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記述の森の記述検定
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 読む力、書く力、考える力を育てる
 記述の森の記述検定  編集
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題名:○じつは、物理や化学の研究者のあいだでは抄録誌の利用率は、一部の(感)
 【1】じつは、物理や化学の研究者のあいだでは抄録(しょうろく)誌の利用率は、一部の化学者を除いて、それほど高くないのである。
 その一つの理由として、研究者にとっては論文は要約だけでは役に立たないことがあげられる。【2】もっとも要約されたかたちの抄録(しょうろく)は有用であり、必要である。しかし、彼(かれ)自身の研究に直接に関連のある研究であれば、抄録(しょうろく)を読んだだけで用がすむということはあり得ない。本文を読もうと決心した途端(とたん)に、彼(かれ)にとっては著者抄録(しょうろく)は意味を失う。【3】著者抄録(しょうろく)は著者の目で見た内容抄録(しょうろく)であり、彼(かれ)は自分の目でその論文を読むのだからである。論文のなかで、著者は彼(かれ)の代わりに実験や計算をやってくれている。彼(かれ)は、著者とともに考えを進め、しばしば著者のやり方に不満をおぼえ、時として著者と反対の結論に到達(とうたつ)する! 【4】それは一種の創造の過程と言っていいかもしれない。こういう読者にとっては、要約は単にきっかけを与え(あた )てくれるにすぎず、その集録である抄録(しょうろく)誌に目をさらす時間はどちらかというと空しいものと感じられる。
 【5】結果だけを必要とする読者は要約集で用が足りる。その先をめざす読者にとっては、第一線の結果の羅列(られつ)よりも一つ一つの結果が得られた過程のほうが大切なことが多い。本論文を通じて著者とともに創造の過程に参画してはじめて、将来の展望がひらけるからである。
 【6】最良の要約は、あるいは、発展の機縁(きえん)を生むだけのものを内蔵しているかもしれない。しかし、それを読み解くには、鉛筆(えんぴつ)を片手に本論文のなかの計算を追跡(ついせき)する以上の努力がいるだろう。

 【7】要約精神の権化は教科書である。高校の物理の教科書は、アルキメデス以来の物理学者がつみ上げてきたものの要約だ。学問は日に日に進むから、要約すべき素材は年々ふえる。教育にあてるべき若年の期間はかぎられているから、教科書の厚さはふやせない。【8】何を捨て、何をえらぶか――二千年の物理学をいかに要約・抄録(しょうろく)して読者を今日の視点に近づけるか――は教科書の筆者の最大の問題である。
 そういう目で見ると、今日の教科書は、どれをとってみてもかなりよくできている。【9】よくまあこんなにつめこめたと思うくらいだ。しかしそれは抄録(しょうろく)であるがゆえに「つまらない」という宿命をもっている。抄録(しょうろく)の集積をよみつづけることができるのは、はっきりした目的をもって何かを探し求めている人――ロケット技術者――か、たちまち眼光紙背(がんこうしはい)に徹し(てっ )てその抄録(しょうろく)の秘めているものを見ぬくことのできるえらい人だけだ。【0】高校生はどちらでもないから、彼ら(かれ )にとって教科書がつまらないのは、石を投げれば下に落ちると同じぐらい自然な話である。私の知っているある大学生の話では、彼女(かのじょ)の高校の物理の時間は、生徒が輪番(りんばん)に教科書を音読する、P先生が「質問はありませんか」と言う、だまっていると「じゃ、次……」という調子だったそうだ。彼女(かのじょ)が文系に進んだのは当然である。「P先生よ、地獄(じごく)に落ちろ!」だ。
 教科書が要約集であることは、まあ、仕方がなかろう。しかし、講義までが要約でいいという法はない。教科書の一ページの背後には厖大(ぼうだい)な研究があり、それらすべては自然そのものとのつき合いから生まれている。その創造の過程を解き明かし――歴史の話をするという意味ではない――生徒をその過程に招待するのが教育というものであろう。そんなことをしたら教科書全部はとてもやれない――そのとおり。教科書あるいは抄録(しょうろく)集というものは元来そういうふうに使うべきものなのだ。

 (木下是雄()『日本語の思考法』より)

問1:筆者は、自分の研究に直接関係する論文を読む研究者にとって、著者抄録(しょうろく)は本文を読むと意味を失うと述べています。それはなぜですか。  60~70字
文字数(もじすう):0字



問2:筆者は、「結果だけを必要とする読者」と「その先をめざす読者」とでは、論文を読むときに重視するものが異なると述べています。どのように異なりますか。  60~70字
文字数:0字



問3:筆者が、高校の物理の教科書はよくできているにもかかわらず、生徒にとって「つまらない」という宿命を持つと考えているのはなぜですか。  60~70字
文字数:0字



問4:筆者は、教育では知識の要約を伝えるだけでなく、生徒を「創造の過程」に招待することが重要だと述べています。あなたが教師なら、教科書の内容をどのように教えれば、生徒をその過程に参加させられると思いますか。具体例を挙げて論じなさい。  100~120字
文字数:0字