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「すべての成績は、国語力で9割決まる!」を読んで as/1357.html
森川林 2011/09/21 19:18 


 「すべての成績は、国語力で9割決まる!」(西角けい子著 ダイヤモンド社)に、優れた国語の勉強法が載っています。

 言葉の森の勉強法と共通する点が多かったので、国語の勉強法を考えている人に参考になると思いました。



 第一は、明るく肯定的な声かけを重視していることです。

 言葉の森でも、保護者の方には、「子供の作文は欠点を直そうとするのではなく、よくできたところを褒めるようにしてください」と言っています。

 作文の欠点は、読む力がついてくれば自然に直るか、ひとことのアドバイスですぐに直ります。しかし、読む力がまだついていないときに作文の欠点を直そうとすると、同じことを何度も注意するようになります。そして、真面目な注意を何度も繰り返して、親も先生も子供もくたびれてしまうのです。

 では、作文のどこを褒めるかということ、書いた作文をただ漠然と褒めるのではありません。そういう褒め方をしても、子供は褒められることに喜びを感じません。子供は、自分が努力してできたときに褒めてもらいたいのです。

 ここで役に立つのが事前指導です。言葉の森では、作文を書く前に、事前にどういう構成や表現で書くかということを指示してから書くようにしています。そこで、子供は目標を持って書くことができるので、その努力を誉めることができるのです。



 参考になる点の第二は、国語力はすべての学力の要になっていると考えていることです。

 言葉の森で勉強している子の中に、習い事は言葉の森だけで、ほかの勉強はしていないという子がときどきいます。勉強というと、普通、国語、算数、英語の3教科などと考えがちなので、国語の勉強だけでは足りないと思う人がいるかもしれませんがそうではありません。

 算数や英語の習い事に行けば、確かに学校よりも先のことまで勉強できます。しかし、先に進んだように思うのは、学校でみんながその勉強に入るときまでです。みんなが同じところまで勉強を進めてくれば、違いは本人のもともとの実力だけになります。そして、国語力のある子は実力のある子なので、数学も英語もやり始めるとすぐに力がついてくるのです。

 だから、小学校の間の勉強は、国語を中心にしていくといいのです。しかし、国語力とは、漢字の読み書きの力ではありません。漢字力も、国語力の一部ですが、国語でいちばん大事なのは読む力と書く力です。読む力と書く力さえしっかりつけておけば、漢字力も必要に応じていつでもつけることができます。ただし、いつでもと言っても、それなりの時間はかかります。しかし、その時間は、小さいころから毎日こつことつ積み重ねて勉強した時間よりもずっと短くて済むのが普通です。



 参考になる点の第三は、毎日家庭で短い時間の自習をしていることです。

 言葉の森では、家庭での毎日の自習として、課題長文の音読(2、3分)、暗唱長文の暗唱(10分)と、読書10ページ以上(高学年の場合は問題集読書も含む)を勧めています。

 なぜ毎日の家庭での短時間の勉強が大事かというと、国語力は生活習慣の中で身につくからです。

 数学や英語の勉強は、教室に行ってそこで勉強するだけでも力がつきます。それは、数学や英語で身につける学力というものが、知識としてある程度分離できるものだからです。

 しかし、国語で身につけるものは知識ではありません。

 国語における読む力と書く力は、身体化された力ですから、何かを読むときも、自分が読む力を使っているなどと意識することなく読んでいます。文章を書くときも、手が自然に動くような感覚で書いています。このような身体的な力は、生活の中で毎日反復することで身についてくるのです。

 塾や予備校では国語の力はつかないと言われるのは、国語力というものが身体化された力だからです。国語は、生活の中で読む力書く力をつけておくことが最も大事な教科なのです。(学習塾で、国語の成績を上げるというところがあります。国語の点数は解き方のコツを説明すると確かに上がります。しかし、その上がるのは、その子のもともと持っている国語力までです。)



 参考になる点の第四は、音読を繰り返すことを読む勉強の中心にしていることです。

 言葉の森での自習の中心も、音読の反復と読書です。読む力は、多読と精読の両方によって身につきます。自分の好きな本を楽しく読むのが多読です。精読とは、ちょっと難しい文章を繰り返し読むことです。

 多くの人は、精読というと、単語や熟語の意味などを調べながら時間をかけてじっくり読むものだと考えると思いますが、そういう読み方ではかえって読む力がつきません。精読とは、ただ繰り返し読むことです。

 灘校の国語教師だったエチ先生が「銀の匙」を中学生の授業で3年間かけで読んだという話があります。しかし、そこで子供たちの読む力を育てたのは、じっくり読んだことではなく、先生との対話を繰り返したということだったのです。

 話を聞くことは、読書をすることと同じ効果があります。また、自分が話をすることは、作文を書くことと同じ効果があります。しかし、話を聞くことも、話をすることも、自分の実力よりもちょっと背伸びしたものでなければ効果は出てきません。

