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音読の丘
 音読で、読む力、書く力が育つ。
 オンドリくんの 音読の丘
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※音読の丘は、家庭での音読の練習用として使ってください。
1.音読する文章が2つある場合は、最初の方の文章を音読してください。
2.はじめに、音声入力を始めるのボタンを押してください。
3.音読が終わったら音声入力を止めるのボタンを押してください。
4.音声入力を止めたあと、結果を送信するのボタンを押してください。



 ある日、昼めしをおえると父親は、あごをなでながらかみそりを取り出した。吉(きち)は湯をのんでいた。 
「だれだ。このかみそりをぼろぼろにしたのは。」 
 父親は、かみそりの刃(は)をすかして見てから、紙のはしを二つにおって切ってみた。が、すこしひっかかった。父の顔はすこしけわしくなった。 
「だれだ。このかみそりをぼろぼろにしたのは。」 
 父はかたそでをまくって、うでをなめると、かみそりをそこへあててみて、 
「いかん。」といった。 
 吉(きち)はのみかけた湯をしばし口へためて、だまっていた。 
「吉(きち)がこのあいだといでいましたよ。」と、姉は言った。 
「吉(きち)、おまえどうした。」 
やっぱり、吉(きち)はだまっていた。 
「うむ、どうした?」 
「ははあ、わかった。吉(きち)は屋根うらへばかりあがっていたから、なにかしていたにきまっている。」と、姉はいって庭へおりた。 
「いやだい。」と、吉(きち)はさけんだ。 
 姉は梁(はり)のはしにつりさがっているはしごをのぼりかけた。すると吉(きち)は、はだしのまま庭へおりて、はしごを下からゆすぶりだした。 
「こわいよう、これ、吉(きち)ってば。」 
 かたをちぢめている姉は、ちょっとだまると、口をとがらせてつばをかけようとした。 
「吉(きち)っ。」と、父はしかった。 
 しばらくして屋根うらのおくの方で、 
「まあ、こんなところに面がこさえてあるわ。」という姉の声がした。 
 吉(きち)は姉が面を持っておりてくると、とびかかった。姉は吉(きち)をつきのけて面を父にわたすと、父はそれを高くささげるようにして、しばらくだまってながめていたが、 
「こりゃよくできとるな。」 
 また、ちょっとだまって、 
「うむ、こりゃよくできとる。」といってから、頭を左へかしげかえた。
 面は父親を見おろして、ばかにしたような顔でにやりとわらっていた。 
 その夜、納戸で父親と母親とは、ねながら相談した。 
「吉(きち)をげた屋にさそう。」 
 最初にそう父親がいうと、いままでだまっていた母親は、 
「それがいい。あの子はからだがよわいから遠くへやりたくない。」といった。 
 まもなく吉(きち)はげた屋になった。 
 吉(きち)の作った面は、その後、かれの店のかもいの上でたえずわらっていた。むろんなにをわらっているのかだれも知らなかった。 
 吉(きち)は二十五年、面の下でげたをいじりつづけてびんぼうした。 
 ある日、吉(きち)はひさしぶりでその面を見た。すると面は、いかにもかれをばかにしたような顔をしてにやりとわらった。吉(きち)ははらがたった。つぎにはかなしくなった。が、またはらがたってきた。 
「きさまのおかげで、おれはげた屋になったのだ。」 
 吉(きち)は面をひきおろすと、なたをふるってその場でそれを二つにわった。しばらくしてかれは、げたの台木をながめるように、われた面をながめていたが、なんだかそれでりっぱなげたができそうな気がしてきた。