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音読の丘
 音読で、読む力、書く力が育つ。
 オンドリくんの 音読の丘
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※音読の丘は、家庭での音読の練習用として使ってください。
1.音読する文章が2つある場合は、最初の方の文章を音読してください。
2.はじめに、音声入力を始めるのボタンを押してください。
3.音読が終わったら音声入力を止めるのボタンを押してください。
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 【1】ふいに、わたしは、かたのあたりをうしろからぐいとおされて、ころびそうになりました。ふりむくと、
「おい、じゃまだぞ。どけよ。」
 そばに、グローブをつけたのっぽの男の子が、わたしを見おろしてたっていました。【2】しらないまにわたしは、やきゅうのコースのまんなかにたっていたのです。はっと気がつくのといっしょに、
「さっさといけよ。のろまのあんぽんたん。」
「どかないと、ぶんなぐるぞ。」
 東京(とうきょう)べんのわる口が、ポンポンいりみだれて、わたしの耳にとびこんできました。【3】ぶんなぐるなどといわれたのは、うまれてはじめてです。それに、あるけっていったって、どっちへいけばいいのかわかりません。わたしは、頭(あたま)がかっとなって、からだをかたくしてつったったまま、なきそうになりました。【4】そのとき、
「どうしたの、キミちゃん。」
 よかった、としえちゃんでした。かけとおしてきたのか、まだ、ふうふういっていました。わたしは、ほっとして、どもりながら、
「あの、あのう、あの人たち、たたくって。じゃまだって、ここにいると……。」
 【5】じぶんでなにをいったのか、きれぎれにそれだけいうと、きゅうにかなしくなって、ポロポロ、なみだがでてきました。
「どの子が? ああわかった、けんちゃんでしょ。おかあさーん、けんちゃんがね、キミちゃんをぶったんだって。」
 【6】わざとそういったのか、かんちがいしたのか、としえちゃんは、うちのほうへむかって、大声(おおごえ)でさけんだのです。元気(げんき)なおばさんのことだから、その声(こえ)をきいたら、ひばしかほうきをもって、すっとんでくるかもしれません。【7】わたしは、あわてて、ちがうって、せつめいしようとしましたが、なきながらだし、それに、東京(とうきょう)べんでいおうとするので、ことばがうまくいえません。
 【8】いっしゅん、男の子たちは、おどろいたように、ポカンとつったっていましたが、けんちゃんとよばれた、いちばん気のよわそうな子が、なきそうな声(こえ)をふりしぼって、
「ぶちゃしないよォ、いなかっぺの、うそつきィ。」
と、ありったけの声(こえ)でさけぶと、くるりとうしろをむき、ワーッとなきながら、いちもくさんにおかをかけおりていきました。【9】ほかの子も、くもの子をちらすように、にげさっていきました。
 夕やけはいつのまにかきえて、はださむい夕やみがおかの上にもただよいはじめていました。
【0】「さ、いきましょ。」
と、としえちゃんは、ねえさんぶって、わたしのかたに手をまわしあるきだしました。
 「いなかっぺの、うそつき」――そのときになって、はじめて、このことばのいみが、おもく、わたしにのしかかってきました。
 うそつきは、どろぼうのはじまり。うそをいうと、死ん(し )でから、えんまさまにしたをぬかれるって、いつもかあさんがいう。わたしは、東京(とうきょう)の子に、みんなのまえでうそつきといわれた。しらない土地(とち)で、しらない子が、「いなかっぺの、うそつき」と、はっきりそういった。それも、あんなにくやしがって、なきながら。――「いなかっぺ」って、そんなにわるいものなのかしら、それに、わたしは、ほんとに「うそつき」なのだろうか。このことは、かあさんと秋田(あきた)の家(いえ)へかえってからも、頭(あたま)からきえませんでした。
 とおいとおいむかしの小さな小さなできごとです。けんちゃんとよばれたあの子も、いまはおじいちゃんになって、どこかでまごとあそんでいるかもしれません。それとも、日本じゅうのわかものたちが、せんそうにつれていかれた、あのころ、中国(ちゅうごく)か、マレーおきの海(うみ)で、みじかいいのちをちらしてしまったのかもしれません。
 戸山(とやま)が原(はら)も、いまは学校やビルがたちならび、ひろいどうろができ、すっかりかわってしまいました。あのあたりの町のようすも、どこがどうなったのか、おもいだすこともできません。あそんでいる子どもたちも、みんな、しらない顔(かお)ばかりです。
 それなのに、あの東京(とうきょう)のうら町の、小さいおかから見た、夕ぐれどきのものがなしいけしきと、小さなわたしの目の中でピンクいろにふくらんでいった大きななみだと、あの東京(とうきょう)の男の子のかなしそうな声(こえ)だけが、カラーテレビのように、いまもはっきりと、わたしの目に、耳に、のこっているのです。

「ほらふきうそつきものがたり」『いなかっぺのうそつき』(増村(ますむら)王子(きみこ))より