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読解検定
 難しい文章を読み取る力をつける
 ドルくんの 読解検定  編集
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題名:★近代小説は一般に
 近代小説は一般(いっぱん)に無制約な形式であるといわれている。無制約であるとは、限界まで希薄(きはく)化された様式性を意味する。私に帰属する固有の内面を、そのまま忠実に模写し外部に対象化するには、表現媒体(ばいたい)はできるだけ無制約的であることが望ましい。近代以前の日本語文には、様々な制約が課せられていた。明治期における「言文一致(いっち)」とは、たんに口語と文語の一致(いっち)を目指したものではない。国木田独歩の『武蔵野』以降の日本の近代小説であろうと、会話部分が忠実に「口語」を再現しているといえない点をあげるまでもなく、それは歴然とした事実だろう。今日でも事態は同様である。「対談」や「座談会」でも、会話のテープを忠実に起こした原稿(げんこう)と、公表される文章とのあいだには大きな相違(そうい)がある。「対談」や「座談会」として公表される文章のほとんどは、日本の近代小説の会話体を規範(きはん)として修正されているのだ。たんにテープを起こしたにすぎない文章は、読者の立場からいえばほとんど読むに耐え(た )ない。

   明治における「言文一致(いっち)」とは、文語と口語の一致(いっち)を目指すことを必ずしも意味していない。それは軍艦(ぐんかん)や軍隊を製造したり運営したりする主体(近代的な私)の内面をそれ自体として過不足なく外面化しうるための、可能な限り無制約的で無媒介(ばいかい)的な、換言(かんげん)すれば様式性に制約されない透明(とうめい)な表現形態を無から創造するために求められた運動にほかならない。「言文一致(いっち)」によって生誕した日本の近代小説のスタイルは、主語一人称(いちにんしょう)代名詞を「自分」に、文章末尾(まつび)を「デアリマス」に統一するよう決定された軍隊用語のそれとほとんど構造的に照応している。

   明治期において新文章をめぐる試行錯誤(しこうさくご)が、もっぱら近代小説の文体をめぐる問題として顕在(けんざい)化したことには必然的な理由がある。小説形式は他の伝統的な文芸ジャンルと比較(ひかく)して無制約的な、没(ぼつ)様式的なジャンルである。だから小説は近代的な内面を外面に過不足なく移しかえる透明(とうめい)な表現形態として、近代における文学表現の王座の地位を確保しえた。

   しかし以上のような発生メカニズムの解明は、近代小説の自己了解(りょうかい)を裏切らざるをえない。近代的な私は、固有の内面を小説形式という無制約的で透明(とうめい)な表現形態において、作品に対象化=外面化する。だが、「言文一致(いっち)」が文字どおりの言文一致(いっち)を意味していないように、無制約的で没(ぼつ)様式的であると信じられた近代小説の言語には、暗黙(あんもく)の制約性や様式性が課せられているのだ。それは主体を規制するというよりも、主体なるものを事後的に産出するような超越(ちょうえつ)的なメカニズムにほかならない。近代小説の作者および読者は、この超越(ちょうえつ)的なメカニズムを制度であるとは認識しない。むしろ原理的に認識しえないというべきだろう。

   近代小説の言語と文体は近代以前に普遍(ふへん)的だった「作者のいない作品」の水準を超え(こ )て、作者=作品(内面=外面)という直結形態を可能ならしめたと自負している。けれども認識されない表現形態の物質性は、無意識的な制約として近代小説の作者および読者を密かに統御(とうぎょ)し支配している。それは文体についてのみいえることではない。近代小説の発生史を克明(こくめい)に検証してみれば、近代的な意識には大気のように自明であると信じられているものが、長年の曲折の結果としてかろうじて確立されたシステムにすぎないことも了解(りょうかい)されるだろう。

 

  (笠井(かさい)潔氏の『探偵(たんてい)小説論序説』による)

問5 読解マラソン集3番の長文「近代小説は一般に」を読んで、○と×の組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A 近代小説は、様式に制約がないので、無制約な形式であるといわれている
B 言文一致体と軍隊用語の「自分ハ……デアリマス」という言い方の間には共通性がある
1 A○ B○   2 A○ B×   3 A× B○   4 A× B×

解答選択:

問6 読解マラソン集3番の長文「近代小説は一般に」を読んで、○と×の組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A 近代小説は制約の少ないジャンルだったので、言文一致体の試行錯誤の場となった
B 近代小説の作者は、近代小説の持つ暗黙の制約性を深く自覚していた
1 A○ B○   2 A○ B×   3 A× B○   4 A× B×

解答選択: