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音読の丘
 音読で、読む力、書く力が育つ。
 オンドリくんの 音読の丘
※最初にログインをしてください。言葉の森の団体コードは、aaa001です。
※音読の丘は、家庭での音読の練習用として使ってください。
1.音読する文章が2つある場合は、最初の方の文章を音読してください。
2.はじめに、音声入力を始めるのボタンを押してください。
3.音読が終わったら音声入力を止めるのボタンを押してください。
4.音声入力を止めたあと、結果を送信するのボタンを押してください。



「そう。古田の婆さん(ばあ  )、なんていったの?」
「……なんにも……」
「貸してくださいっていったんでしょう?」
「……うん……」
「でもだまってたの?」
「……うん……」
 そのあと母がなにもいわないので、ぼくは母を上目づかいにみた。母はやさしく笑ってぼくをみているだけだった。でも、母は泣いていた。ぼくに笑いかけながら、涙(なみだ)が頬(ほお)をつたっていた。ぼくは母をなかせてしまったとせつなくなった。本当のことをいわなければ。ぼくは重い口を開いた。
「貸してって、心の中で、いったんだ……。口にだしていわなかった……」
「そう」
母はぼくの手をとった。細くて、あたたかくて、白くて、きれいな手だった。あのぬくもりはいまでもぼくの手に残っている。
「久志は自分がどういうことをしたか、わかっているわよね」
「……うん……」
「これからは絶対にそんなことをしちゃだめよ」
母はやさしくぼくを諭し(さと )た。
「約束してくれる?」
「……うん……」
「父ちゃんに、ちゃんとお金を返してもらおうね」
「うん」
「約束だよ。久志がやったことは人間としてやってはいけないことなの。でも、本当のことをいってくれて、母ちゃん、久志のこと、安心したよ。本当のことをいうのは、勇気がいるよね。でも母ちゃんは、久志はほんとうのことをいってくれるとしんじていたよ」
 そういうと、母は突然(とつぜん)ベッドの上で息を詰まら(つ  )せたように泣き出した。ぼくの手をにぎり、ぼくをみつめたまま、ポロポロと涙(なみだ)をこぼした。
「ごめんなさいね。母ちゃん……本当にごめんなさいね」そういって母は震え(ふる )だした。
 なぜ母がぼくに謝らなければならないのだろう? ぼくはとまどい、どうしていいのかわからず、だまって母をみつめることしかできなかった。
「ごめんなさいね。本当にごめんなさいね」
 母は声を震わせ(ふる  )ていつまでもぼくに謝るのだった。いつまでも……。

(川上健一「翼(つばさ)はいつまでも」)