未ログイン ログイン
記述の森の記述検定
★10月の問題だけができるようになっています。
 読む力、書く力、考える力を育てる
 記述の森の記述検定  編集
※最初にログインをしてください。言葉の森の団体コードは、aaa001です。
※解答欄への入力は、音声でもテキストでもどちらでもできます。

題名:★人間が、自分の行っている活動から(感)
 【1】人間が自分の行っている活動から充実(じゅうじつ)感を得たいと考えること、あるいは自分が生きていることに「張り合い」を感じたいと思うことは、きわめて自然で普遍(ふへん)的なことだと言って良いだろう。【2】親が子どもの順調な成長ぶりを見て、自分の養育活動に充実(じゅうじつ)感を持つことも、会社員が自分の仕事の結果によって会社の業績が上がったことを喜ぶことも、ともにいつの時代にも見られる「生きがいの探究」と考えて良いはずだ。【3】だが、にもかかわらず、「生きがい」という言葉の意味合いは時代によって微妙(びみょう)に変化してきたし、その微妙(びみょう)な違い(ちが )こそが重要なのではないか。
 【4】たとえば、現代においてボランティア活動を行っている人々と、かつて学生運動を行っていた人々とでは、同じように「生きがい」を感じていたとしても、その「生きがい」を求める姿勢それ自体が違っ(ちが )ているように私には思われる。【5】だから私は現代の「生きがいの探究」の意味について、こうした時代による意味の違い(ちが )にこだわって考えることにしたい。
 【6】いま例に出したような、学生運動をしていたような戦後日本社会の青年たちは、「生きがい」を自分の衣食住に関わる私生活や、それを維持(いじ)するための稼ぎ(かせ )仕事ではなく、今よりももっと理想的な社会を作りだすための公共的な活動に求めていた。【7】そうした活動に自己犠牲(ぎせい)的に没入(ぼつにゅう)することによって、自分自身の社会的・実存的な存在意義を高めること。そうした理想主義的で前向きな行動が、彼ら(かれ )の感じていた「生きがい」だったと思われる。
 【8】そして実は、そうした理想を志向する「生きがい」感は、彼ら(かれ )が軽蔑(けいべつ)していたような、同時代のごく平凡(へいぼん)な日本人にも共有されていた感覚だったと言える。【9】なぜなら彼ら(かれ )もまた、自分の生活状態に満足することなく、今よりももっと豊かな生活を「理想」として目指すことに「生きがい」を感じていたからだ。【0】だからこそ、彼ら(かれ )はあくせくと働いてお金を稼ぎ(かせ )、黙々と(もくもく )辛い(つら )家事労働をこなすことができたのだ。つまりいずれにせよ、理想実現のために行動することが一九六〇年代までの日本社会の「生きがい」だったと思われる。
 しかし、一九七〇年代から八〇年代にかけて、このような「生きがい」感は大きな変貌(へんぼう)を遂げ(と )た。もはや人々は、未来の理想的状況(じょうきょう)のために現在を犠牲(ぎせい)にして活動することには「生きがい」を感じなくなったのである。今ここで得られる快楽を犠牲(ぎせい)にして、やってこない理想の未来のために馬車馬のように走り続けることの一体どこに充実(じゅうじつ)感があるのだろう。それよりも、欲望のままにブランド物の洋服を着て、豪華(ごうか)なレストランでの食事を楽しんだ方が、よほど自分の人生をその瞬間(しゅんかん)において充実(じゅうじつ)させることになるのではないか。そう人々は考えはじめた。つまり彼ら(かれ )は、その時その時の「現在」における即時(そくじ)的な快楽の充足(じゅうそく)に「生きがい」を感じ出したと言えよう。(中略)
 そして、一九九〇年代以降、不況(ふきょう)となって消費生活が縮減され、阪神(はんしん)大震災(だいしんさい)によって豊かな消費生活の底の浅さが露呈(ろてい)されてしまうと、人々は再び「生きがいの探究」に向かい始めたように見える。たとえばボランティア活動の普及(ふきゅう)は、人々が単なる私的欲望の充足(じゅうそく)だけでなく、自己犠牲(ぎせい)的な公共的活動に「生きがい」を見いだしている証拠(しょうこ)だと言えよう。
 しかしやはり、そこにはかつての「生きがいの探究」とは微妙(びみょう)な違い(ちが )があるように私には思える。つまり現在の人々は、他者のために行動することに喜びを見いだしているというよりも、他者のためのボランティアをまるで「自分のため」に行っているように見えてしまうのだ(その真面目さを疑うわけではないが)。(中略)
 つまり「生きがいの探究」はいまや、未来の自分や社会を作りだすような理想志向的な活動ではなく、現在の日本社会の奇妙(きみょう)な閉塞(へいそく)感を反映した、後ろ向きの活動になってしまっている。だから私たちは、「生きがいの探究」という美化された物語に簡単に乗るよりも、それを疑うところから「自分探し」の自閉空間を切り裂く(き さ )可能性を見つけるべきだろう。

(長谷正人「生きがいの探究」から)

問1:  ~字
文字数(もじすう):0字



問2:  ~字
文字数:0字



問3:  ~字
文字数:0字



問4:  ~字
文字数:0字