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読解検定
 難しい文章を読み取る力をつける
 ドルくんの 読解検定  編集
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題名:○日本人は記録魔だ、と
 日本人は記録魔(ま)だ、と言う人がある。何でも、やたらにメモをとる、記録しておく。何のためということはない。おもしろそうなことも、おもしろくなさそうなことも、無差別に記録してしまう。事実がそこにあるからであろう。こういう記録魔(ま)的なところが、かえって日本に歴史らしい歴史の発達をおくらせることになった。歴史には史観という倫理(りんり)が必要で、がらくたの骨董(こっとう)屋のような人間は歴史家になることができない。

   思想の「体系」もない。しっかり固定した視点もない。ただ見聞を黙々と(もくもく )記録する。そして、記録するかたっぱしから、忘れ去られるのにまかせている。記録を史観で貫い(つらぬ )て不朽(ふきゅう)のものにしようなどとは考えない。しかし、このことが案外、創造のためにはプラスになるのである。むやみと記録し、たちまち忘却(ぼうきゃく)のなかへ棄て(す )さる。記録にとらわれない。去るものは追わずに忘れてしまう。そういう人間の頭はいつも白紙のように、きれいで、こだわりがない。

   日本人は無常という仏教観が好きだが、頭の中にも、無常の風が吹い(ふ )ていて、しっかりした体系の構築を妨げ(さまた )ている。しかし、へたに建物が立っていない空地だから、新しいものを建てるのに便利である、とも言えるのである。

   日本語はどうも、俳句や短篇(たんぺん)や珠玉(しゅぎょく)のような随筆(ずいひつ)に見られる点的思考に適している。逆に、大思想を支えるような線的思考の持久力には欠けている。しかし、持続力はときによくない先入主となって、精神の自由な躍動(やくどう)をじゃますることがないとは言えない。「ひらめき」をもつのには、日本語はなかなか好都合なのである。

   このごろ、やたらに、対話だとかコミュニケイションだとかが騒が(さわ )れているが、元来、日本人は多言、雄弁(ゆうべん)をきらい、沈黙(ちんもく)の言語を深いものと感じるセンスをもっている。巧言令色(こうげんれいしょく)スクナシ仁。そして、問答無用。

   ほかの人間と議論して、正と反との葛藤(かっとう)の中から合という中正を見つけていこうという弁証法のような考え方とは、日本人はもともと無縁(むえん)である。日本にレトリック(修辞学)や弁論術が発達しなかったのは当然であろう。対話によって思考を展開するのではなくて、独白、あるいは詠嘆(えいたん)によって、最終的な形の思考を、投げ出すように表現するのが日本的発想である。

   言いかえると、日本人は言語を使用しながら、ともすれば、伝達拒否(きょひ)の姿勢をとりやすい。他人のちょっとした言葉にも傷つく繊細(せんさい)さをもっていることもあって、自分の殻(から)にこもって内攻(ないこう)する。発散しない表現のエネルギーは鬱積(うっせき)して「腹ふくるるわざ」になるが、いよいよもって抑え(おさ )られなくなると、爆発(ばくはつ)するのである。

   宗教における悟道(ごどう)、啓示(けいじ)というのもこの範疇(はんちゅう)に入れて考えてよい。喫茶店(きっさてん)で友人とコーヒーをすすりながら悟り(さと )をひらく、というようなことは考えにくい。やはり、面壁(めんぺき)九年の修行の方がオーソドックスというものである。日本語は、どうも出家的創造性に適していると言うことが出来そうである。論理に行きづまった西欧(せいおう)の知識人が、禅(ぜん)に絶大な魅力(みりょく)を見出しているのも故なしとは言えないように思われる。

   出家的創造は、対話的発想による論理のように持続はしないが、高圧にまで圧縮されたエネルギーが爆発(ばくはつ)するときの力には、天地の様相を一変させるものすごさがあることも忘れてはならない。

   日本語が、いわゆる論理的でないと言われる、まさにその点に、日本語の創造的性格が存するということは、われわれを勇気づけるに足る逆説である。

 

  (外山滋比古(しげひこ)「日本語と創造性」による)

問7 読解マラソン集4番「日本人は記録魔だ、と」を読んで次の問題に答えましょう。
 ○と×との組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A 大思想を支えるような点的思考の言語には、弁証法のような考え方が向いている。
B 対話やコミュニケーションが重要だと騒がれはじめてから、日本人も、対話によって思考を展開することができるようになった。
1 A○ B○   2 A○ B×   3 A× B○   4 A× B×

解答選択:

問8 読解マラソン集4番「日本人は記録魔だ、と」を読んで次の問題に答えましょう。
 ○と×との組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A 日本語は、思考の持久力には欠けるが、自由なひらめきがある。
B 日本語は、論理的ではないから、逆に創造的な性格を持っている。
1 A○ B○   2 A○ B×   3 A× B○   4 A× B×

解答選択: