未ログイン ログイン
読解検定
 難しい文章を読み取る力をつける
 ドルくんの 読解検定  編集
※最初にログインをしてください。言葉の森の団体コードは、aaa001です。
※番号を選択し「確認」ボタンを押して送信してください。

題名:○母の死後、半年ほどすると
 母の死後、半年ほどすると、姉に縁談(えんだん)が起こった。姉も好意を持っていた人で、話はすぐにきまり、挙式は一周忌(いっしゅうき)がすんでから、ということになった。

   自分の姉でしかなかった姉を、ぼくはあらたまった気持ちで、見なおすのであった。兄となるべき人も、家へ遊びに来るふうになって、三度に一度は、ぼくを加えた三人で、郊外(こうがい)へ散歩に行ったり、映画をみに出かけることもあった。その人と二人で居る時は、ぼくはその人に好意を持ったが、姉が加わると、心の底にきっと沸い(わ )てくる、悲しさに似た感情を、ぼくはどうにも出来ずに居た。

   嫁入り(よめい )道具が、日増しにそろって行った。

   姉が一時に大人びて映り、まぶしく見えることもあった。母の死が別離(べつり)の日の悲しみや、父と共々この家に取り残されるさびしさに変わって、激しく胸を打たれる日もあった。

   ある日曜日の午後であったと思う、ぼくは姉と親せきへ行った。その帰りみちに、姉が何気ない風にいった。

  「節ちゃん、あたしが居なくなっても、さびしくない?」

  「――」

   ぼくはだまっていた。

  「お父様だって、お困りになるわね」

   しばらく間を置いて、姉は思い切ったように、言葉をつづけた。

  「あたし、節ちゃんに相談があるの。――鵠沼(くげぬま)の、桂(かつら)おばさま、ね、知ってるでしょう?」

  「知ってるよ」

   突然(とつぜん)のことで、姉が何をいおうとするのか、ぼくには分からなかった。桂(かつら)おばさまというのは、死んだ母の遠縁(とおえん)に当たる、母より三つ四つ若い、美しい人であった。前にもいったが、母が逗子(ずし)で療養(りょうよう)しているころ、つき切りに看病をしてくれた人だ。結婚(けっこん)して二年ほどで、夫に死に別れた、ということはそのころから聞いていた。

  「桂(かつら)さんに、――あたしの代わりに、家へ来ていただいたらと思ったの。お父様に話したら、節雄(せつお)がよければ、っておっしゃるのよ」

   ドキンとした。みんな、自分をかわいがってくれる人は行ってしまって、お体裁に、代わりの人を置いてゆこうとしている。――そんな気もした。

  「ぼく、いやだ」

   そういえば、桂(かつら)さんはこのごろ、二三度家へ遊びに来ている。自分には何もいわず、みんなでそんな事を進行させていたに違い(ちが )ない、――そんな風にも想像した。

  「このこと、あまり突然(とつぜん)だから、あなたにはのみ込め(こ )ないかも知れないけど、あたしがお嫁(よめ)に行ってしまったら、お父様だって随分(ずいぶん)お困りになるし……」

  「お父様は勝手に旅行してればいいさ」

   ぼくはすげなくいい切った。姉はさびしそうに、そのまま黙っ(だま )た。

 

  (永井(ながい)龍男(たつお)「胡桃(くるみ)割り」)

問1 読解マラソン集1番「母の死後、半年ほどすると」を読んで次の問題に答えましょう。
 ○と×との組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A 僕は、兄となるべき人を好きになれなかった。
B 姉は、自分の結婚によって僕と父が取り残されることが気がかりだった。
1 A○ B○   2 A○ B×   3 A× B○   4 A× B×

解答選択:

問2 読解マラソン集1番「母の死後、半年ほどすると」を読んで次の問題に答えましょう。
 ○と×との組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A 僕は、自分の知らないところで話が進められていることに反発を感じた。
B 父は、桂おばさまと結婚してもよいと思っていた。
1 A○ B○   2 A○ B×   3 A× B○   4 A× B×

解答選択: