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読解検定裏話――7月の読解検定はサマーキャンプでも as/3766.html
森川林 2019/06/27 05:42 

 読解検定に取り組んだ生徒が、自分の答えたところが間違っていた場合、納得できずに質問してくることがあります。
 読解問題は、非常に厳密に作ってあるので、微妙なところで正解と不正解が分かれてきます。

 問題を作成したこちらの方も、何度も読み返して誤解なく正解が一義的に決められるように作っていますが、文章全体が関連してくるので、たまにその厳密性からもれるところが出てきます。

 だから、生徒から質問があると、こちらも何かおかしいところがあったかなと心配する面があるのです。
 もちろん、ほとんどの場合、正しい答えのままで正しいのですが、中には生徒の考え方も合っているという場合があります。
 だから、問題を作成する人は、問題を解く人よりもずっと長い時間をかけて問題を作っているのです。

 ところで、そのように毎回よく質問してくる生徒は、みんな優秀です。
 昔、読解問題の週に、毎月のように質問してくる生徒が2人いました。
 一人は慶應高校に入り、一人は東大に入りました。

 百点を取って当然という考えで読解問題に取り組んでいますから、8割や9割できたからいいということではなく、できなかったところは納得できるまで聞いてくるのです。
 このように厳密にものを考える習慣のついた生徒は、勉強のすべての分野にわたって学力がつきます。

 だから、読解検定では、いい点数を取ることは目標ですが、目的ではありません。
 目的は、×だったところの理由を考えて、自分なりに厳密に文章を読む習慣をつけることです。

 厳密に読む読み方の例は、「読解・作文力が身につく本」に書いてあります。
 しかし、子供がひとりで読むには、内容はかなり難しいので、お父さんお母さんがまず読んで、子供に説明するときに使うようにするといいと思います。

 読解検定試験は、毎月やっていますが、7月はサマーキャンプと重なるので、現在日程を調整しているところです。
 サマーキャンプの参加者も取り組むようにすれば、ちょうといいと思うので、7月4週あたりの参加者は全員読解検定をやるかもしれません(笑)。

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森川林 20190627  
 勉強のよくできる人でも、国語の勉強の仕方を知らない人はかなり多いです。
 意外に思うかもしれませんが、塾や予備校の国語の先生も知らないのです。
 だから、塾や予備校に行って国語の成績が伸びたという話はまず聞きません。
 しかしもちろん、言葉の森でも、話を聞くだけの人はだめです(笑)。
 ちゃんとやることを実践するのが、読解と作文を上達させる条件です。

nane 20190627  
 読解問題の作成で大変なのは、厳密に考えて一義的に正解の決まる選択肢を作ることです。
 これには、かなり時間がかかります。
 もうひとつ、時間のかかるのは、オープン長文にダジャレを入れることです(笑)。
 この長文は面白いので、子供たちは喜んで音読をしているようです。


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記事 3765番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/4/19
【重要連絡】言葉の森の料金システムの変更といろいろな企画のお知らせ as/3765.html
森川林 2019/06/26 03:54 

■7月から基本料金制に――ほとんどの人は現状との変更はありません

 言葉の森の料金システムは、これまでは次のようでした。
○作文8,434円(中学生以上8,948円)……必修制
○発表学習クラス3,240円……オプション(選択制)
○自主学習クラス3,240円……オプション(選択制)

 これを、下記のように変更し、発表学習クラスや自主学習クラスも、単独で受講することができるようにします。
○基本料金5,194円(中学生以上5,708円)
○作文、発表学習、自主学習は、いずれも3,240円でオプション(選択制)にし、単独でも組み合わせても受講可。
 したがって、現在と同じ形で受講を続ける方に関しては、料金面での変更はありません。

■10月から、再入会の際に事務手数料3,240円がかかるようになります

 これまで入会金は10,800円(ご兄弟の場合は1人分のみ)で、いったん退会された方が再入会される場合の入会金はかかりませんでした。
 10月からは、退会されていた方が再入会される場合、事務手数料として3,240円がかかるようになります
 また、ご兄弟で受講される場合、ご兄弟の2人目以降の方にも、事務手数料として3,240円がかかるようになります
 2019年9月末までは、従来のまま、事務手数料はなし、ご兄弟の入会に関する費用はなしということにします
 再開、及びご兄弟の受講を予定されている方は、9月中に手続きをおとりくださるとよいと思います。
※上記の金額は、現行の消費税8%で計算したものです。

