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読解検定
 難しい文章を読み取る力をつける
 ドルくんの 読解検定  編集
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題名:○春太は、さっきから
 春太は、さっきから何度も、鞠(まり)投げの仲間に入れてくれよと頼ん(たよ )だが、彼(かれ)は受け入れてもらえなかった。

  「くやしかったら、ひとりでおやり。」

  「ハッちゃんとやればいいものを。」

   ハッちゃん……。

   春太はこのようなしんらつなものを、期待していなかった。彼(かれ)の顔は、まっかになってしまった。すると、それをあおるように、最後にアサコが、

  「ハッちゃんと、仲よしだもんね。」

  といった。

   しかし、アサコはさすがに、日ごろから春太と二人きりで遊ぶ手前があるので、面と向かってはいえなかった。それで、鞠(まり)をほうりながら、それを受け止める相手に向かって、同意を求めるようにいった。

   アサコまでが、それを信じているとは。――春太はもうがまんできなくなった。春太はハツなんかと、何でもありゃしない。鉛筆(えんぴつ)を貸してやったのは、好きだからではないのだ。級長であることの責任感から貸してやったにすぎないのだ。

   春太は一人一人捕まえ(つか  )て、彼女ら(かのじょ )が信じていることは、根も葉もないうそであると納得(なっとく)させてやりたい衝動(しょうどう)を覚えた。それは無駄(むだ)な努力にすぎない。なぜなら、一人一人を捕まえ(つか  )てみれば、春太に征服(せいふく)されてしまうのであるが、集団に返れば、再び手に負えないものに逆もどりするのであるから。

   春太はハツと仲よしだなどといわれるのが恥ずかしく(は    )もあり、くやしくもある。そのとき、持っていき場のないふんまんは、何というよいはけ口を与え(あた )られたことであろう。アサコの手をそれたボールが、春太の足もとに転々と近づいてきた。

   しめた。――アサコが追っかけてきて、手を伸ばし(の  )かけたところを、横からやにわにボールを奪い取る(うば と )と、春太は楠(くすのき)を回って、宝蔵(ほうぞう)倉の方へ逃げ出し(に だ )た。返してよ、返してよ。ざまあ見ろ、思い知ったか。

   ところで、春太がアサコに追われて、宝蔵(ほうぞう)倉の前の、だれもいないところまで来たとき、事態はへんてこになってしまった。アサコは真剣(しんけん)になって、ボールを追ってくるのだ。彼女(かのじょ)はボールのみを念頭において、そのボールを奪っ(うば )た春太を追っかけてくるのだ。春太の気持ち――仲間に入れてくれないばかりか、ハツの名まで持ち出して、いやがらせをいった腹いせ(はら  )など、彼女(かのじょ)は忖度(そんたく)する余裕(よゆう)をまるでもっていないのだ。もし、鞠(まり)を失うようなことになったら、アサコはその場で泣きだすかもしれない。しかし、春太はこのままおとなしく返してやる気には、どうしてもなれない。そのようにばつの悪いことが、できるものではない。

   もう、どうにでもなれという気持ちがわいた。春太はボールを宝蔵(ほうぞう)倉の横から、坂の下の方へ力いっぱい投げた。二人は坂を一気にかけ下りて、ほとんど同時に、ボールの場所に到着(とうちゃく)した。そして、二人はそこで、はからずも鉢合わせ(はちあ  )をしなければならなかった。それははげしい衝突(しょうとつ)だった。

   アサコの額は、こんなにも固かったのか。――春太はめまいを感じて、そこに膝(ひざ)をついてしまっていた。二人は二人の間のボールを取ろうとしなかった。そして、痛み(いた )の去るのを待っている間、相手を互いに(たが  )眺め(なが )合っていた。何というこっけいな場面だろう。

   春太はおかしくなって、ちょっと笑ってみた。するとアサコも、それに応じた。二人は同時に笑い出した。

   春太は、そのような変な巡り(めぐ )合わせの場所で、今までアサコとの間には、一度も存在(そんざい)したことのなかった、ある平和な気持ちが生じていることを感じた。それはまさしく、アサコも感じているものに違い(ちが )なかった。二人のもっている真実の面が、ぴったりと重なり合って、そこに生じる和やかな美しいリズムであった。

   春太は、ついさっきまで抱い(いだ )ていたふんまんや腹いせ(はら  )や、それに伴う(ともな )快感など、そうしたもの一切が、春光につつまれた雪塊(せっかい)のように、跡(あと)かたもなく溶け(と )去っていくのを感じた。

  「ごめんね。」

  と、アサコが立ち上がるときいった。春太も、何かわびたいような気持ちがあった。しかし、春太は微笑(びしょう)して、首を左右に振っ(ふ )た。

  (新美南吉(なんきち)「鞠(まり)」)

問5 読解マラソン集3番「春太は、さっきから」を読んで次の問題に答えましょう。
 ○と×との組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。 
A 春太は、ハツのことを少し好きだったので、まっかになってしまった
B 春太は、ボールがそれてくるのを待っていた
1 A○ B○   2 A○ B×   3 A× B○   4 A× B×

解答選択:

問6 読解マラソン集3番「春太は、さっきから」を読んで次の問題に答えましょう。
 ○と×との組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。 
A アサコが持っているボールを、春太は横からすばやく奪い取っ(うば と )た
B アサコが謝ると、春太も心の中で謝った
1 A○ B○   2 A○ B×   3 A× B○   4 A× B×

解答選択: