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音読検定
 楽しくできる音読で、読む力、考える力が育つ。
 音読検定

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2026/9/22

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 【1】ふと気がついたとき、しっかりと、手にもってきたふろしきづつみが、ぬれているのです。くすりをつつんできた、あのふろしきづつみです。
 はっとして、ゆきみちにうずくまると、つつみをといてみました。【2】水ぐすりがこぼれて、三分のぶん 一ぐらいへっているのです。こなぐすりのふくろは、べったりとぬれて、ちゃいろのしみをつくっていました。コルクのせんが、ゆるんでいたのです。ほてっていたからだじゅうのあせが、つめたくなるほど、びっくりしました。
 【3】そのくすりだいがいくらだったか、いまはおもいだせませんが、わがやのくらしの中で、それは、たいへんなお金だったことだけは、たしかです。けんこうほけんなどはなかった、ずっとむかしのはなしです。
 どうしたら、よかっぺか――
 【4】わたしは、ゆきの上に、べったりと、すわりこんでしまいました。
 このままいえへかえったら、ははがどんなにがっかりするか……、うんとしかられることは、わかりきっています。もう一どもどってくすりをもらうには、お金がありません。【5】五年生だったわたしには、どうしたらいいのか、わかりませんでした。
 そのとき、小さな水の音がきこえてきました。道ばたみち  の石がきのあいだから、ちょろちょろとながれでている、わき水の音です。学校のいきかえりに、きまってのんでいく水でした。【6】だれがもってくるのか、みじかい青竹が、かけひのようにさしこんでありました。青竹は、ときどきだれかにひきぬかれます。すると、フキの葉っぱは  をまるめて、さしこんであることもありました。
 わき水は、なつの日のように、ふきだしてはおりません。【7】雨だれのように、ぽつん、ぽつんと、そこだけ、ゆきをとかしておちていました。
 わたしは、おもわず、まえとうしろを見まわしました。ひとっこひとり、あらわれません。たちあがると、そのかけひの下に、くすりびんを、あてがっていたのです。
 【8】びんの中のくすりは、うす茶  ちゃいろになりましたが、三日ぶんのその目もりまで、いっぱいになりました。
 しっかりせんをすると、びんだけをふろしきにつつみなおし、こなぐすりのふくろは、ふところのはだのところまで、じかにいれました。【9】からだのぬくもりで、すこしでもかわかそうとしたのです。
 そして、のろのろ、あるきだしました。あるきながら、うそのいいわけを、いっしょうけんめいかんがえていました。
「いってきたよ。」
 わたしは元気げんきのないこえで、そうあいさつしながら、おもい大戸おおどをあけました。
 【0】いろりには、火がもえていて、けだるそうなかおをして、はははおきていました。
 わたしは、だまって、あがりはなにこしをおろすと、ははのほうにせなかをむけたまま、ゆっくりと、ながぐつをぬぎました。そのようすが、ふだんとはちがうことに、ははは気づいたのでしょう。
「どうかしたんか? あたまでもいてえだか? くすりは、もらえたんか?」
と、やつぎばやに、ききました。
「もらってきたけえど……。いしゃどんからでたとこの水ったまりへおとしちまって……。」
 わたしは、ふところからぬれたこなぐすりをだすと、いろりばたからはとおい、あがりはなのいたのまに、ひざをついてなきだしたのです。
 みちみち、かんがえてきたうそのいいわけを、とうとういってしまったじぶんが、こわくなっていたのかもしれません。
「ぬれたぐれえ、かわかせばすむこった。あっち(心配しんぱい)はねえ。こんだっから、気いつけるだよ。」
 ないているわたしが、かわいそうだったのか、ははは、やさしくそういっただけで、ぬれたくすりぶくろを、かわかすように、いろりのすみにおきました。
 いろのうすくなった水ぐすりは、いつもいれておくだなへ、じぶんでそっとしまいました。
 さむいけれど、ははとむきあって、いろりの火にあたるのは、つらかったので、
「おひるごろっから、あたまがいたくってー。」
 そういって、こたつの中へもぐりこみました。
「かぜっけなだっぺあ、かぜにこたつはどくだぜ、ちゃんとふとんにねて、ひとあせかいたがいい。」
 むりやり、ふとんにねかされたのでした。
 目をつぶると、
(くすりって、なんの水でつくるのだんべえか。くすりの中へ、ただの水をたしてしまって、どくにはならなかっぺえか――。)
 と、つぎつぎ、またしんぱいになりました。

「ほらふきうそつきものがたり」『かけひの水』(宮川みやがわひろ)より