 言葉の森が20年ほど前に音読の勉強を始めたころ、保護者の方から、「音読でどうして力がつくのか」という疑問の声を何度も出ました。しかし、その後、斉藤孝さんの音読をすすめる本が流行になると、学校でも音読に力を入れるようになりました。すると、今度は、「学校で音読の宿題が出るから、言葉の森の音読までできない」という人が出てきました。

 ところが、音読というのは、実は退屈な勉強です。退屈な勉強なので、子供も親も、同じ文章を繰り返し読むよりも、新しい文章を読みたがります。たぶん、学校でも、授業で習うところを数回音読するという宿題を出しているところが多いのではないかと思います。

 音読で効果が出るのは、その文章を部分的に暗唱できるぐらいまで繰り返し読むことによってです。言葉の森では最初のころ、12種類の長文を3か月読むという音読の仕方をしていましたから、真面目に毎日読む子は、1編の長文を10回近く読むことになりました。こういう音読の仕方をしていた子は、毎日のわずかな時間の勉強で国語力がつきました。しかし、こういう単純な勉強を続けられる子はあまり多くいませんでした。

 国語力をつけるために、天声人語の要約をするという勉強法がありますが、この勉強法よりも長文の音読の方が効果があります。その理由は、(1)新聞のコラムの文章は入試問題のレベルの文章に比べて易しすぎる、(2)書く勉強は、読むだけの勉強に比べて時間がかかる、ということがあるからです。国語の実力は読んだ回数に比例します。例えば、800字のコラムの音読は2分でできます。しかし要約をすれば15分から30分はかかります。だから、同じ時間をかけるのなら、要約を1回するよりも、その文章を10回読んだ方が読む力がつくのです。

 音読の効果が実感できるのは、子供にその長文を説明させるときです。音読を繰り返してきた子は、長文の内容が丸ごと頭に入っているので、その長文を見ないでも、自分の言葉で自由に内容を説明できます。しかし、音読を繰り返していない子は、その場でいくらじっくり読んでも、たどたどしい説明しかできません。だから、読解力をつけるには、まず音読を繰り返すことなのです。

 ところが、単調な勉強はどの子も嫌がります。特に、音読の反復は、問題を解くような形の残る勉強に比べて、あてのない勉強のような感じがします。本当は、問題を解いても国語力はつかないのですが、形が残ると勉強しているような気がするので続けやすいのです。

 そこで、言葉の森は、その後、音読を更に発展させた暗唱の自習をするようにしました。これは、毎日10分の練習で、長文を丸ごと暗唱するという練習です。記憶力のよしあしに関係なく、手順を踏めば誰でも簡単にできる勉強です。



 以上のように、西角式の国語の勉強法と言葉の森の勉強法は似ている点がかなりありましたが、違っている点ももちろんいくつかありました。

 違いの主なものを挙げると、第一に、西角式では、書いて暗記する勉強をしているのに対して、言葉の森では、まだ書いて覚える勉強はしていないところです。

 言葉の森で、今考えているのは、暗唱した長文をそのまま丸ごと暗写する勉強にまで発展させることです。暗写の勉強をする場合、学年で習う漢字もひととおり書けるようになれば能率がいいので、今、学年別の漢字を全部盛り込んだリズム感のある長文を考えています。この暗写の勉強も取り入れると、暗唱の勉強が更に充実したものになると思います。



 第二の違いは、西角式では、教材と教室と先生が重要な役割を果たしているように見えることです。

 言葉の森の勉強の理想は、誰でもいつでもどこでもできるシンプルな勉強です。もちろん、言葉の森の講師は、子供たちから人気のある親身で熱心な先生ですから、先生は重要な役割を果たしています。また、言葉の森の教材は、すべてオリジナルなものですから教材も重要な役割を果たしています。

 しかし、勉強が、先生の持ち味や教材の独自性に頼っていては、日本中の子供たちの実力をつけるのには間に合いません。言葉の森では、今、森林プロジェクトという名称で、日本全国の子供たちの学力をつける運動を計画しています。そのためには、家庭での対話と自習を中心にして、誰が教えても実力のつく方法を開発しているところです。



 第三は、これは違いということではないかもしれませんが、言葉の森では、教室での勉強の前後に、家庭での対話を位置づけていることです。作文を書く前に、家庭で親子が対話をし、作文を書いたあとにも、家庭で親子が対話をする形で、子供たちの意欲を伸ばしていきたいと考えています。

 子供たちのほとんどは、学校や塾で勉強しています。それは、小中学生の時期は、友達という集団に帰属することが意欲の源泉になっているからです。高校生以上になると、勉強の目的がはっきりしてくるので、学校や塾や予備校に通わなくても、自分ひとりで勉強できますし、ほとんどの場合自分ひとりで勉強した方が能率がいいのですが、小中学生はそうではありません。学校の友達と一緒にいるという感覚がないと、勉強も遊びも運動も意欲的に取り組めないのです。(つづく)


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