記事 3727番  最新の記事 <一つ前の記事 一つ後の記事> 2019/6/27 
未来の教育は、平均的な知識を詰め込む教育ではなく、各人の個性を伸ばす教育になる――発表学習のすすめ
森川林 2019/05/18 20:11 

 これまでの工業時代の教育は、国語算数理科社会という主要教科に見られるような平均的な知識を詰め込む教育でした。
 なぜそれが必要だったかというと、人間が機械の歯車の一部として仕事をするためには、どの部分の歯車にもなれる平均的な能力が必要だったからです。

 だから、大人になってからの実生活でほとんど使うことのなかった知識――大化の改新の年とか鎌倉幕府の年とか、植物の導管と師管の区別とか、フェノールフタレイン溶液の用途とか、そういう雑多な知識をみんなが同じように学んできたのです。

 これは、否定的な意味で書いているのではありません。
 工業時代までは、そういう平均的な何でもひととおりできる学力が必要だったから、誰もがそれを目標にして勉強をしていたのです。
 そして、その成果が、現在のような豊かで便利な工業社会を生み出したと言えます。
(もちろん工業化の行き過ぎが、環境の破壊や文化の破壊につながった面はありますが。)

 しかし、今、その平均的な詰め込み教育の前提となる社会が、大きく変化しています。
 数年前、海外の入試で、スマホを使ったカンニングが問題になったことがありあます。
 また、これも海外の話ですが、大学生のレポートで、他人のレポートをコピーしたものが問題になったことがあります。
 大学側は、これらの対策として、試験会場にスマホ持ち込み禁止とか、レポートのコピーを見破るソフトの開発とかいうところに力を入れていったようです。

 しかし、本当の問題は、学生がカンニングやコピーをしたことではなく、カンニングやコピーで済むような問題で試験をしているところにあるのです。
 学生が社会に出て仕事を始めるとき、いろいろな情報を調べたり、ほかの人のいいところを真似したりということは当然あります。
 もちろん、そこに独自の創造性がなければ、社会から評価されることはありませんが、しかしその独自の創造性の前提としての調査や模倣は当然あるのです。

 だから、理想の試験とは、何を調べても写していいから、そこから自分らしいものを作り出す可能性があるかどうかということを見る試験です。
 しかし、それは、試験というよりも、むしろ直接的な実践そのものです。

 つまり、その人が世の中に個性的創造的なものを生み出しているかどうかということが、日々問われているのが、その人の人生なのです。
 そして、誰が問うのかといえば、それはその人自身です。
 なぜなら、自分が新しいものを創造することが、その人の生きる喜びの大きな部分を占めているからです。

 工業時代の教育と、工業時代のあとの教育の違いはここにあります。
 もちろん、世の中には、平均的な知識を満遍なく身につけることを個性とする人もいます。
 そういう役割は、どういう世の中になっても必要だからです。
 だから、平均的な知識を否定するのではなく、個性を伸ばすという大きな枠の中で平均的な知識を習得する教育も考えていくということです。

 では、個性を伸ばす教育は、具体的にどのようなやり方で行われるのでしょうか。
 その答えのひとつが、発表学習です。
 子供たちが、自分の好きなことを自由に研究し、それをみんなに教える(発表する)という勉強の仕方です。

 発表学習クラスの子供たちの発表を見ると、ほとんどの子が毎週、ユニークな面白い発表を行っています。
 これらの子供たちは、学力も十分にあります。
 だから、普段の勉強以上の独自の研究発表ができるのだと思います。

 しかし、発表学習は、自分の好きなものがある子なら、誰でも取り組めます。
 極端なことを言えば、ゲームの好きな子は、ゲームを研究し発表してもいいのです。
 好きなゲームをただやっているだけなら、あまり進歩や向上というものはありません。
 しかし、それをほかの人に発表するとなると、そこに個性や創造性を作り出さなければならなくなります。
 それは、個性的、創造的なものでなければ、ほかの人は興味を示さないからです。

 この構造は、実は、社会そのものの仕組みと同じです。
 社会では、誰でも、自分の好きなことを何でもやっていいのです。
 しかし、それが人に評価されるかどうかは、そのやっていることが個性的創造的かということに関連しています。

 人間は、自分の好きなことをやるのはうれしいものですが、それを人から評価されるのは更にうれしいものです。
 また、最初は人から評価されるのがうれしいから、個性的創造的にやっていたものが、やがてその創造の面白さが発展して、人の評価以上に創造の喜びが動機となって自分の好きなことを続けていくようになります。

