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記述の森の記述検定
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 記述の森の記述検定  編集
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題名:○わずか一粒の種から
 【1】わずか一粒(つぶ)の種から一万個以上もの実をつけたトマトの巨木(きょぼく)がある。遺伝子組み換え(く か )などの新しい技術により、このようなトマトができたのかと想像されるかもしれないが、そうではない。
 このトマトは、一本の根幹から何千もの枝が分かれて、トマトの実を結ぶ。【2】最も多いときで、一万個以上が実るというから確かにすごい。その秘密は、太陽の光と、水と空気の恵み(めぐ )を充分(じゅうぶん)に受けて土なしで育てるところにある。水中の養分を補えば、根の部分は水中に浸し(ひた )ておくだけで栽培(さいばい)できるのである。
 【3】つまり、植物がその成長能力を最大限に発揮する上で、土は不要ということなのだ。
 むしろ、土に根を生やしているがために、潜在(せんざい)的な成長能力は一定に押さえつけ(お    )られている。一万個も実をつけるトマトは、実際、土とは無縁(むえん)である。【4】これが、植物の成長にとって理想的な環境(かんきょう)だというのである。
 将来、人類が地球を出て、宇宙で生活するためには、このような栽培(さいばい)法が、どうしても必要となる。この巨大(きょだい)なトマトの木は、生き物にはまだまだ私たちの知らない、無限とも言える可能性が秘められていることを、見事に示した。
 【5】一方、科学用語のひとつに、「最適規模・最適値」という言葉がある。ある環境(かんきょう)の中の最適な数や量のことで、自然界は、非常にうまくこの最適規模を守っている。(中略)
 この観点からすると、一粒(つぶ)の種から一万個も実をつけるのは本当に良いことなのか。
 【6】個別にその植物だけを取り出して考えると、問題は解きほぐせない。大地、植物、光、水、大気という自然界全体の成り立ちを視野におさめて、初めてひとつの答えが導き出される。
 【7】植物は、大地に根を生やし、成長して実をつける。その樹液や花のみつ、木の実などを食べて生きる虫や小動物がいる。それを食べる動物もいる。死んだ動物は土にもどり、微生物(びせいぶつ)によって分解され、植物の養分となる。【8】こうして巧み(たく )な循環(じゅんかん)がなされているからこそ、自然界は過不足なく成り立つのであって、何処かの連鎖(れんさ)が断たれると、問題が生じる。
 木を切りすぎると動物もいなくなり、大地は枯渇(こかつ)して砂漠(さばく)化する。一粒(つぶ)の種だけが無際限に繁殖(はんしょく)すると、全体が危機に瀕する(ひん  )。
 【9】このように見てくると、普通(ふつう)のトマトが、一粒(つぶ)の種から一万個も実をつけないのは、土によって本来の成長をじゃまされているのではなく、生態系全体の中での適正な成長規模を守っているからだとも考えられよう。【0】
 遺伝子情報としては、一万個を実らせる能力を書き込ま(か こ )れているのだろうが、ぎりぎりまで発現させることは通常ないのである。
 複雑な生命体は、私たちの想像を超える(こ  )潜在(せんざい)能力を持っているとみてよい。しかし、生物相互(そうご)のかかわり合い、生物と自然とのかかわり合いの中で、能力の発現は一定に保たれる。つまり、生態系という高いレベルの有機的な秩序(ちつじょ)が保たれていくために、最適値がある。
 この生物の中に人類も含ま(ふく )れる。科学・技術を発達させ、際限なく生産の拡大を図るだけでは、人類はいつか行き詰る(い づま )。そして、次の世代に大きな負の遺産を残すことになる。
 人間は、限度を超え(こ )て物が増えた分だけ、心が貧しくなり、寂しく(さび  )なっていくのではないか。それを解決するには、人間の慎み(つつし )が必要である。
 先ごろ、ノーベル平和賞を受賞したケニアの女性環境(かんきょう)保護活動家ワンガリ・マータイさんが、日本語の「もったいない」をエコロジーの言葉「モッタイナイ」として世界に紹介(しょうかい)したように、「慎み(つつし )」も新時代の人間の生き方を表す世界の共通語「ツツシミ」となるよう広く伝えていきたいものである。
 「モッタイナイ」は単に物を節約することではないし、「ツツシミ」は欲望を消極的に抑える(おさ  )ことではないだろう。
 この言葉の背後には、人類を含め(ふく )た生物が、大自然の偉大(いだい)な力「サムシング・グレート」により生かされているということに対する感謝の気持ちが込め(こ )られている。

(村上(むらかみ)和雄(かずお)の文章による)

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