未ログイン ログイン
読解検定
 難しい文章を読み取る力をつける
 ドルくんの 読解検定  編集
※最初にログインをしてください。言葉の森の団体コードは、aaa001です。
※番号を選択し「確認」ボタンを押して送信してください。

題名:○テーマパークのなかで
 テーマパークのなかでもっとも成功した例として引き合いに出されるのが、長崎(ながさき)のハウステンボスである。「ヨーロピアンテイスト」に遊ぶ楽しみを提供する空間として宣伝されるテーマパークである。しかし、この概念(がいねん)化された空間には、その概念(がいねん)化を拒否(きょひ)する要素がある。建物の背景に見える長崎(ながさき)地方の山である。コンセプトはこの風景によって綻び(ほころ )をみせる。この山の風景は、ヨーロッパという概念(がいねん)から取り残され、ヨーロピアンテイストという概念(がいねん)を極東という日本の現実につなぎとめる。つなぎとめることは実は、概念(がいねん)への夢想を覚醒(かくせい)するという効果をもっている。コンセプトはこの風景によって綻び(ほころ )を見せるのである。

   概念(がいねん)の綻び(ほころ )を見せるこの風景については、たとえば中世に築造された日本庭園での「借景」を考えてみると興味深い。自然を抽象(ちゅうしょう)化し、囲い込ま(こ )れた寺院の空間につくられる庭園は、さまざまにデザインされる。たとえば、京都嵐山(あらしやま)の天龍(てんりゅう)寺の庭園は夢窓疎石(むそうそせき)によると伝えられるものであるが、その背景に嵐山(あらしやま)を借景として取り入れている。この借景は、日本庭園のコンセプトにとってむしろ積極的な意義を与え(あた )ている。それはつくられた庭園ではあるが、この空間は結局は現実の空間のなかに位置づけられるということである。「借景」とは、たしかに庭園外の景物がその庭園空間の景物として位置づけられるという意味で、コンセプトのなかに取り込ま(と こ )れる事態を意味している。しかし、逆に、概念(がいねん)として構想された庭園空間がつねに現実的な世界のなかに位置づけられているといういわば「醒ます(さ  )」効果をももっている。そして借景の価値のひとつは、この「醒ます(さ  )」効果のうちにあるように思う。

   天龍(てんりゅう)寺の庭園をつくったといわれる夢窓疎石(むそうそせき)は、『夢中問答集』で、「世間の珍しい(めずら  )宝物を愛好するなかに、山水をもまた愛して、奇(き)石珍(ちん)木を選び求めて、集めて置くひともある。このようなひとは山水のやさしさを愛さず、たんに俗塵(ぞくじん)を愛するひとである」と述べている。またつぎのような重要なことばがある。

   夢窓疎石(むそうそせき)の思想では、庭園をつくるにも、山河大地草木瓦石(がせき)を自己の本分として心得て、山水を愛するべきだということになる。庭園は限定された空間であるが、それをつねに山河大地との関連でとらえることの重要性がここには語られている。コンセプトと外界との関係をとらえるのに、夢窓疎石(むそうそせき)のように考えるのと、テーマパークの思想とでは、ちょうど逆の発想になっていることが分かる。テーマパークの思想では、ヨーロッパ風景の向こうに見える日本の山は、概念(がいねん)のいわば綻び(ほころ )である。これに対して、日本庭園では、借景となっている山は、概念(がいねん)と風景とを結ぶきわめて重要な、積極的な役割を担っている。

   テーマパークの思想は、空間に価値を与える(あた  )という積極的な意味をもっているように見える。しかし、ここには意味を付与(ふよ)することが豊かな空間をつくることであるという重大な錯覚(さっかく)が潜ん(ひそ )でいる。一定の概念(がいねん)がその空間のもっていた多様な解釈(かいしゃく)の可能性を廃棄(はいき)してしまうのである。テーマパークでは空間の価値のコンセプトが、その空間の囲い込み(かこ こ )と大規模な土木工事を伴う(ともな )という点で、空間そのもののもつ価値の多様性を損なう。しかも、この囲い込み(かこ こ )は、物理的な隔壁(かくへき)によって行われる。いわばハードなゾーニングである。このようなハードゾーニングとしてのテーマパークの経営が破綻(はたん)したときのことを考えるとよい。それはコンセプトの破綻(はたん)であるが、管理できなくなった空間は囲いこまれたまま放置される。しかし、そこには、雑草が侵入(しんにゅう)してくるであろう。自然にはゾーニングは存在しない。それはただ人間の概念的(がいねんてき)思考によって生み出されるのである。

 

  (桑子(くわこ)敏雄(としお)『環境(かんきょう)の哲学(てつがく)』による)

問1 読解マラソン集1番「テーマパークのなかで」を読んで次の問題に答えましょう。
 ○と×との組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A 長崎のハウステンボスは、借景を生かしていることで知られている
B 天龍寺の庭園は、作られた庭園でありながら、現実の中に位置づけられている
1 A○ B○   2 A○ B×   3 A× B○   4 A× B×

解答選択:

問2 読解マラソン集1番「テーマパークのなかで」を読んで次の問題に答えましょう。
 ○と×との組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A テーマパークは、外界よりもコンセプトを中心にして庭園を作っている
B テーマパークは、空間に価値を与えるという点で多様性を生み出している
1 A○ B○   2 A○ B×   3 A× B○   4 A× B×

解答選択: