授業の渚 nnza-05-2


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nnza5.2 就業人口の半分以上が

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 ぼくは、バオ君。みんな、よろしくね。今日は、ザクロの5.2週の説明をするよ。
 第一段落は、状況実例。社会が、狩猟時代から、農業時代、工業時代、情報時代と進歩しているという話だね。そこから、未来の問題を見つけ出す。そのあと、第二段落で対策1番。第三段落で対策2番。最後の第四段落でまとめ、という流れで書いていってね。
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 では、紙芝居を見てみよう。まず、最初は、キューピッドの時代。違うね。狩猟時代だね。その次は、農業の時代だ。人口や土地が重要だった時代だね。その次は、工業の時代だ。工業だから、機械を作るための資金が必要になる。ある意味で資本主義の時代というのは、この工業時代に対応していたとも言える。最後は、情報時代だ。コンピュータを中心にした情報操作の時代は、別名知力の時代でもある。しかし、そのあとに来るのが美感想遊の芸術の時代だと筆者の月尾さんは言っている。
 確かに、これからは芸術的な感覚が社会のあらゆる面で要求されるようになってくる。それなのに、現代の社会はそれに対応していないという問題にしてもいいし、しかし、芸術の時代だからと言って、それを支える製造業の重要さを忘れてはならないという問題にしてもいい。未来の問題を考えていくということだね。
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 現代では、すべての技術者に芸術的な感覚が要求されている。だから、学校での教育にも、もっと芸術的なところに力を入れる必要がある。
 例えば、みんなが、物を買うときもそうでしょう。性能がいいからという理由で選ぶ人もいるけど、今は性能など大して変わらないからデザインで選ぶという人が多い。自動車などは、技術的な必要よりも、デザイン的な必要で形が決まっているところがある。そのうち、タイヤが丸いのはデザイン的に格好悪いから、三角のタイヤで走れなどという話になるかもしれない。乗り心地が悪いだろうけどね。
 そういえば、バオ君にも経験があるんだけど、通産省のグッドデザイン賞を受賞した製品というのは、なぜかすごく使いにくいものが多かった。バオ君が使ったのは、コンセントに直接つける丸いタイマーと、ヤカンの口からビューという音の出るヤカン。今は、もう売っていないんじゃないかなあ。
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 さて、芸術的な感覚は大事だけど、その芸術社会を支えているものは、やはり日本の強い製造業だ。みんながみんな、絵をかいたり、楽器を弾いたりしているだけでは、日本の社会は成り立たない。というのは、工業製品と芸術作品では、やはり規模が違うからだ。一億人以上の日本人が、豊かに暮らしていくためには、製造業のパワーがどうしても必要だ。また、この製造業でつちかった技術が、芸術的なセンスの土台にもなっているだろうからね。
 だから、対策は、物作りの教育も忘れないということになるかなあ。学校の技術家庭で、いろいろなものを作った思い出がみんなにもあると思うけど、あのへんに力を入れないと、物作りの感覚がつかめなくなるんだよ。
 言葉の森の教室でも、よく、パソコンが故障するとバンバン叩いて直す人がいるけど、工業的な感覚がある人はこんなことしないからね。
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 だから、結論は、どっちも必要なの、だ。
 技術のわかる芸術家と、芸術のわかる技術者がいて、日本は更に豊かな国になる。更に言うと、理科のわかる文学者と、文学のわかる科学者も必要ということかな。
 今の日本の高校教育は、受験勉強の能率を上げるために、教科数をしぼって教えている面があるけど、本当のこと言うと、それは大きなマイナスなんだよね。
 しかし、もちろん、人間に与えられた時間には限りがある。芸術などは、特に時間がかかるから、絵も一流、音楽も一流、料理も一流、スポーツも万能で、勉強もできて、遊びも得意なんていうことはできないけど、できるだけそういう人間に近づくようにがんばっていきたいよね。
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 昔、マルクスという人は、「ドイツ・イデオロギー」という本の中で、人間の理想の社会として、「朝は狩をし、午後は漁をし、夕方には家畜を追い、そして食後には批判をする」というようなイメージを描いた。みんなも、一生同じ仕事をするよりも、こういう生活の方が楽しいと思うでしょ。たぶん、未来の社会はだんだんそういう形になっていくと思う。でも、朝の狩はいいけど、ゾウ狩はしないでね。