未ログイン ログイン
読解検定
 難しい文章を読み取る力をつける
 ドルくんの 読解検定  編集
※最初にログインをしてください。言葉の森の団体コードは、aaa001です。
※番号を選択し「確認」ボタンを押して送信してください。

題名:○列車に乗って
 列車に乗ってぼんやりと窓の外を眺め(なが )たり、瞑想(めいそう)にふけったりしている時間は、私のほとんど唯一(ゆいいつ)といってよい、何物からも開放されたリラックスした時間である。 

   何度も眺め(なが )たことのある同じ風景も、季節や時刻が変わるごとに新たな味わいを見せ、あるいは過ぎ去った日々へのノスタルジアを、あるいはまだ見ぬ場所へのイマジネーションを誘っ(さそ )て、飽きる(あ  )ことがない。身体が座席に縛ら(しば )れて窮屈(きゅうくつ)なのに反比例して、想念の方は、世の束縛(そくばく)から解き放たれて奔放(ほんぽう)に飛翔(ひしょう)し、さまざまな着想が浮かん(う  )でくるのもこのときである。まったく自分自身に帰って、真に心の安まる自由な時間を過ごすのが、何物にもかえ難い旅の醍醐味(だいごみ)の一つなのである。 

   こういうわけで、列車の道中が長いことは私には少しも苦にならず、むしろ長いほどありがたいくらいである。(中略)

   時として、傍若無人(ぼうじゃくぶじん)な団体客の喧騒(けんそう)や、携帯(けいたい)ラジオの無遠慮(ぶえんりょ)な放声に悩まさ(なや  )れることがあり、また車内アナウンスが親切すぎるという難点があるとはいえ、列車の中は概して(がい  )静かで、旅の楽しみを著しく妨げ(さまた )られることがあまりないのはまずまずありがたい。もしスピーカーからのべつに観光案内やら、「音楽」やらが流れることにでもなったら、私の最良の憩い(いこ )の時間が奪わ(うば )れてしまうことは必定で、想像するだけでも慄然(りつぜん)とする。 

   ある国鉄の車掌(しゃしょう)さんが嘆い(なげ )ていた。発車するとすぐに、くどいほど行く先の到着(とうちゃく)時刻や接続案内などを繰り返す(く かえ )のに、放送を終えて車内の巡回(じゅんかい)を始めると、とたんにたった今アナウンスしたばかりの到着(とうちゃく)時刻を必ずといってよいほどきかれるので、まったくがっかりする、と。車掌(しゃしょう)さんには気の毒だが、私はむしろ当たり前ではないかと思う。案内放送というものに乗客は慣れっこになってしまっていて、せいぜいバックグラウンド・ノイズとしてしか聞こえていないのが一般(いっぱん)だから。そう言っては申し訳ないが、もっと効き目がないのは忘れ物の注意で、降りるまぎわまでそわそわしているところへ十年一日のような放送が流れてきても、それをまともにつかまえる耳はそうたくさんはないであろう。注意のあるなしにかかわらず、忘れ物をする時にはするものであることは、私自身の経験を顧み(かえり )ても、まず間違い(まちが )のないところだと思う。 

   もともと忘れ物の注意などは各自の責任でするべきことで、忘れ物をしたからといって、なぜ注意してくれなかったのかと乗務員をなじる筋合いのものではないであろう。到着(とうちゃく)時刻や接続関係にしても、本来がめいめい調べればよいことである。 

   ただしそれができない場合に車掌(しゃしょう)に尋ねる(たず  )ことはもちろん差し支えない。いやそれどころか、そんな時に親切丁寧(ていねい)に教えてくれることこそ、期待してよいことだと思う。一人ひとりのバラエティーのある要求には、しょせん応じきれず、また特別に注意を払っ(はら )ていない限り聞きのがしてしまう、一律で型にはまったおしきせ放送よりも、その方がはるかに乗客の主体的な選択(せんたく)にきめ細かく応じた、本当の意味でのサービスになり、かてて加えてバックグラウンド・ノイズが小さくなって、静けさを望む客にとってもまた上々のサービスとなるに違い(ちが )ない。 

   私は観光バスというものに乗ったことがない。ガイドの絶え間のないおしゃべりが、バックグラウンド・ノイズとして聞き流す限界を超え(こ )た本格的ノイズであるうえ、ガイドの指図に従って右や左を向くことに虫酸が走る(ガイドに限らず、ガイドづらをするものにはすべて同じだが)からである。知りたいことはガイドに聞くよりも、自分でしかるべく調べた方がよほど確実であるし、別段知りたくないことまで教えてくれるのは有難迷惑(ありがためいわく)の気味が大いにある。バスガイドが車窓から見えたきれいな山の名を教えてくれなかった、と憤慨(ふんがい)している投書をある新聞で読んだことがある。その時、あんぐりと口をあけて、過保護ママが食べ物を入れてくれるのを待っているモヤシっ子を、私は思わず頭に浮かべ(う  )た。

   観光バスには乗りたくなければ乗らなければよいのだし、ガイドされたり世話をやかれながらの、にぎやかな旅を好む人々の楽しみに、水をさすつもりもない。しかし一般(いっぱん)のバスや列車に関しては、旅の味わいを人それぞれの心に任せてくれる、車内放送も発車のベルもない静かな欧米(おうべい)諸国の旅行風景が、私にはこよなく懐かしい(なつ   )。 

  (堀(ほり)淳一(じゅんいち) 「地図から旅へ」)

問1 読解マラソン集1番「列車に乗って」を読んで次の問題に答えましょう。
 ○と×との組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A 列車の社内アナウンスは必要最小限にして、あとは音楽などを流すだけにすればよい
B 忘れ物の注意などの放送は、聞き慣れているので、あまり効果がない
1 A○ B○   2 A○ B×   3 A× B○   4 A× B×

解答選択:

問2 読解マラソン集1番「列車に乗って」を読んで次の問題に答えましょう。
 ○と×との組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A 一律の車内放送は、静けさを望む乗客にとっては迷惑である
B ガイドが山の名前を教えてくれなかったと憤慨する投書は、過保護な要求をしている
1 A○ B○   2 A○ B×   3 A× B○   4 A× B×

解答選択: