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記述の森の記述検定
★10月の問題だけができるようになっています。
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 記述の森の記述検定  編集
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題名:○こうしてこれまで人間は
 【1】こうしてこれまでに人間は、平和のための備えをし、平和のためと称する(しょう  )戦争を始め、いつしかそれが人間から平和を奪う(うば )ただの戦争になっていた、という経験をしばしばしてきました。【2】備えをすることが全く不要だとは言えないでしょうが、平和というものが相手のある問題、他者との関係である以上、備えさえあれば平和でいられるという単純(たんじゅん)なものではないことも、次第に明らかになってきたのです。
 【3】加えて、平和についての思索(しさく)が進むにつれ、こういう別の問題も意識されるようになります。すなわち、戦争さえなければそれで平和と言えるか――。
 たとえば、多くの人々が極度の貧困(ひんこん)にさいなまれ、飢え(う )に苦しんでいるような社会は平和だろうか。【4】また、人種や性による差別が根強く残り、女児の就学(しゅうがく)率が男児のそれよりもいちじるしく低いような社会は平和だろうか。あるいは、字が読めないばかりに十分な社会参加ができず、自分たちが不利益をこうむっていることさえ気づかない人がたくさんいる社会は平和か。そういう問題です。
 【5】一九六〇年代も終わる頃(ころ)、それらもまた暴力と呼ぶ(よ )べきだ、と主張する学者が現れました。ノルウェーのヨハン・ガルトゥンクという人です。【6】いま述べたさまざまな問題は、誰(だれ)かが誰か(だれ )を殴っ(なぐ )たり殺したりするという意味での暴力ではないが、みずから望んだわけではない不利益をこうむる人は確実にいるのだから、それもまた別のかたちの暴力と呼ぶ(よ )べきだという考え方で、その種の「暴力」に「構造的暴力」という名前をつけました。【7】これに対し、人を殴っ(なぐ )たり殺したりするような種類の暴力を「直接的暴力」と呼び(よ )ます。
 「構造的」という言葉づかいはあまりなじみのないものかもしれませんが、おおよそ次のような意味です。たとえば、一つの社会の中で、一方には巨額(きょがく)の富を占め(し )、飽食(ほうしょく)している人がいる。【8】もう一方にはいくら働いても十分な収入(しゅうにゅう)が得られず、あるいは職さえも得られず、十分な食糧(しょくりょう)さえ得られない人がいる。それが当人たちの能力ややる気の問題ではなく、富の配分の仕組みが不適切であることの結果であるとしたなら、また、特定の人種や性が原因でなかば自動的に貧困(ひんこん)や飢餓(きが)の中に閉じ込め(と こ )られているとしたなら【9】――それは社会構造が原因で生み出されている暴力と呼ぶ(よ )ほかないのではないか。富める人々が貧しい人々を殴りつけ(なぐ   )て飢え(う )させているのではなく、したがって加害者は特定できないが、社会構造の被害(ひがい)者はいるという意味での「暴力」なのではないか。【0】
 この構造的暴力論(ろん)は、それまでの平和論(ろん)の見落としていた点を浮き彫り(う ぼ )にし、新たな地平を開くものでした。それまでは「戦争のないこと」が「平和」だとされていたのに対し、戦争がなくとも「平和ならざる状態」はある、という視点(してん)を理論(りろん)化するものだったからです。その背後(はいご)には、平和とは何より社会正義の問題なのではないか、という問題意識があります。人間が自分の責任によらないことで差別され、排除(はいじょ)され、悲しみ、傷つく(きず  )のは平和とは言えないのではないか、という問題意識です。
 平和研究の課題は一挙に広がりました。戦争や武力紛争(ふんそう)や軍拡(ぐんかく)が主題だった(少なくともそう信じられていた)のに対し、貧困(ひんこん)や開発や人権(じんけん)や平等といった、いわば非軍事的な社会問題に関心を広げていったのです。いまでも平和研究といいますと戦争や軍拡(ぐんかく)の研究ですねと言う方が少なくありませんが、けっしてそうではありません。それ以外の問題に対する関心も高く、その中にはジェンダーとか環境(かんきょう)とかいった、今日的な問題も含ま(ふく )れます。それは単に「研究対象を広げた」ということではありません。暴力の意味が変わり、平和の意味が変わったからそれらの問題が必然的に平和研究に入り込ん(はい こ )できた、ということなのです。

(最上敏樹(としき)『いま平和とは』)

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