世界一小さい犬 読解検定長文 小2 夏 1番
なんでもコンパクトがもてはやされるこのごろですが、犬の 世界も 例外ではありません。 品種改良の 結果、たくさんの犬が 小型化され、 今や世界中で 飼われています。つまり、コンパクトな犬はそのほとんどが 人工的に 作り出されたものなのです。
しかし、 天然の 小型犬もいます。チワワです。 餌代もかからず、 場所もとらず、小さいのに 勇敢なこの犬は、ペットとして 大変人気があります。
チワワの 出身地はメキシコで、 意外にも 南国の生まれなのです。
実はこの犬は、もともとテチチという 名前で 知られていました。チワワと 呼ばれるようになったのは十九 世紀の中ごろです。メキシコに 旅行したアメリカ人が、メキシコのチワワ 州でこの小さい犬を見つけ、 何匹か 持ち帰りました。そして、 土地の 名前からチワワと 命名したのです。 同じころ、メキシコのお 妃様がヨーロッパ 旅行の お供にこの犬を 連れて 行ったため、チワワは 世界的に 有名になりました。
チワワは 人間が 大好きです。 人間との 接触が 多いほど 元気に 育つと 言われています。
しかし、 注意も 必要です。この犬の大きさからすると、ベッドやソファは 高所ですから、 高いところから 無造作に 飛び降りて 骨折してしまうことがあります。また、 消化器官が小さい上にカロリーを早く 消費するため、 血糖値が下がりやすいのもチワワの 特徴です。ですから、 少量のえさをたびたび 与えてやる 必要があります。
震えるのはこの犬の 特徴です。 寒いときだけでなく、 興奮したときや 心配なとき、 不満があるとき、 怖がっているときなどに 震えます。
小さいけれど大きな 存在感を 持つチワワ。もしメキシコへ 旅行することがあったなら、「こんにチワ、ワたしの 国へようこそ」と 歓迎してくれるかもしれません。
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「チワワって、おでんに入れるとおいしいんだよね。」
「それは、チクワ。」
言葉の森 長文作成委員会(Μ)
地球を棒で測った人 読解検定長文 小2 夏 2番
スカートやズボンを 買うときは、まずウエストのサイズを 確かめます。では、 地球のウエスト、つまり 円周はどうやって 測るのでしょう。
現代の 科学者たちは、メジャーの 代わりに 人工衛星を 使います。 北極と 南極を 通る二つの 衛星で、 地球を 外がわから 測るのです。そのようにして 算出された 数値は、 約四 万八千キロメートル。 大変なウエストサイズです。
しかし、 今からおよそ二千二百年 前、すでに 地球を 測った人がいたのです。エラトステネスは、ギリシャの 数学者で 天文学者でもありました。 彼の 時代には 人工衛星などないので、 地球が 丸いことさえ 知らない人がたくさんいました。もちろん、 地球を 測ることのできるほど 長い巻尺もありません。エラトステネスが 使ったのは、一本の 棒きれでした。
エジプトのシエネという 都市にいたときのことです。エラトステネスは、一年でいちばん 昼間の 長い夏至の 正午に、 太陽が 真上に 来ることに気づきました。 太陽の 光が 影を 作らずに 井戸の 底まで 届いていたからです。しかし、そこから 北に八百五十キロメートルほど 行ったところにあるアレクサンドリアでは、 同じ夏至の日の 正午に 影が見えたのです。そこで、エラトステネスはあることを 思いつきます。
彼はまず、アレクサンドリアにまっすぐな 棒を立てました。 正午にその 棒が 作る影を 観察するためです。 影の 角度を 測ったところ、 垂直方向に対して七・二 度でした。エラトステネスは 地球が 丸いことと 円周の 全体が三百六十 度であることを 知っていました。三百六十を七・二で 割ると五十ですから、 棒の 角度七・二 度は 円周の五十 分の一になります。ということは、シエネとアレクサンドリアの 間の 距離も、 地球の 円周の五十 分の一と 等しいはずです。そこで二つの町の 距離を五十 倍し、 地球の 円周は、 約四 万キロメートルから∵四 万六千キロメートルだという 結論に 達したのです。それは、 驚くほど 正確な 数値でした。