■言葉の森は、作文教室を含めたオンラインスクールになります
(6月22日に言葉の森のホームページに掲載した記事と同じ内容です。)

 言葉の森は、これまで作文・小論文の指導を中心に行ってきましたが、現在、読解検定、暗唱検定、発表学習クラス、合宿教室、教育相談など、作文の枠を超えたものにも数多く取り組んでいます。
 また、今回、自主学習をクラス単位とし、中学入試、高校入試も含めた全教科の学習指導をオンラインで行うようにしました。

 言葉の森には現在60名の作文講師がおり、その多くは10年、20年以上の経験を持つベテランの講師です。
 また、現在森林プロジェクトの作文講師資格講座に合格した講師が100名以上います。

 これらの現状をもとに、7月から、言葉の森を「オンラインスクール」という形で定義することにしました。
 したがって、作文指導も、オンラインスクールの中の作文の指導という位置づけになり、発表学習クラスや自主学習クラスも、オンラインスクールの中のそれぞれのクラスという位置づけになります。

 当面の実際の指導運営は、これまでと変わりませんが、将来はオンラインスクールという面を更に大きく打ち出していき、授業時間の枠も午前中から夜間にまで広げていく予定です。

 言葉の森に現在参加されている方も、今後、言葉の森を、学習塾や学校と同じようなものとして参加、活用していってくださるようお願いします。
 具体的には、海外の方はオンラインの日本語補習校として利用できます。
 国内での不登校の方はオンラインのフリースクールとして利用できます。
 学校から帰ってひとりで家で留守番をしている方はオンラインの学童クラブとして利用できます。
 学習塾に通っていた方は、言葉の森を新しい学習塾として利用できます。
 また、言葉の森を長年受講してきた方は、言葉の森の同窓会に参加することができます。

 また、長年、言葉の森の生徒の保護者としてご子息の勉強を見てきた方は、その経験を生かして、言葉の森の講師の資格を取り、言葉の森のこれからの教育に一緒に参加していただけるとよいと思います。

■言葉の森のサマーキャンプの参加者募集(1日20名まで)

 言葉の森のサマーキャンプの参加者を募集中です。
 現在の日程別参加者は下記のとおりです。
 ほとんどが言葉の森の生徒ですので、ひとりで参加する場合もすぐに友達ができます。
 また、言葉の森の生徒以外のお友達と一緒に参加することもできます。
 参加状況を見て、日程を変更することは随時出来ます。
 詳細は、「サマーキャンプの案内」をごらんください。
 概要:参加費1日10,800円で日数は自由(2泊3日の場合は32,400円)。
    対象は小1~中3。ご家族の参加可。言葉の森の生徒以外も同じ条件で参加できます。
    午前中は作文感想文・読書・勉強、午後は自然の中での遊び。
    那須塩原駅10:30集合、解散那須塩原駅10:30解散
   (土曜日のみ東京駅―那須塩原駅間の引率あり。東京駅銀の鈴広場8:30集合、東京駅銀の鈴広場12:30解散))
    合宿所は駐車スペースが6台分あるのでマイカーで参加することもできます。
   (マイカーのチェックインは16:00~20:00(夕食あり)、チェックアウトは7:00~11:00(朝食あり))

●作文読書サマーキャンプ案内


●参加者一覧(6月25日現在)


7/20(土)






