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記述の森の記述検定
★10月の問題だけができるようになっています。
 読む力、書く力、考える力を育てる
 記述の森の記述検定  編集
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題名:★二〇世紀という時代は(感)
 【1】二〇世紀という時代は、言語学と記号学の隆盛(りゅうせい)を見た時代として記録されることだろう。ぼく自身は、どちらの専門家ともいえないにせよ、今世紀の主だった哲学(てつがく)者たちをとおして、言語学と記号学にそれなりの関心を寄せてきたつもりだ。【2】特に、イタリアの哲学(てつがく)者で小説家でもあるエーコの著作には、ずいぶんとお世話になった。このエーコによる記号の定義は、明快そのものだ。記号とは、それによって嘘(うそ)をつけるもののことだというのである。
 【3】確かに、ぼくたちがあれこれと指示できるものの存在に縛ら(しば )れたままだったとすれば、そもそも記号世界など存在しえないのかもしれない。鳩(はと)がいたら鳩(はと)を示し、猿(さる)がいたら猿(さる)を示す。それだけのことだったろう。【4】しかし、言語記号によって、鳩(はと)がいなくても、「鳩(はと)がいる」と表現し、猿(さる)がいても、「猿(さる)はいない」と表現することができ、そういった表現によって指示対象のあるなしにかかわらず、しかるべき意味を伝えることができるのである。
 【5】エーコの記号学は、指示対象と記号内容とを峻別(しゅんべつ)するところに立ち、それはそれで十分に説得力をもつ。ただ、最近思うのは、そもそも嘘(うそ)をつこうとする意志についてだ。【6】もちろん、記号というものがあるからこそ、誰(だれ)であれ、嘘(うそ)をつくことができるのだろうが、嘘(うそ)をつこうとする意志については、それは、言語学や記号学の手に余るのかもしれない。【7】しかしその一方で、嘘(うそ)をつこうとする意志の存在を考慮(こうりょ)しないかぎり、言語や記号の研究も、どこか空虚(くうきょ)なものとなりはてるのではないか。そんなことを漠然と(ばくぜん )ながら考えるようになったのである。
 【8】そうなるに当たっては、グラシアンを読み直しはじめたのが大きかったろう。グラシアンは、ちょうどデカルトと同時代のスペインの著作家だ。【9】実践(じっせん)哲学(てつがく)としては、見かけや外観の徹底的(てっていてき)な活用を説いたことで知られる。そのように説いた根底には、この世は敵意に対する戦いからなるという世界観があった。見かけや外観の効用とは、他面では隠蔽(いんぺい)や偽装(ぎそう)の効用でもある。【0】顔つきや言葉から手の内を見透かさ(みす  )れないように、とでもいえばよいだろうか。これは、今日でも十分に通用する処世術だろう。グラシアンの本が欧米(おうべい)のビジネスマンに重宝されているというのもうなずけないことではない。
 グラシアンの恐るべき(おそ   )ところは、神についても、見かけの術を適用してみせたことだ。この世のあれこれの外観だけで神の力が尽き(つ )ているとは、誰(だれ)も思うまい。神は、そういった外観で推しはかれないほどの無限の力をもつ。人間が自らを偽装(ぎそう)しつつ、推しはかれないほどの力をもつように見せかけるとしたら、それは神の手口を模倣(もほう)していることにもなるはずだ。だとすれば、神もまた、見かけの術の行使者ということになりかねまい。外観の術といおうと、隠蔽(いんぺい)の術といおうと、実のところ、嘘(うそ)の技術というのと大差あるまいから、神は、嘘つき(うそ  )の超(ちょう)大家ということになってしまうのだ。
 アルゼンチンの作家、ボルヘスの『虎(とら)たちの黄金』に、「狂態(きょうたい)」という意味深長な一篇(へん)がある。衆人環視(かんし)のもと、狂気(きょうき)の発作におそわれたふりをして、仇敵(きゅうてき)を殺してしまう男の物語だ。男は、人殺しの最中には責任能力がなかったということで、無罪放免(ほうめん)となる。グラシアンの思想と、このボルヘスの短篇(たんぺん)とが結びついたとき、正直いって、頭がくらくらとしたものだ。何か異常な事件が起こるたびに、被告(ひこく)は責任能力が問える精神状態にあったのかどうかが問題とされる。被告(ひこく)側は、当然、精神能力を問えない状態にあったふりをするだろう。こういった事態は、これからも、あれこれと進行していくに違い(ちが )ない。見かけの術の行使者を看過しない毅然(きぜん)とした態度が求められる。しかし、それは、悪意に対する戦いという世界観が厳然と露呈(ろてい)されることでもある。

(篠(しの)原資明の文章による)

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問4:  ~字
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