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音読の丘
 音読で、読む力、書く力が育つ。
 オンドリくんの 音読の丘
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※音読の丘は、家庭での音読の練習用として使ってください。
1.音読する文章が2つある場合は、最初の方の文章を音読してください。
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 【1】ふと気がついたとき、しっかりと、手にもってきたふろしきづつみが、ぬれているのです。くすりをつつんできた、あのふろしきづつみです。
 はっとして、雪(ゆき)の道(みち)にうずくまると、つつみをといてみました。【2】水ぐすりがこぼれて、三分の(ぶん )一ぐらいへっているのです。こなぐすりのふくろは、べったりとぬれて、茶(ちゃ)いろのしみをつくっていました。コルクのせんが、ゆるんでいたのです。ほてっていたからだじゅうのあせが、つめたくなるほど、びっくりしました。
 【3】そのくすり代(だい)がいくらだったか、いまはおもいだせませんが、わがやのくらしの中で、それは、たいへんなお金だったことだけは、たしかです。けんこうほけんなどはなかった、ずっとむかしのはなしです。
 どうしたら、よかっぺか――
 【4】わたしは、雪(ゆき)の上に、べったりと、すわりこんでしまいました。
 このまま家(いえ)へかえったら、母(はは)がどんなにがっかりするか……、うんとしかられることは、わかりきっています。もう一どもどってくすりをもらうには、お金がありません。【5】五年生だったわたしには、どうしたらいいのか、わかりませんでした。
 そのとき、小さな水の音がきこえてきました。道ばた(みち  )の石がきのあいだから、ちょろちょろとながれでている、わき水の音です。学校のいきかえりに、きまってのんでいく水でした。【6】だれがもってくるのか、みじかい青竹が、かけひのようにさしこんでありました。青竹は、ときどきだれかにひきぬかれます。すると、フキの葉っぱ(は  )をまるめて、さしこんであることもありました。
 わき水は、夏(なつ)の日のように、ふきだしてはおりません。【7】雨だれのように、ぽつん、ぽつんと、そこだけ、雪(ゆき)をとかしておちていました。
 わたしは、おもわず、まえとうしろを見まわしました。ひとっこひとり、あらわれません。たちあがると、そのかけひの下に、くすりびんを、あてがっていたのです。
 【8】びんの中のくすりは、うす茶(  ちゃ)いろになりましたが、三日分(ぶん)のその目もりまで、いっぱいになりました。
 しっかりせんをすると、びんだけをふろしきにつつみなおし、こなぐすりのふくろは、ふところのはだのところまで、じかにいれました。【9】からだのぬくもりで、すこしでもかわかそうとしたのです。
 そして、のろのろ、あるきだしました。あるきながら、うそのいいわけを、いっしょうけんめいかんがえていました。
「いってきたよ。」
 わたしは元気(げんき)のない声(こえ)で、そうあいさつしながら、おもい大戸(おおど)をあけました。
 【0】いろりには、火がもえていて、けだるそうな顔(かお)をして、母(はは)はおきていました。
 わたしは、だまって、あがりはなにこしをおろすと、母(はは)のほうにせなかをむけたまま、ゆっくりと、長(なが)ぐつをぬぎました。そのようすが、ふだんとはちがうことに、母(はは)は気づいたのでしょう。
「どうかしたんか? 頭(あたま)でもいてえだか? くすりは、もらえたんか?」
と、やつぎばやに、ききました。
「もらってきたけえど……。いしゃどんからでたとこの水ったまりへおとしちまって……。」
 わたしは、ふところからぬれたこなぐすりをだすと、いろりばたからはとおい、あがりはなのいたのまに、ひざをついてなきだしたのです。
 道(みち)みち、かんがえてきたうそのいいわけを、とうとういってしまったじぶんが、こわくなっていたのかもしれません。
「ぬれたぐれえ、かわかせばすむこった。あっち(心配(しんぱい))はねえ。こんだっから、気いつけるだよ。」
 ないているわたしが、かわいそうだったのか、母(はは)は、やさしくそういっただけで、ぬれたくすりぶくろを、かわかすように、いろりのすみにおきました。
 色(いろ)のうすくなった水ぐすりは、いつもいれておく戸(と)だなへ、じぶんでそっとしまいました。
 さむいけれど、母(はは)とむきあって、いろりの火にあたるのは、つらかったので、
「おひるごろっから、頭(あたま)がいたくってー。」
 そういって、こたつの中へもぐりこみました。
「かぜっけなだっぺあ、かぜにこたつはどくだぜ、ちゃんとふとんにねて、ひとあせかいたがいい。」
 むりやり、ふとんにねかされたのでした。
 目をつぶると、
(くすりって、なんの水でつくるのだんべえか。くすりの中へ、ただの水をたしてしまって、どくにはならなかっぺえか――。)
 と、つぎつぎ、またしんぱいになりました。

「ほらふきうそつきものがたり」『かけひの水』(宮川(みやがわ)ひろ)より