊 森川林
苫米地さんの「日本転生」は必読書。 3/25
共感力とは何か 森川林
言葉の森のライバルというのはない。 森林プロジェクトで 3/23
3月保護者懇談 森川林
 いろいろ盛りだくさんの内容ですが、いちばんのポイントは、中 3/22
中学生、高校生 森川林
 意見文の書き方で、もうひとつあった。  それは、複数の意 3/14
【合格速報】栃 森川林
 おめでとう!  受験勉強中も、硬い説明文の本をばりばり読 3/13
受験作文と入試 森川林
将来の作文入試は、デジタル入力になり、AIで自動採点するよう 3/13
大学入試が終わ 森川林
大学生になっていちばん大事なことは学問に志すこと。 18歳 3/12
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
近所のローソン 森川林
毎日新聞を見たけど、記事はまだ載っていまでした。 4/25
毎日新聞に言葉 森川林
 しばらく前に、毎日新聞の人が取材に来ました。  そのとき 4/24
テスト送信 森川林
https://www.mori7.com/za2024d0 4/24
4月保護者懇談 森川林
シラン ●今後の「森からゆうびん」の学習デ 4/22
マスクにしても 森川林
マスクにしても、ワクチンにしても、消毒にしても、 自分たち 4/21
イエスも釈迦も 森川林
イエスも釈迦も、理想の社会を築きたいと思っていた。 しかし 4/21
日本復活の道筋 森川林
 工業製品を経済発展の原動力をした資本主義は終わりつつある。 4/17
メモ 森川林
https://www.mori7.com/za2024a0 4/16
単なる作業 森川林
勝海舟は、辞書を買うお金がなかったので、ある人から夜中だけ辞 4/8
勉強は、人に教 森川林
勉強は、人に教えてもらうのではなく、 自分で学べばよい。 4/7

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習