1.森川林講男
2.エミミ小1女
3.さちよ保女

7/21(日) 7/22(月) 7/23(火) 7/24(水) 7/25(木) 7/26(金)
7/27(土)
1.森川林講男

1.森川林講男
2.いろはちゃん幼児女
3.さっちゃん小2女
4.あやちゃん小1女
5.まい保女

1.森川林講男
2.いろはちゃん幼児女
3.さっちゃん小2女
4.あやちゃん小1女
5.まい保女

1.森川林講男

1.森川林講男

1.森川林講男

1.森川林講男

7/28(日) 7/29(月) 7/30(火) 7/31(水) 8/1(木) 8/2(金)
8/3(土)
1.森川林講男

1.森川林講男
2.忠勝小6男
3.しらたま小5男

1.森川林講男
2.忠勝小6男
3.しらたま小5男

1.森川林講男
2.忠勝小6男
3.しらたま小5男

1.森川林講男
2.忠勝小6男
3.しらたま小5男

1.森川林講男
2.忠勝小6男
3.しらたま小5男
4.おられ小5男
5.どんじゅん保男
6.ちえ保女

1.森川林講男
2.かいしゅう小6男
3.忠勝小6男
4.おられ小5男
5.しらたま小5男
6.どんじゅん保男
7.ちえ保女

8/4(日) 8/5(月) 8/6(火) 8/7(水) 8/8(木) 8/9(金)
8/10(土)
1.森川林講男
2.忠勝小6男
3.かいしゅう小6男
4.しらたま小5男

1.森川林講男
2.かいしゅう小6男
3.しらたま小5男
4.なおぽん小3女
5.なおまま保女

1.森川林講男
2.かいしゅう小6男
3.なおぽん小3女

1.森川林講男
2.かいしゅう小6男
3.なおぽん小3女

1.森川林講男
2.かいしゅう小6男
3.なな小6女
4.ゆづき小5女
5.のあ小4女
6.なおぽん小3女
7.みうみう小2女
8.はるか小2女
9.さだあき保男
10.けいぞう保男

1.森川林講男
2.かいしゅう小6男
3.なな小6女
4.ゆづき小5女
5.あえみの小4女
6.みうみう小2女
7.はるか小2女
8.さだあき保男
9.けいぞう保男

1.森川林講男


8/17(土)






1.森川林講男
2.けいた幼小男
3.はやと幼児男
4.Princess M小5女
5.りり小3女
6.まな小3女
7.こぎつねコン小2男
8.たけのこ小2男
9.あうさそ小2女
10.せいた小1男
11.りり父保男
12.ひろき保男
13.まさゆき保男
14.あうさそ保女
15.みつよ保女
16.さちえ保女
17.りり母保女

8/18(日) 8/19(月) 8/20(火) 8/21(水) 8/22(木) 8/23(金)
8/24(土)
1.森川林講男
2.けいた幼小男
3.Princess M小5女
4.りり小3女
5.まな小3女
6.こぎつねコン小2男
7.あうさそ小2女
8.せいた小1
9.まさゆき保男
10.りり父保男
11.さちえ保女
12.りり母保女

1.森川林講男
2.Princess M小5女
3.こぎつねコン小2男
4.せいた小1男
5.まさゆき保男
6.さちえ保女

1.森川林講男
2.Princess M小5女
3.こぎつねコン小2男

1.森川林講男
2.ああわよ小6女
3.関西くん小5男
4.れれん小5女
5.Princess M小5女
6.しんちゃん小4男
7.こぎつねコン小2男
8.れいこ保女
9.関西ちゃん中3女

1.森川林講男
2.ああわよ小6女
3.関西くん小5男
4.れれん小5女
5.Princess M小5女
6.しんちゃん小4男
7.こぎつねコン小2男
8.ひろたろう小2男
9.けいと小2男
10.れいこ保女
11.関西ちゃん中3女

1.森川林講男
2.ああわよ小6女
3.関西くん小5男
4.れれん小5女
5.Princess M小5女
6.しんちゃん小4男
7.こぎつねコン小2男
8.ひろたろう小2男
9.けいと小2男
10.れいこ保女
11.関西ちゃん中3女

1.森川林講男



■作文クラスの見学、体験学習ができます(無料2回)

