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音読の丘
 音読で、読む力、書く力が育つ。
 オンドリくんの 音読の丘
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 美術担当(たんとう)の先生洋は、学校の近くで開かれている写生大会を見まわりながら指導していたが、その途中(とちゅう)で、描く(えが )のに苦労している女の子の下絵をよかれと思って手伝った。一方、学校で何かと話題の中心になる根元少年の姿(すがた)が見えず、気になっていたが……。

 ふりむくと――根元少年が立っていた。
―先生は描(か)かんのきゃあ?
と、きいた。
―ん? 今日は見まわるだけで手一杯(ていっぱい)やからな。
正直に答えてから、ふと気になってきき返した。
―根元はもう描(か)いたンか。
根元少年は黙っ(だま )て画板をさしだした。白紙だった。ピンを外して裏返し(うらがえ )て見ても何も描い(えが )てなかった。
―今までなにしてたンや。
ちょっときつい声になってとがめるように言ってしまった。根元少年は平気で、チョウチョを追いかけとった――と答えた。
―白紙なんか受けとらヘンよ。
と言ってやっても、やっぱり平然としている。そしてさっきとおなじ質問をした。
―先生は描(か)かんの?
―描(か)く用意してへんさかいなあ。
根元少年は黙っ(だま )て自分の画板と絵具箱と、カンヅメを利用した水入れをさしだした。
―根元のを描(か)いてやるわけにはいかんがな。
やんわり断ると、根元少年はついと横をむいて鼻を鳴らした。
―女の子のは手伝ってやったのによ……。
どこからか見ていたらしい。
―あんまりおそいから、ほんのちょと手伝うたンや。
弁解がましくなると知りながらも正直に説明した。すると根元少年は自分の画用紙を指して、おれの方がもっとおそい……と、つぶやいた。
―それはちがうで。あの子は一生懸命(いっしょうけんめい)やってもおくれたンや。根元はチョウチョを追うとっておくれてただけやろ。
さすがに洋もちょっととんがった声で言ってやると、根元少年は首をすくめ、
―言えてる。
さすがに自分のさぼったことをみとめた。
―今からでも描(か)くか。手伝わンけど、見てたるさかい……。
洋が誘う(さそ )と、根元少年は素直にうなずいた。
―どこで描(か)くンや?
―さっきの女の子のとこ。
根元少年はただちに答えた。
―あそこ、先生の気にいったとこだろが。
―なんでわかるンや?
―チョウチョ追いかけながらでも気がついとったけど、先生、あそこに五ヘンも立ってたもんだでよ。
(ちゃんと見ておったンやな。いや、おれをつけとったな。そやさかい、こっちが探し(さが )ても見つからんわけや……。)
洋は苦笑して、さっきの場所へいそいだ。ところがそこで思いもかけない光景を見てしまったのだ。

(今江(いまえ)祥智(よしとも) 「牧歌」)