「エラトステネスさん、 棒で 測るなんて、いつ 思いついたんですか。」
「ぼうっとしているときにね。」
言葉の森 長文作成委員会(Μ)
食べられる花 読解検定長文 小2 夏 3番
お腹がすいたら 花屋さんに入る、という人はいません。「花より 団子」のことわざに見られるとおり、花は見るものであり 食べるものではない、というのが 普通の 考え方です。しかし 世の中には、目や 鼻だけでなく、 舌まで 楽しませてくれる花が 数多くあるのです。
例えば、バラは、 美しいだけではなく 食用にもなります。花びらの 根元は 苦味があるので 取り除きます。また、花の 中心部は 食べません。バラの花びらをチーズやナッツ 類と 合わせてサラダにしたり、 刻んだものをスパゲッティにふりかけたりするとおいしいのだそうです。バラを 使って、アイスクリームや 飲み物に 風味を 添えることもできます。
また、 野菜の花も 食用になります。カボチャの花は、すでに十六 世紀ごろから 南北アメリカで 食卓に 上っていました。しかし、いくらおいしいからといっても、花を 全部食べてしまうとカボチャの 実ができなくなってしまいます。ですから、 雌花は 残して 雄花だけを 食べるのです。
レモンやオレンジなど 柑橘系の花は、 飲み物に入れたりデザートに 添えたりすると、 風味が 引き立ちます。 春になると、 菜の花が 八百屋さんの 店頭に 並びます。フキノトウやイチジクも、 食べるところは花の 部分です。
「花さん。 食べられたときの 気持ちはどうですか。」
「はあ、なんというか。」
「やはり、見てもらった 方がうれしいでしょう。」
「はあ、なんといっても。」
「花さんは、きれいですからね。」
「はあ、なにしろ。」
「もっと 驚くようなことを 言ってください。」
「ハッ!、なあんてね。」
言葉の森 長文作成委員会(Μ)
微生物の働き 読解検定長文 小2 夏 4番
かつお節、みそ、 納豆、 漬物、パン、チーズ、 乳酸菌飲料、ビール、ワイン。これらのおいしさの 共通点は、 独得の 風味です。その 共通の 風味をもたらしている 秘密は、どれもが 発酵食品だということにあります。
同じ発酵食品でも、 発酵を 行う微生物のちがいによって、いくつかのグループに 分けることができます。一つ目は、 かつお節のように、 主にカビの 作用によるものです。二つ目は、 納豆、 乳酸菌飲料、チーズのように、 主に 細菌の 作用によるものです。三つ目は、ビール、ワイン、パンのように、 主に 酵母の 作用によるものです。そして、みそ、しょうゆ、 漬物のように、三つの 作用が 重なり合って生まれるものもあります。
このように、目に見えない 微生物は、 生育するときに 周りの 材料を 分解して、 消化しやすく 変化させたり、 独得のおいしい 風味を 与えたりします。ところが、 微生物には 反対の 働きもあって、 材料を 分解するときに 食中毒をひきおこす 有害物質を 作ったり、 悪臭を 放つ不快な 物質を作ったりすることもあります。これを、 私たちは 腐敗と 表現しています。
地球上のあらゆるところに 生育する 微生物は、 忍者のように目には見えませんが、 私たちの 暮らしに 深く関わってきました。 私たちが 健康で 環境にやさしい 生き方をするためにも、 微生物との 共存がこれからいっそう 大切になってくるでしょう。
「カビさんが 役に立っているなんて、 初めて知りました。」
「そうカビ。」
「 細菌さんも、がんばっているんですね。」
「 最近だけどね。」
「 酵母さんも、たまに 失敗することがあるんですか。」
「コウボうも 筆の 誤りと 言うぐらいだから。」
言葉の森 長文作成委員会(μ)
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