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記述の森の記述検定
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題名:○野球で「二年目のジンクス」ということが
 【1】野球で「二年目のジンクス」ということがよく言われる。一年目は好成績を残したのに、二年目はさっぱりダメという場合である。イチローのような特段に優れた選手は例外で、ほとんどが並の実力の持ち主だから、一年目は誤差でたまたまいい成績となっただけで、二年目からは平均に戻っ(もど )たと考えた方が正しいだろう。【2】にもかかわらず、スウィングが悪い、モーションが悪いと指摘(してき)され、自分もそうではないかと思い込ん(おも こ )でフォームを崩し(くず )てしまい、結局大成しなかった選手が多くいる。数年間を見て実力を見極める度量が欲しいものである。

 【3】以上、判断の各過程におけるエラーについて述べてきたが、それらに共通する心理を整理しておこう。
 まず、「認知的節約の原理」がある。限られた情報から欠けた部分を経験や先入観や単純な類推によって補い、効率よく事態を処理しようとする心理のことだ。【4】本人にとって負担が少ない思考法だが、そこにエラーが生じてしまうのだ。
 続いて、「認知的保守性の原理」を挙げよう。すでに持っているスキーマを保ち維持(いじ)しようとする傾向(けいこう)で、反証を無視したり、無理にでも自分の描()像に合わせてしまう心理である。【5】自分は一貫(いっかん)した考え方をしていると自認できるので心理的な安定感が得られることになる。だからこそ間違い(まちが )やすいとも言える。自分が安心できる思考法でつい安住してしまうからだ。
 【6】もう一つは、「主観的確証の原理」で、どちらともつかない証拠(しょうこ)だけでなく明らかな反証であっても、自分の予期を積極的に支持していると勝手に解釈(かいしゃく)する心理傾向(けいこう)である。「いやよいやよも好きのうち」と身勝手に思い込ん(おも こ )でセクシュアルハラスメントに及ぶ(およ )人間がその典型と言える。【7】自分の身勝手さに気づかず、全て他人のせいにして安閑(あんかん)としている人にお目にかかることが多いのはこのためだろう。被疑(ひぎ)者に対して状況(じょうきょう)証拠(しょうこ)しか見つかっていないのに犯人と決めつけ、すべてその仮定の下で解釈(かいしゃく)したがる例もある。【8】犯人が見つかっていないと不安だが、強引にでも決めつけてしまえば安心するのだ。(早く安心したいという気持が底に潜ん(ひそ )でいることもある。)この心理には、思考の経済性や一貫(いっかん)性なども絡み合っ(から あ )ている。こうなるともはや自省する気持を失ってしまう。
 【9】さらに付け加えるとすれば、「偶然(ぐうぜん)性を拒否(きょひ)したい心理」、言い換えれ(い か  )ば「確固とした因果関係として説明したい心理」もある。偶然(ぐうぜん)に起こったことであっても必然だと思い込み(おも こ )、それをきちんとした因果関係で説明しようとすると科学的な理由が見つからず、ついに超(ちょう)常的現象だと考えてしまうケースである。【0】予知夢がテレパシーしかないと解釈(かいしゃく)し、たまたま当たったのを透視(とうし)できたと受け取り、そのまま信じ込ん(しん こ )でしまうのだ。認知的エラーを自覚しない人ほど、自分の体験を絶対化して信じ込む(しん こ )傾向(けいこう)が強い。「しょせん、体験したことがない人にはわからない」として、他人の意見や忠告を受け入れなくなってしまうのだ。そして、自分の意見を強調すればするほどその信念はいっそう強くなっていき、もはや後戻り(あともど )が不可能になる。
 むろん、人間の認知エラーが多いと言っても、私たちは日常生活において大きな支障なしに生きている。それを無意識のうちに矯正(きょうせい)したり、または大きな問題が起こらないので気づかないままやり過ごしている。ときには認知エラーが人間の生存にプラスにはたらいていることもあると知っておくべきだろう。あまりに気にし過ぎると神経症(しんけいしょう)を病むことになりかねないからだ。
 ただ、突発(とっぱつ)的な事件が起こって即座(そくざ)の判断を迫ら(せま )れたり、すぐに合理的な解釈(かいしゃく)ができない事象に遭遇(そうぐう)したりしたとき、認知過程には誤りが多いことを自覚して、自分の推論を絶対化しないことが肝腎(かんじん)なのである。それは疑似科学に騙さ(だま )れていないか自らを点検することにも通じるからだ。

(池内了(りょう)『疑似科学入門』による)

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