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記述の森の記述検定
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 記述の森の記述検定  編集
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題名:○戦後の日本人に(感)
 【1】戦後の日本人に大いなる勇気を与え(あた )た出来事の一つとして、一九四九年に湯川秀樹(ひでき)博士に届いたノーベル物理学賞受賞の知らせが挙げられる。敗戦の精神的痛手から立ち直ろうと苦闘(くとう)していた当時の日本人にとって、日本人初の栄誉(えいよ)の知らせは、大いに自信を与え(あた )、勇気づけられるニュースであったと伝え聞く。
 【2】それまで、物質を構成する最小単位である素粒子(そりゅうし)は永遠不滅(ふめつ)のものであると考えられていたが、湯川博士が、寿命(じゅみょう)を持ち消滅(しょうめつ)してしまう「中間子」の概念(がいねん)を初めて提出した。【3】有限な命を持つ粒子(りゅうし)を考えなければ、物質の相互(そうご)作用は説明できないというのが彼(かれ)の理論の核心(かくしん)である。
 湯川博士の業績は、理論物理学におけるそれである。理論物理というと、難解な数学を使うこともあり、きわめて専門的な分野という印象が強い。【4】やはり、若い時に集中的に勉強して、早めに頭角を現さなければどうしようもないというイメージを持つ人が多いだろう。
 しかし、理論物理の天才を育成するためには「鉄は熱いうちに打て」を実行するのがよいかというと、事はそんなに単純ではなさそうだ。
 【5】幼少期から数理系の専門的な訓練をするいわゆる「英才教育」を行った事例がよく知られているが、若くして大学に進むなどの成果はあるものの、その後伸び悩ん(の なや )でしまうことが多い。なぜ、英才教育による「早熟の天才少年・天才少女」はその後、才能を伸ばせ(の  )ないことが多いのか。【6】湯川博士の生涯(しょうがい)に、この疑問に対する答えのヒントが隠さ(かく )れているように思う。
 湯川博士のお父さんは本が好きで、蔵書で手狭(てぜま)になる度に「もっと広いところに移らなければダメだ」とばかりに引っ越し(ひ こ )を繰り返す(く かえ )、そんな家庭環境(かんきょう)だったという。【7】湯川博士も、幼少期から『論語』や『史記』などの中国の古典を徹底的(てっていてき)に素読させられた。後年、湯川博士の物理学に留まらない幅広い(はばひろ )教養は世間に知られることになるが、その礎(いしずえ)は子どもの頃(ころ)に築かれたのである。
 【8】漢籍(かんせき)の素養は、理論物理学には直接関係ないように思われるかもしれない。確かに、幅広い(はばひろ )教養だけでは、独創性を発揮できない。集中的に理論物理を勉強し、思索(しさく)するということがなければ、中間子理論もノーベル賞受賞もなかったであろう。
 【9】その一方で、脳の仕組みから考えると、漢文の素読で培わ(つちか )れたような総合的知性が、中間子理論の独創につながった可能性は高い。脳の中では、漢籍(かんせき)の教養と数理的な思考をそれぞれ担う部分は完全に独立しているわけではない。【0】全ての要素はお互い( たが )につながり、関係し合っているのである。
 総合的な教養、知性という「裾野(すその)」があって、初めて鋭利(えいり)な専門的能力も立ち上がる。理論物理学をやろうという場合でも、直接の関連性が高い物理や数学の知識だけが必要なのではなく、一見関係がないようにも見える『論語』の素養が役に立つ。だからこそ、人間の知性は奥深く(おくふか )、面白いのである。
 対象となる活動分野が、文学のように、最初から「酸いも甘い(あま )も噛み分け(か わ )た」人生経験を必要とするようなものだったら、総合的知性が作品に反映されるのも当然と思われるかもしれない。総合的知性が必ずしもその業績に直結せず、場合によっては邪魔(じゃま)するかにさえ見える理論物理学のような分野において、様々な素養が役に立つという視点が興味深いのである。
 人間としてのトータルな力がなければ、どんな専門性においても天才という名に相応しい仕事を残すことはできない。どうやら、それが真実であるようである。

 (茂木(もぎ)健一郎(けんいちろう)「それでも脳はたくらむ」による)

問1:筆者は、幼少期から専門的な英才教育を受けた人が、その後才能を伸ばせ(のばせ)ないことが多い理由を、どのように考えていますか。  60~70字
文字数(もじすう):0字



問2:湯川秀樹(ひでき)博士が幼少期に『論語』や『史記』などを学んだことは、後の物理学の研究にどのように役立ったと筆者は考えていますか。  60~70字
文字数:0字



問3:筆者が「総合的な教養、知性」を「裾野(すその)」にたとえているのはなぜですか。この比喩(ひゆ)が表していることを説明しなさい。  60~70字
文字数:0字



問4:本文では、専門分野とは一見関係のない学びも、将来の独創的な仕事に役立つことがあると述べられています。あなたが、直接役立つとは思わなかった学習や経験が、別の場面で役立った例を挙げ、幅広く(はばひろく)学ぶことについて考えたことを書きなさい。  100~120字
文字数:0字