| ひとこと |
| 時間 |
| アジサイ | の | 滝 | の広場 |
| 武照 | / | あよ | 中3 |
| 一人の男が両手両足を腕時計でぎりぎりと縛られて仰向けで倒れている。顔には苦痛の表情が浮かん |
| でいる。そして手前の中央に黒く光る会社鞄が置いてある。日本経済新聞社のポスターコンクールの大 |
| 賞作品である。この一見優しい色使いで描かれた絵の裏には実に奥深いものを感じた。現代社会で人 |
| 間は余暇の時間を作るために多くの時間を費やすという矛盾を知らず知らずに自分に課し、それでい |
| て時間に飢えている。これはまさしく腕時計に縛られた人であろう。そして腕時計で縛ったのはその |
| 本人であるという一面もあるのである。我々は時間自体を楽しむ生き方をしていくべきであろう。 |
| ではなぜ我々は時間自体を楽しまなくなったのだろうか。一つに資本主義経済が持つ性格があるで |
| あろう。国が発展するには経済活動が活発でなければならない。資本主義経済はそれを個人の利益の |
| 探求という形で克服したが、それと同時に経済効率の探求が必要となる。時間を費やしせこせこする |
| のは社会の発展に確かに貢献したのである。それに比べて中国では仕事の無い日は午前中になぜか人 |
| 々が公園に集まる。午前中一杯かけてのんびり髭を剃る老人に雑誌の記者は驚いていた。 |
| ではどうすれば時間自体を楽しむことができるのであろうか。それは「頭上を流れる時間」の認識 |
| にある。つまりなんであれすること自体を楽しむことである。旅行は目的地に行くことを最大の目的 |
| にし、旅はその過程を楽しむものであるとよく言われているが人の心にゆとりを与えるのは旅であろ |
| う。過程自体を楽しむ時間の使い方をしていくことが大切である。 |
| 「腕時計に縛られた男」を描いた画家が日本経済新聞にコメントを載せていた。「私は批判だけの |
| つもりでこの絵を書いたのではありません。優しい色彩でこれからの人類への希望を表したかった。 |
| 」もっと時間自体を楽しむことができるようになれば我々は腕時計で自分で縛ることない心を大切に |
| した社会を作ることができるであろう。 |