 作文クラスは、オンラインで友達と一緒に勉強するクラスです。
 次のような長所があります。
(1)みんなと一緒に勉強するので、他の人の準備や発表が参考になります。
(2)作文の予習を必ずするようになります。
(3)その日のうちに書き出すので作文の勉強を後回しにすることがなくなります。
(4)読書紹介があるので本を読む習慣ができ、また、他の人の読書が参考になります。
(5)毎月定期的に保護者と講師の面談・懇談の機会を設けます。
(6)7月から、グループ全体の話の時間とともに、個別に生徒と先生が話す時間も設けます。
 参加できる曜日時間については、ご相談ください。
(作文の予習をみんなの前で発表し、互いに質問や感想を言う機会があるので、作文や発表や質問などがすごく苦手だという生徒は、先生との個別電話指導の方で受講を継続してください。)

■発表学習クラスの見学、体験学習ができます(無料2回)

 発表学習クラスは、主に理科の授業などをヒントに、自分で自由に研究したことをオンラインで発表するクラスです。
(1)与えられた知識を記憶し再現するという従来の勉強とは異なる、新しい創造的な学力を育てます。
(2)発表力、コミュニケーション力がつき、同じクラスの生徒どうしが親しくなる機会があります。
(3)小学1~3年生は、保護者の協力がある程度必要なので、子供と保護者で知的な話題を軸に対話をする習慣が付きます。
(4)暗唱の練習をしている生徒については、暗唱の発表をする機会ができます。(ただし暗唱は家庭で毎日やることが前提です)
(5)毎月定期的に保護者と講師の面談・懇談の機会を設けます。
 参加できる曜日時間については、ご相談ください。

■自主学習クラスの見学、体験学習ができます(無料2回)

 自主学習クラスは、国語・算数数学・英語を中心に、理科・社会も含めて家庭での全教科の自主学習に取り組むクラスです。
(1)友達と一緒に勉強するので、自然に学習習慣がつきます。
(2)自分で自主的に勉強を進める習慣がつきます。
(3)勉強の仕方や、勉強に関する質問など、先生のアドバイスを毎回受けられます。
(4)小学生は公立中高一貫校入試対策、中学生は定期試験対策、高校入試対策を行います。
(5)毎月定期的に保護者と講師の面談・懇談の機会を設けます。
 教材は、言葉の森指定のものが基本です。(市販教材及び塾専用教材。指定の教材以外のものについては、内容面の質問には対応できません)
 参加できる曜日時間については、ご相談ください。

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森川林 20190626  
 言葉の森の料金システムが変わります。
 基本料金+それぞれの講座受講料という形になります。
 それぞれの講座には、作文、発表学習、自主学習などがあります。
 オンラインスクール化を進めるための内部システムの変更なので、ほとんどの生徒にとって現在の状態との外見上の変更はありません。


nane 20190626  
 システムの変更で最も大変なのは、動いているプログラムを作り直さなければならないことです。
 自分でやっているので、それほど苦になりませんが、仕事としてやるとしたらかなりストレスの多いおとだと思います。
 というのは、必ずどこかにバグが出てくるからです(笑)。


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STEM教育の先にあるもの――発表学習クラスの授業から as/3764.html
森川林 2019/06/25 08:04 

【前回の話】
 先日、面白い調査を見ました。
 STEM教育という言葉を知っている人は、子供の教育に対する関心が高いという調査結果です。
 私はSTEM教育というのは最近の本によく出てくる普通の言葉だと思っていたのでこの話は意外でした。

 STEMとは、サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マセマティックスの頭文字です。
 これにアートをつけて最近流行っているのがSTEAMという言葉ですが、これはSTEMの本質とは別の概念を付け加えただけのもので、単なる思いつきのようなものです。

 それはともかく、STEM教育という言葉から受ける印象の第一は、こういう訳の分からないアルファベットは使わないでほしいということです(笑)。
 日本の教育が遅れていると思う最も大きな理由は、このように横文字が多すぎることです。

 それは結局、日本の風土や文化に根差した教育というものを作り出せない教育者が、海外からのものをただ日本に移植しようしているからだと思います。
 教育界は、戦後すぐのなし崩し的に欧米文化を受け入れた時代からほとんど進歩していないように思えます。

