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読解検定
 難しい文章を読み取る力をつける
 ドルくんの 読解検定  編集
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題名:○そもそもプラトンが
 そもそもプラトンが主著ともいうべき対話篇(へん)『国家』で展開した画家批判以来、伝統的美学は、原像の直接的再現という理念の重圧を、芸術に対してかけてきた。すなわちイデアに即し(そく )て作られた寝(ね)椅子(いす)の模写にいそしむ画家を念頭に置いたプラトンは、絵画による模倣(もほう)が、原像からの二重の離反(りはん)・劣化(れっか)(寝(ね)椅子(いす)の絵は、イデアの模倣(もほう)物たる現実の寝(ね)椅子(いす)を、さらに模倣(もほう)したことになる)を引き起こし、直接的な再現という課題達成を、一層不可能なものにしているのだとして、画家の業を寝(ね)椅子(いす)職人のそれよりも下位に位置づけたのだった。けっして再現されえないイデアを再現せねばならぬという重荷は、この後イデアが神の内へ、さらに人間精神の内へとその座を移しても、ずっと荷(にな)い継が(つ )れていく。ところが、それに対して柳(やなぎ)が示そうとしたのは、近づきえない原像への接近という不条理な促し(うなが )ではなく、むしろ「原像からの距離(きょり)が別な美を生み出していく」という希望である。既に(すで )『工芸の道』の柳(やなぎ)は、こういっていた――「かりに一人の作者が一つの壺(つぼ)を作り、其()上に山水の画を描い(えが )たとする。そうしてそれを見本として民衆が何千何万と作り得たとする。既に(すで )見本を意識せずして作り得る迄(まで)に熟達したとする。其()時それは美において、遥か(はる )見本よりも美しくなっているであろう」。

   原像から遠ざかれば遠ざかるほど、かえって「本質的なもの」へと近づいていくという反イデア論的な美は、たとえば柳(やなぎ)が染色の領域で強い期待を寄せていた芹沢(せりざわ)けい介(すけ)の仕事などに具体的に現われる。芹沢(せりざわ)の型染は、肉筆の下絵に基づく形紙切り出しの段階で、モデルとなった事物の姿を既に(すで )二段階単純化させているのだが、さらに形紙による糊付け(のりづ )・色差しと進むにつれてデッサンから離れ(はな )、水洗いを経て最終的に布地に定着するに及べ(およ )ば、さまざまな貝殻(かいがら)や互い(たが )に寄り添っ(よ そ )て泳ぐ鯛(たい)などが、見事なかたちに結晶(けっしょう)化して出現してくる。

   工程の重なりを経て原像から遠ざかっていくことは、柳(やなぎ)によれば、主体の思惑(おもわく)を削り(けず )落としていく過程でもある。柳(やなぎ)は紺絣(こんがすり)を例にしてこういっている――そもそも絣(かすり)を生み出すやっかいな工程は、どうあっても原画の模様に、ずれを生み出さずにはおかない。けれどもそのずれがむしろ絣(かすり)を美しくするのであって、むりやり人為(じんい)的に揃え(そろ )てしまえば、絣(かすり)独特の良さが消えてしまう。さらにそれが実際に使用されて洗いさらされることによって、出来上がり当初なお残っていた人間的臭み(くさ )も、洗い流されていく。

   「個性が間接にされる」と柳(やなぎ)がいう反復の根本傾向(けいこう)、すなわち作為(さくい)の脱色(だっしょく)を意味する「間接性」を、柳(やなぎ)は版画や大津絵(おおつえ)などにも見てとる。それら「工芸的絵画」は、あの「革命の画家」たちが描い(えが )た近代絵画のように、個性表現を目指した絵画ではないが、「個性を去る境地にこそ絵画の一天地」がある。たとえば浮世絵(うきよえ)の場合、近代的な理解からすれば、絵師の筆による原画が、個性という原像にもっとも近いだろう。けれども「大概(たいがい)の場合段違い(だんちが )に版画になったものの方が美しい。原画の殆ど(ほとん )凡て(すべ )は版画以上に美しくあることはむずかしい」。

   柳(やなぎ)は反復におけるかたちの生成を、このように工芸に主軸(しゅじく)を置いて考えていた。この態度は、なるほど、それはそれで、ギリシア以来の手仕事への蔑視(べっし)を基底に潜め(ひそ )た西洋的伝統に対するアンチテーゼではあっただろう。けれども魯山人(ろさんじん)の視線を通して「手としての人間」をピカソと結びつけてみたように、私は、柳(やなぎ)のこうした限定を乗り越え(の こ )て考えたいと思う。すなわち柳(やなぎ)の思想的可能性を単なるアンチテーゼに留めず、積極的に徹底(てってい)化する方向で、彼(かれ)が見たかたちの生成を、造形のより広い領野に見出しうるものと考えたいのである。

 

  (伊藤(いとう)徹(とおる)『柳(やなぎ)宗悦(むねよし)――手としての人間』)

問5 読解マラソン集3番「そもそもプラトンが」を読んで次の問題に答えましょう。
 ○と×との組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A プラトンは、絵画は模倣ではなく創造であるべきだと説いた
B 柳は、原像から遠ざかることが原像に近づく方法であると考えた
1 A○ B○   2 A○ B×   3 A× B○   4 A× B×

解答選択:

問6 読解マラソン集3番「そもそもプラトンが」を読んで次の問題に答えましょう。
 ○と×との組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A 工芸品は、実生活に使用されることによって、工芸品の作者の個性を明らかにする
B 版画の美しさは、原画の個性を生かすところにある
1 A○ B○   2 A○ B×   3 A× B○   4 A× B×

解答選択: