授業の渚 wa-05-4


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高1 5.4週

【1】
 今日は清書です。
 これまでに書いたもので、自分の気に入ったものをきれいに書き直してください。
 大事なことは三つあります。
 第一は、要約は入れないか、自分なりの実例に書き換えるということです。
 第二は、項目のカッコ書きなども消しておくということです。
 第三は、名言の引用なども、できれば消しておくということです。
 つまり、普段の◎のつくような練習ではなく、作品としていいものを残すということで書いていってください。
 作品の出来をよくするコツとして、今日は、書き出しの工夫について説明しましょう。
 書き出しは、読み手が最初に読むところです。
 人に会うとき、第一印象がにっこりした感じだと、いい人だという印象が生まれます。書き出しも、第一印象が大事です。

【2】情景の書き出し
 論説文のような硬い文章であっても、最初にカラフルな感じがあると読みやすくなります。
 例えば、環境問題のような硬いテーマであっても、「見上げると、真っ青な空が広がっていた」などと書くと、やわらかい書き出しになります。そして、「しかし、オーストラリアでは海岸で日光浴をする人はまばらだ。紫外線の危険性が警告されるようになったからだ」などと続けていくことができます。
 硬いテーマであってもやわらかくカラフルに、というのが書き出しのコツです。

【3】きれいな情景を
 ところが、同じカラフルでも、きれいでない書き出しは、マイナスの印象をあたえることがあります。例えば、「海岸には、石油で汚れた真っ黒な一羽の海鳥がもがいていた」。たとえ、事実であっても、ここから先をわくわくして読みたいとは思いません。
 日本では、暗い話や悲しい話の方が真実に近いという先入観があるらしく、ひとりが暗い話をすると、みんなが競ってそういう暗い、否定的な話を始めます。
 それが、暗い話を克服する方向に発展すればいいのですが、暗い話をする人は大体そういう話を確認して満足してしまうようです。
 書き出しの工夫は、できればカラフルに美しく、そして前向きに書いていきましょう。

【4】書き出しと結びの対応
 せっかく書き出しの工夫をしたのに、結びに工夫がないと、効果は半減します。1200字ぐらいの文章では、読み手は一気に最後まで読みます。書く方が1時間かかることでも、読む方はほんの数分です。
 ですから、読む人は、書き出しの工夫がまだ頭に残ったまま読み進めて、結びまで行きます。そこで、その結びに書き出しの工夫と対応した工夫があると、全体が音楽の終わりのようにうまくまとまった印象を与えて心地よくなるのです。
 例えば、「真っ青な空の下で、子供たちが真っ黒になって遊びまわる、そういう光景を取り戻すことが私たちの目標ではないか」などとまとめます。
 でも、いちばん大切なのは、もちろん中身です。書き出しがきれいで、結びも工夫してあるが、中身がなかったというのでは、箱だけ豪華だったお菓子のようなものになります。中身も充実させた、きれいな書き出しを工夫していってください。