 ところで、私はこのSTEM教育というものに、基本の80%は賛同していますが、残りの20%は何か不足しているものがあるような気がしていました。

 それが、最近になって日本文化の根底に流れている重要な要素がないからではないかと思うようになりました。

 日本にも、江戸時代から、STEM教育の長い歴史がありました。
 だから、種子島の鉄砲もすぐに作ることができ、零戦や隼も作ることができたのです。

 しかし、そこにあるのは単なるサイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マセマティックスではありませんでした。
 それだけなら、誰がやっても同じです。

 話は飛びますが、戦時中の日本にも、原爆を開発する計画があったようです。
 しかし、その計画を知った天皇が、たとえ戦争に勝つためと言ってもそういう兵器を開発してはならないと研究を止められたのです。
 日本人であれば、この感覚はよく分かると思います。

 このことに似た話は、日本の歴史には数多くあります。
 ただそれが、今の歴史教育の中に、ほとんど伝わっていないだけです。

 サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マセマティクスの四つの言葉だけでは、「敵に勝つとはためとはいえそういう非間的な兵器の開発はやめよう」という発想は出てきません。
 むしろ、日本以外の外国の常識は、「目的は手段を正当化する」です。
 日本は違います。「君子財を愛す、これを取るに道有り」の文化です。
 手段にも、人の道というものがあるのです。

 天皇の終戦の詔勅でも、その根底にあったのは、人類にこれ以上非人間的な行為をさせてはならないという意思でした。
 負けそうだから戦争やめようというのではなかったのです。
 当時の世情を知らない人には理解しにくいでしょうが、人類がこれ以上無意味な殺傷することを辞めさせたいと思って終戦を宣言したのです。

 これも、ほとんどの日本人なら分かると思います。
 どっちが正しいかということよりも、もう争うのはやめよう、同じ人間なのだからという心理です。

 しかし、余計なことですが、当時のアメリカは、日本の本土空襲を行い、木造家屋をどれだけ効率よく延焼させ、国民の被害を大きくするかということだけを考えていたのです。
 これがSTEM教育の限界です。


 合理的ではあって人間味のないSTEM教育を緩和するために付け加えられたのが、アートという概念ですが、それはSTEM教育の本質とは結びついていません。

 これに対して、日本には、明治時代の初めから和魂洋才の精神がありました。

 洋才は、もちろんSTEMでいいのです。
 しかし洋才だけに走れば、武器の開発は核兵器にまで進み、更に今日のように核兵器を超える兵器の開発へと進みます。
 その科学技術の進化をコントロールする力は、アートという概念にはありません。

 日本は、江戸時代に既にヨーロッパのどの国よりも多くの鉄砲の生産量を誇っていたと言われています。
 しかし、戦国時代が終わり平和な社会が来ると、それとともに鉄砲の進化も止まりました。
 ヨーロッパでは、鉄砲は次々に改良され、より強力な武器へと、武器そのものが科学技術によって進化していきました。

 STEM教育は、今の文脈で語られる限り人間の幸福のための教育にはなっていません。
 科学技術という洋才の外枠をコントロールする和魂という中心がないからです。

 しかし、和魂は、平和とか人類愛とかいうような空虚な言葉ではありません。
 日本文化における和魂の精神を支えてきたのは、言葉ではなく所作だったのだと思います。

 言葉は、ある生きた中身を外から表す結果であって、言葉自体が生きた中身なのではありません。
 大事なのは、その言葉が意図する内容を行為することであり、その行為という所作の中に日本文化の本質があります。

 身近な例で言えば、玄関で靴をそろえるというのは、あとから来た人が気持ちよく入れるようにするためです。
 靴をそろえるときの人間は、平和や人類愛などという言葉を考えているわけでありません。
 しかし、その所作を繰り返す中で、自然にその場にはいない他の人に対する思いやりが生まれてきます。

 目的は手段を正当化するという考え方からは、正しい目的であれば、手段は汚くてもかまわないという考えが自然に生まれるでしょう。
 動作あるいは所作を美しくする文化からは、手段の美しさを基準にして目的をコントロールする考え方が生まれます。

 この世界には、競争や勝敗があります。
 競争に勝つことは第一の目的ですが、その目的と同じくらい大事なのが、競争する相手に対する共感や思いやりです。
 その共感や思いやりは、目的においてではなく方法において現れてきます。

