未ログイン ログイン
読解検定
 難しい文章を読み取る力をつける
 ドルくんの 読解検定  編集
※最初にログインをしてください。言葉の森の団体コードは、aaa001です。
※番号を選択し「確認」ボタンを押して送信してください。

題名:○自己決定・自己責任というのは
 自己決定・自己責任というのは裸(はだか)の自己として、孤立(こりつ)無援(むえん)で社会に立ち向かうということです。百パーセントのリスクを引き受ける代わりに、獲得(かくとく)された利益もまた誰(だれ)とも共有せず、百パーセント独占(どくせん)すると宣言する主体が「しなやかで、たくましい個」として称揚(しょうよう)される、という構図です。

   このような「孤立(こりつ)した人間」を「自立した人間」として自己形成のロールモデルに掲げる(かか  )ということが、だいたい八〇年代半ばくらいからフェミニズムとポスト・モダニズムに支援(しえん)されるかたちで日本社会全体でしだいに合意を得てゆきました。「自立」と「孤立(こりつ)」の間には実際には千里の逕庭(けいてい)があるのですが、そのことを指摘(してき)した人はほとんどいません。

   「孤立(こりつ)している人」にとって、他者はすべて彼(かれ)または彼女(かのじょ)の自由や自己実現の妨害(ぼうがい)者です。百パーセントの自由を享受(きょうじゅ)するのが「孤立(こりつ)した人間」の目標なわけですから、「他者が存在する」ということ自体がすでに主体の自由を制約することになります。主体は他者が占め(し )ている空間については、そこを可動域に算入できない。可動域について制約があるということは、主体の自由が損なわれているということですから、「孤立(こりつ)した主体」にとって、理論的に最高の状態というのは、世界に彼(かれ)の他には人間が一人もいない状態だということになります。そうでしょう。そこにいるのが「敵」であれば、もちろん主体の自由の妨害(ぼうがい)者ですし、「友人」であれば支援(しえん)や連帯の義務が生じるし、「奴隷(どれい)」であっても扶養(ふよう)と管理という煩瑣(はんさ)な仕事を伴う(ともな )。つまり、「百パーセントの自己決定・自己実現」というありえないものを求める人間は、論理の必然として、自分以外に誰(だれ)が存在しても、それが自己実現の妨害(ぼうがい)者になるという不快な条件を生きなければならない。

   「自立している人間」というのは、そういうものではありません。「自立」というのは属人的な性格ではないからです。「オレは自立しているぞ」といくら力んでみても、それだけでは自立した人間にはなれません。その人の判断や言動が適切であることが経験的に確証されたために、周りの人々から繰り返し(く かえ )助言や支援(しえん)や連帯を求められるようになった人が「自立した人間」と呼ばれるというだけのことです。「自立」とは名乗りではなく、呼称(こしょう)です。周りの人から「あの人は自立した人だ」という承認を受けるということです。「自立」というのは集団的な経験を通じて事後的に獲得(かくとく)される外部評価です。ですから、「自立した人間」は、「敵」であれ「友人」であれ、「保護すべきもの」であれ、多くの他者によって取り囲まれています。そのネットワークの中で絶えずおのれ自身を造型し、解体し、再改訂(かいてい)し、ヴァージョン()・アップするのが「自立した人間」です。

   しかし、実際に八〇年代以降日本社会で「自立した人間」と呼びならわされてきたのは「孤立(こりつ)した人間」の方でした。

   人間の孤立(こりつ)化はさまざまな病態を取ります。「学びからの逃走(とうそう)」はその初期的なものの一つです。

   孤立(こりつ)した自分がたった一人で学校というシステムと正面切って向かい合っている。自分自身の価値観を学校システムに対等のものとして対峙(たいじ)させる。「これを勉強することにどんな意味があるんですか?」という問いをつきつける。自分にとって「価値がある」と理解できないものについては、これを学ぶことを拒否(きょひ)する。それが自己決定である。学ばないことから生じるリスクは自分で引き受ける、と。

   確かにそうなのです。彼ら(かれ )はそのリスクを堂々と引き受けているわけです。四則計算ができない、アルファベットが読めない、漢字が読めない、自分に興味のある領域についてのトリヴィアル()な知識はあるけれど、興味がないことは何も知らない。意味の「虫喰い(く )」状態の世界を特に不快とも思わずに生きている。そうやって彼ら(かれ )は階層下降のリスクをきっぱりと引き受けているわけです。

 

  (内田樹『下流志向』による)

問3 読解マラソン集2番「自己決定・自己責任というのは」を読んで次の問題に答えましょう。
 ○と×との組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A 孤立した人間は、他社の存在を妨害として見る
B 孤立した主体の求めるような百パーセントの自己実現はありえない
1 A○ B○   2 A○ B×   3 A× B○   4 A× B×

解答選択:

問4 読解マラソン集2番「自己決定・自己責任というのは」を読んで次の問題に答えましょう。
 ○と×との組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A 自立した人間になるためには、自分が自立しているという自覚を持つことが大切だ
B 自立した人間は、他人からの評価を超越して、自分の責任でリスクを引き受ける
1 A○ B○   2 A○ B×   3 A× B○   4 A× B×

解答選択: