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読解検定
 難しい文章を読み取る力をつける
 ドルくんの 読解検定  編集
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題名:★所詮は卵や雛の
 所詮(しょせん)は卵や雛(ひよこ)の段階でしかない未熟な才能を過信し、それに頼り(たよ )過ぎることであっけなく自滅(じめつ)の道を辿っ(たど )てしまった小説家や詩人は枚挙にいとまがない。ために、それが芸術家の王道であり、それが本物の証であるとする誤った固定観念が広まり、また、そうした安易な生きざまの周辺に漂う(ただよ )甘(あま)さに共鳴する風潮が幅(はば)を利かせて、わが国の救いがたい、進化とも、深化とも一切無縁(むえん)な「文学の青枯れ(か )病」を招くに至ったのである。

   かく言う私の場合だが、小説家のレッテルを貼ら(は )れた二十三歳(さい)の時点で、自分の才能がせいぜい卵の段階でしかないという認識をきちんと持っていた。磨い(みが )て育てないことにはたちまち行き詰まっ(い づ  )てしまうだろうという確信を抱い(いだ )ていた。そう受け止めることができたのは、当時、大御所(おおごしょ)と呼ばれている既成(きせい)の書き手たちの才能が飛べる鳥の域にまで達していたからではない。むしろその逆で、文学愛好家と関係者たちが飛べない鳥を眺め(なが )て満足しているのかと思うと、ひどく失望したことを未だに生々しく記憶(きおく)している。

   ペンを握っ(にぎ )たときから、翼(つばさ)を育てなければ飛べない世界が無尽蔵(むじんぞう)に存在することに気づいていた。それこそが文学の世界に違い(ちが )ない、本物の魅力(みりょく)を秘めた高みを滑空(かっくう)してみたいという一心から、何十年費やしても、いつの日かきっと飛んでやると意を決し、挑み(いど )つづけてきた。少しずつではあっても確実に力がつき、以前なら絶対に不可能だった世界に手が届くようになってゆく喜びは何物にも代えがたく、その醍醐味(だいごみ)と達成感に酔い(よ )痴れる(し  )ことが書く動機として固まっていった。

   四十代後半に狙い(ねら )をつけた長編小説があった。テーマも構想も充分(じゅうぶん)だったが、敢えて(あ  )書かなかった。なぜなら、その大空を飛翔(ひしょう)するだけの翼(つばさ)の力が具(そな)わっていないという自覚があったからだ。つまり、当時の文章力では歯が立たない超(ちょう)大物だったのだ。それほど手ごわい相手には、とてつもない表現力が必要不可欠であるということをよくよく承知していた。

   それは、絢爛(けんらん)たる言葉によって紡が(つむ )れた時代絵巻の世界だった。日本が最も日本らしく、底抜け(そこぬ )に自由で、生き生きとしていた室町時代を背景に、かの有名な「日月山水図」の屏風(びょうぶ)絵と、それを描い(えが )た作者が不詳(ふしょう)であることを想像の起爆(きばく)剤(ざい)に用い、極めて大胆(だいたん)な発想によって、小説の原点とも言うべきめくるめく物語を構築し、かつてどの書き手も為し(な )得なかった形式と、漢語と大和言葉との融和(ゆうわ)を図る文体を存分に駆使(くし)しなくてはならない、新境地だった。六十代に入ってまもなく、今ならそれが書けるという自信を得た。

   心のひだを丹念(たんねん)に描い(えが )てゆく、ちまちま、こせこせした小説も、それはそれでわるくはないのだが、そうした作品の対極に位置するぶっ飛んだ小説を、原始的で、呪術(じゅじゅつ)的で、異常なまでの吸引力を秘め、それでいながらどこまでも格調の高い大叙事詩(じょじし)のごとき長編小説を無性に書きたくなった。膨大(ぼうだい)な資料を読みあさり始めたのが二年ほど前だった。そして、昨年の暮れに千三百枚を脱稿(だっこう)した。

   最後の一行を書き終えたとき、信じつづけてきた小説家としての基本姿勢に間違い(まちが )ないことが静かな興奮となって襲っ(おそ )てきた。あれくらいの長い年月を費やさなければ、これくらいの作品は書けないのだということが、また、この喜びを味わうための四十数年の助走であったということが実感された。

   だが、その喜びも束の間だった。今はもう新たな大空を目指して、没頭(ぼっとう)と継続(けいぞく)の日々を送っている。飛んでも飛んでも尽きる(つ  )ことのない文学の天空は、もしかするとこの宇宙より広いかもしれないと、そう思いながら。

 

   (丸山健二「尽き(つ )ない文学の天空」による)

問5 読解マラソン集3番「所詮は卵や雛の」を読んで次の問題に答えましょう。
 ○と×との組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A 私が小説家になったころ、私は当時の文学関係者たちに失望していた。
B 私が文学に志したのは、当時の閉塞した文学の状況を打破したかったからだ。
1 A○ B○   2 A○ B×   3 A× B○   4 A× B×

解答選択:

問6 読解マラソン集3番「所詮は卵や雛の」を読んで次の問題に答えましょう。
 ○と×との組み合わせが合っているものの数字を書きなさい。
A 四十代後半に書こうと思っていた小説は、多くの人生経験を必要とするものだった。
B 四十代に書こうと思っていた小説が書けたのは、六十代になってからだった。
1 A○ B○   2 A○ B×   3 A× B○   4 A× B×

解答選択: