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記述の森の記述検定
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 読む力、書く力、考える力を育てる
 記述の森の記述検定  編集
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題名:○白い紙に記されたものは
 【1】白い紙に記されたものは不可逆である。後戻り(あともど )が出来ない。今日、押印(おういん)したりサインしたりという行為(こうい)が、意思決定の証として社会の中を流通している背景には、白い紙の上には訂正(ていせい)不能な出来事が固定されるというイマジネーションがある。【2】白い紙の上に朱(しゅ)の印泥(いんでい)を用いて印を押す(お )という行為(こうい)は、明らかに不可逆性の象徴(しょうちょう)である。
 【3】思索(しさく)を言葉として定着させる行為(こうい)もまた白い紙の上にペンや筆で書くという不可逆性、そして活字として書籍(しょせき)の上に定着させるというさらに大きな不可逆性を発生させる営みである。推敲(すいこう)という行為(こうい)はそうした不可逆性が生み出した営みであり美意識であろう。【4】このような、達成を意識した完成度や洗練を求める気持ちの背景に、白という感受性が潜ん(ひそ )でいる。
 子供の頃(ころ)、習字の練習は半紙という紙の上で行った。黒い墨(すみ)で白い半紙の上に未成熟な文字を果てしなく発露(はつろ)し続ける、その反復が文字を書くトレーニングであった。【5】取り返しのつかないつたない結末を紙の上に顕し(あらわ )続ける呵責(かしゃく)の念が上達のエネルギーとなる。練習用の半紙といえども、白い紙である。そこに自分のつたない行為(こうい)の痕跡(こんせき)を残し続けていく。【6】紙がもったいないというよりも、白い紙に消し去れない過失を累積(るいせき)していく様を把握(はあく)し続けることが、おのずと推敲(すいこう)という美意識を加速させるのである。この、推敲(すいこう)という意識をいざなう推進力のようなものが、紙を中心としたひとつの文化を作り上げてきたのではないかと思うのである。【7】もしも、無限の過失をなんの代償(だいしょう)もなく受け入れ続けてくれるメディアがあったとしたならば、推すか敲く(たた )かを逡巡(しゅんじゅん)する心理は生まれてこないかもしれない。
 現代はインターネットという新たな思考経路が生まれた。【8】ネットというメディアは一見、個人のつぶやきの集積のようにも見える。しかし、ネットの本質はむしろ、不完全を前提にした個の集積の向こう側に、皆(みな)が共有できる総合知のようなものに手を伸ばす(の  )ことのように思われる。【9】つまりネットを介し(かい )てひとりひとりが考えるという発想を超え(こ )て、世界の人々が同時に考えるというような状況(じょうきょう)が生まれつつある。かつては、百科事典のような厳密さの問われる情報の体系を編むにも、個々のパートは専門家としての個の書き手がこれを担ってきた。【0】しかし現在では、あらゆる人々が加筆訂正(ていせい)できる百科事典のようなものがネットの中を動いている。間違い(まちが )やいたずら、思い違い(おも ちが )や表現の不的確さは、世界中の人々の眼に常にさらされている。印刷物を間違い(まちが )なく世に送り出す時の意識とは異なるプレッシャー、良識も悪意も、嘲笑(ちょうしょう)も尊敬も、揶揄(やゆ)も批評も一緒(いっしょ)にした興味と関心が生み出す知の圧力によって、情報はある意味で無限に更新(こうしん)を繰り返し(く かえ )ているのだ。無数の人々の眼にさらされ続ける情報は、変化する現実に限りなく接近し、寄り添い(よ そ )続けるだろう。断定しない言説に真偽(しんぎ)がつけられないように、その情報はあらゆる評価を回避(かいひ)しながら、文体を持たないニュートラルな言葉で知の平均値を示し続けるのである。明らかに、推敲(すいこう)がもたらす質とは異なる、新たな知の基準がここに生まれようとしている。

(原研哉()『白』による)

問1:  ~字
文字数(もじすう):0字



問2:  ~字
文字数:0字



問3:  ~字
文字数:0字



問4:  ~字
文字数:0字