 科学技術の持つ合理性という目的は、どこからも制約されない大義名分として成り立っています。
 その大義名分と異なる価値観は、日本文化の中に流れているさまざまな所作の中にあるのです。

 わかりやすく言えば、日常的に美しい動作を心がけている人にとっては、勝つという目的のためには手段は汚くてもよいという考えは生まれません。

 オリンピックでドーピングが話題になることがあります。
 また一方、日本の選手やサポーターが、試合のあと自分のいた場所をきれいに片付けて帰ることが話題になることもあります。
 部屋をきれいに片付け、グラウンドに一礼をして帰る人が、次はどのように見つからないように反則をするかなどということは考えつきもしないのが普通です。

 落とした財布が返ってくるのは、そういう法律があるからでも、罰則があるからでもありません。
 すべて日常的な所作の延長に、自然にそのような姿勢が生まれてくるのです。

 ここに、単なるSTEM教育の、サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マセマティックスだけではない、新しい日本的な科学技術教育の可能性があります。

 言葉の森では今、発表学習クラスで、理科実験や社会調査をもとにした自由研究の発表を行っています。
 発表学習で大事なことは、ただ受け身で知識を吸収することではなく、自分から進んで調べたり実験したり経験したり工夫したりすることです。
 つまり、そこにある行為(所作)の中に、日本文化を伝えるきっかけがあります。

 これから、単なるSTEM教育ではない、日本的な文化科学教育として、発表学習クラスの教材を作っていきたいと思っています。

▼発表学習クラスの授業から

「顕微鏡(けんびきょう)で野菜の皮を観察」
https://youtu.be/qPJ_55sKWvg

「料理を作ったこと」
https://youtu.be/h2l67_HGvRo

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森川林 20190625  
 針供養をやる家庭は、もうありませんが、長年使って小さくなった鉛筆を捨てるとき、心の中で「ありがとう」という気持ちになる人は多いと思います。
 仕事も勉強も、基本は合理性に基づいていますが、単なる合理性を超えたものを持つのが日本文化です。
 その合理性を超えた文化を、科学技術教育の中でも生かしていくことができると思います。


nane 20190625  
 科学技術教育は大事ですが、それ以上に大事なのが科学技術を支える心の教育です。
 しかし、心の教育は、抽象的な道徳の話として行われるものではなく、科学技術の実践の中で行われるものなのです。


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6月の読解検定終わる――百点は2名 as/3763.html
森川林 2019/06/23 19:07 

 6月の読解検定が、先ほど終了しました。
 この試験は、百点を取ることが目標なので、かなりハードルが高い試験です。

 毎月、百点合格者は、全体の10%程度です。
 今回の百点は、小2と小4の2人の生徒でした。

 難しい問題文を読み、厳密に解く問題ですから、読む力と解く方法の両方が必要になります。
 この試験でコンスタントに百点近い成績を取れるようになると、国語の実力は完成と言ってよいでしょう。

 しかし、学年が上がるにつれて読み取る文章も難しくなってくるので、国語力の完成も学年ごとになります。
 対象学年は、小1から高3までです。
 高3で百点を連続して取れるようになった人は、センター試験でも百点近い成績を取れるようになります。

 今回、惜しくも百点にならなかった人は、×になったところの理由をよく考えて次回また挑戦してください。

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森川林 20190623  
 読解検定は、百点だけが合格ですから、かなりハードルの高い試験です。
 しかし、国語は理詰めに考えれば百点を取れる勉強なのです。
 また、たとえ百点を取れなかったとしても、理詰めに考える練習をした生徒は必ず国語の成績が上がります。
 また、ついでに英語の成績も上がるのです(笑)。
 それは、英語の選択問題も、易しく作られた国語の選択問題と同じ性質のものだからです。


nane 20190623  
 国語の得意な生徒と苦手な生徒は、問題の解き方が違います。
 得意な生徒は、「絶対に正しい答えを選んでみせる」という強い集中力で取り組みます。
 だから、×になると、ときどき電話で問い合わせをしてきます。
 「どうして、ここがこうなんですか」という質問です。
 そういう質問をしてくる生徒は、みんな成績がよくなります。
 だから、大事なのは取り組むときの姿勢なのです。