 そのように、すべての人が自分の個性を創造的に伸ばしていくのが、未来の社会の人間の生き方になります。
 発表学習とは、そういう未来の社会を生きるために、第一に必要となる教育です。

 現在の入学試験は、多数の受験生を短期間で採点しなければならないという技術的な制約から、ペーパー試験が中心になっています。
 紙の試験で評価できるものは、基本的に知識の詰め込み度合いだけです。
 その生徒の思考力や表現力は、作文試験や面接試験である程度評価できますが、その生徒の個性や創造性を短期間で評価できる試験方法はありません。

 だから、近年の東大の推薦入試では、何か月も時間をかけて、受験生の個性的な創造を評価する仕組みにしたのです。

 この個性と創造性を評価する仕組みが、将来の試験の主流になります。
(ただし、将来は試験ということそのものがなくなっていくと思いますが、それは別の話なのでまたいつか。)

 会社の就職試験でも、会社が本当に採用したい人材は、学力は普通にまともにできている程度でいいから、個性と創造性と社会性のある人材です。
 同じように、将来の学校の入学試験も、学力は、センター試験なら8割、学校の成績ならオール4という普通の学力でいいとして、その学力の担保の上に、個性と創造性と社会性(コミュニケーション力)を見るものになっていきます。
 それは、大学入試そのものが変わるので、それに応じて、高校入試も、中学入試も変わっていくからです。

 発表学習クラスに参加する子供たちが、いろいろな入試に臨むころは、まだそういう試験は主流にはなっていないかもしれませんが、しかし、将来の教育の先取りをしている気持ちでこれからも個性的な発表をしていくといいと思います。


■言葉の森の教室紹介
面白い勉強で実力がつくオンラインの学習【動画】

コメント欄

森川林 2019年5月18日 20時31分  
 いい学校を目指す理由の第一は、いい友達と出会い知的な刺激を受けることにあります。
 勉強の中身は、今はどこでも手に入るので、いい授業とかいい先生とかいうのはあまり重要ではなく、いい友達というのが最も重要です。
 寺子屋オンラインの作文クラスや発表学習クラスは、学校とは違いますが、ある程度それを実現していると思います。
 ある程度というのは、まだそのコンセプトが十分に理解されていない面もあるからですが、いずれコンセプトもみんなが共有できるようになると思います。

nane 2019年5月18日 20時38分  
 発表学習は、うちの子が小学生だったら、第一にやらせたかった勉強です。
 また、寺子屋オンライン作文も、絶対にやらせたかった勉強です。
 昔は、個別電話指導しかなかったので、その方法でずっと勉強していましたが、子供は(特に学年が上がるほど)、友達どうしのやりとりの中で成長していくからです。
 その子供どうしの切磋琢磨をうまくコントールして活性化させていくのが先生の役割です。


コメントフォーム
未来の教育は、平均的な知識を詰め込む教育ではなく、各人の個性を伸ばす教育になる――発表学習のすすめ 森川林 20190518 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
ひふへほ (スパム投稿を防ぐために五十音表の「ひふへほ」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

(za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
メルマガの配信
▼バックナンバー
○一般用 ダイジェスト版
○生徒用 完全版

Facebookページ
言葉の森作文ネットワーク
いいね! 17,226件
新着コメント1~3件
作文の書き方— 森川林
 プリンさん、お返事が遅くなって失礼。 10:12
読解検定裏話― nane
 読解問題の作成で大変なのは、厳密に考え 6:0
読解検定裏話― 森川林
 勉強のよくできる人でも、国語の勉強の仕 6:0
……次のコメント

