街を車で出発し、ベルフェオルトの森を三時間以上かけ慎重に横断すると、ようやく視界が開けた。
南の地には珍しい暗い木々を車の窓から眺めるのは、確かに最初はなかなか風情があった。しかし小一時間でそれにも飽きていたから、私はこの旅の第一タームがようやくの終了を迎えたことに対してもさほど感慨は沸かなかった。
森を抜ける少し前から降り出した雨は、今やほとんどバケツをひっくり返したような勢いだ。
目の前の視界は今出てきた森を除けばほとんど360度の広がりを持つはずだが、それを確認することは不可能だった。この辺りに多く群生しているはずの野生のキリンも今は森に姿を隠しているのだろう。どんな生き物もこんな雨に身を曝してはいられない。車の強力なハイビームに、雨粒が時折小さく七色に光った。