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STEM教育の先にあるもの(その1) as/3762.html
森川林 2019/06/23 05:42 

 先日、面白い調査を見ました。
 STEM教育という言葉を知っている人は、子供の教育に対する関心が高いという調査結果です。
 私はSTEM教育というのは最近の本によく出てくる普通の言葉だと思っていたのでこの話は意外でした。

 STEMとは、サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マセマティックスの頭文字です。
 これにアートをつけて最近流行っているのがSTEAMという言葉ですが、これはSTEMの本質とは別の概念を付け加えただけのもので、単なる思いつきのようなものです。

 それはともかく、STEM教育という言葉から受ける印象の第一は、こういう訳の分からないアルファベットは使わないでほしいということです(笑)。
 日本の教育が遅れていると思う最も大きな理由は、このように横文字が多すぎることです。

 それは結局、日本の風土や文化に根差した教育というものを作り出せない教育者が、海外からのものをただ日本に移植しようしているからだと思います。
 教育界は、戦後すぐのなし崩し的に欧米文化を受け入れた時代からほとんど進歩していないように思えます。

 ところで、私はこのSTEM教育というものに、基本の80%は賛同していますが、残りの20%は何か不足しているものがあるような気がしていました。

 それが、最近になって日本文化の根底に流れている重要な要素がないからではないかと思うようになりました。

 日本にも、江戸時代から、STEM教育の長い歴史がありました。
 だから、種子島の鉄砲もすぐに作ることができ、零戦や隼も作ることができたのです。

 しかし、そこにあるのは単なるサイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マセマティックスではありませんでした。
 それだけなら、誰がやっても同じです。

 話は飛びますが、戦時中の日本にも、原爆を開発する計画があったようです。
 しかし、その計画を知った天皇が、たとえ戦争に勝つためと言ってもそういう兵器を開発してはならないと研究を止められたのです。
 日本人であれば、この感覚はよく分かると思います。

 このことに似た話は、日本の歴史には数多くあります。
 ただそれが、今の歴史教育の中に、ほとんど伝わっていないだけです。

 サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マセマティクスの四つの言葉だけでは、「敵に勝つとはためとはいえそういう非間的な兵器の開発はやめよう」という発想は出てきません。
 むしろ、日本以外の外国の常識は、「目的は手段を正当化する」です。
 日本は違います。「君子財を愛す、これを取るに道有り」の文化です。
 手段にも、人の道というものがあるのです。

 天皇の終戦の詔勅でも、その根底にあったのは、人類にこれ以上非人間的な行為をさせてはならないという意思でした。
 負けそうだから戦争やめようというのではなかったのです。
 当時の世情を知らない人には理解しにくいでしょうが、人類がこれ以上無意味な殺傷することを辞めさせたいと思って終戦を宣言したのです。

 これも、ほとんどの日本人なら分かると思います。
 どっちが正しいかということよりも、もう争うのはやめよう、同じ人間なのだからという心理です。

 しかし、余計なことですが、当時のアメリカは、日本の本土空襲を行い、木造家屋をどれだけ効率よく延焼させ、国民の被害を大きくするかということだけを考えていたのです。
 これがSTEM教育の限界です。
(つづく)

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森川林 20190623  
 日本では、STEM教育を普及させようとい声が生まれていますが、本当はもっと先に行く必要があります。
 なぜなら、サイエンスも、テクノロジーも、エンジニアリングも、マセマティックスも、既に日本にはあり、むしろその限界を多くの人が感じているからです。
 その限界とは、ひとことで言えば、心のない科学が発展しても、世の中はよくならないということです。
 しかし、心とSTEMは対立するものではありません。
 もっと大きな枠の中で一致するものなのです。

nane 20190623  
 種子島に鉄砲がもたらされたときの日本にあったのは、すでに普及しているSTEM教育でした。
 しかも、そこにあったのは、今言われているSTEM教育よりももっと大きな枠組みを持ったものだったのです。
 その日本のSTEM教育を広げていく必要があります。

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