オープン教育 1~3件
オープンの川
鳥の村 1~3件
鳥の村
虹の谷 1~3件
虹の谷
過去の記事

過去の1~30件目を表示
■【事務連絡】「山のたより」の公中検返却日程のプリントミス 6月27日
■読解検定裏話――7月の読解検定はサマーキャンプでも 6月27日
■【重要連絡】言葉の森の料金システムの変更といろいろな企画のお知らせ 6月26日
■STEM教育の先にあるもの――発表学習クラスの授業から 6月25日
■6月の読解検定終わる――百点は2名 6月23日
■STEM教育の先にあるもの(その1) 6月23日
■言葉の森のオンラインスクール宣言――言葉の森は、作文教室を含めたオンラインスクールとなります 6月22日
■自主学習クラスの4週目の実力試験ほかのお知らせ 6月21日
■言葉の森のオンライン学習の特徴 6月21日
■最初の定期テストで高得点――勉強は自分のペースでやるときに最も能率がよい 6月19日
■四行詩いろいろ 6月18日
■友達と一緒に「自宅」で、勉強、読書、交流ができる、対話のあるオンライスクール 6月17日
■6.4週の授業の動画をアップロードしました 6月16日
■教わらないが、いつでも質問のできる勉強が最も効率がよい 6月14日
■今の作文の勉強の仕方で本当に上達しますか――作文が苦手になる前に早めの対策を 6月13日
■公立中高一貫校受検に向けての勉強は無駄にならない 6月12日
■普通の国語のテストと読解検定は違う――国語の過去問対策はなぜ必要か 6月11日
■ウェブカメラを机上に向けて勉強する仕方 6月10日
■6.2週と6.3週の授業の動画をアップロードしました(小1~中1) 6月8日
■勉強の基本は読み書き算盤だが、実は読み書き算盤を続けることがいちば難しい――それをカバーするのが自主学習クラス 6月7日
■グループ学習と個別学習の融合――新しいオンライン教育の仕組み 6月6日
■寺子屋オンラインの「作文クラス」「発表学習クラス」の案内資料(2019年6月) 6月5日
■オンライン学習塾という考え方 6月4日
■オンライン自宅学童という考え方から、オンライン自宅小学校へ 6月3日
■発表学習クラスで創造的な勉強が好きになる 6月1日
■これまでのキャンプの記録を参加者全員にお送りしました 6月1日
■×があるほど良い試験――読解検定試験の結果返却――次回は6月23日(日) 5月31日
■6.1週の作文のヒントをアップロードしました(小1~中1、ハイパー作文コース) 5月30日
■小学3・4年生は、作文がいちばん楽しく書ける時期 5月29日
■注意して直す作文では上手にならない――ハイパー作文コースの再開 5月28日
……前の30件
HPの記事検索
ホームページの全記事

 言葉の森新聞

Twitter
言葉の森@kotomori

RSS
RSSフィード

代表プロフィール
森川林(本名中根克明)

講師ブログ
言葉の森の講師のブログ

算数の通信教育
できた君の算数クラブ

カテゴリー
全カテゴリー
ICT教育(1)
遊び(6)
新しい産業(23)
暗唱(121)
生き方(41)
息抜き(19)
いじめ(1)
インターネット(25)
英語教育(10)
オープン教育(24)
親子作文コース(9)
オンエア講座(41)
音声入力(10)
音読(22)
外国人と日本語(4)
科学(5)
学問コース(1)
学力テスト(2)
合宿(14)
家庭学習(92)
家庭で教える作文(55)
漢字(17)
帰国子女(12)
教育技術(5)
教育論文化論(255)
教室の話題(26)
行事と文化(1)
ゲーム的教育(4)
合格情報(27)
高校入試作文小論文(10)
構成図(25)
公立中高一貫校(63)
国語問題(15)
国語力読解力(155)
子育て(117)
言の葉クラブ(2)
言葉の森サイト(41)
言葉の森の特徴(83)
言葉の森のビジョン(51)
子供たちの作文(59)
作文教育(134)
作文検定試験(4)
作文の書き方(108)
算数・数学(22)
自習検定試験(10)
自習表(5)
自然災害(1)
実行課題(9)
質問と意見(39)
受験作文小論文(89)
小学校低学年(79)
森林プロジェクト(50)
政治経済(63)
生徒父母向け記事(61)
生徒父母連絡(78)
全教科指導(2)
センター試験(7)
創造力(9)
大学入試(14)
対話(45)
他の教室との違い(22)
知のパラダイム(15)
中学生の勉强(21)
中高一貫校(11)
寺オン作文クラス(2)
寺子屋オンライン(101)
読書(95)
読書感想文(19)
読書実験クラブ(9)
友達サイト(7)
日本(39)
日本語脳(15)
発達障害(1)
発表交流会(20)
東日本大震災(15)
facebook(29)
facebookの記事(165)
プログラミング教育(5)
勉強の仕方(119)
未来の教育(31)
MOOC(2)
無の文化(9)
メディア(8)
森の学校オンライン(2)
森リン(103)
問題集読書(33)
読み物(1)
四行詩(13)
未分類(378)

QRコード






 
小学生、中学生、高校生の作文(2007年4月まで)
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。