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音読検定
 楽しくできる音読で、読む力、考える力が育つ。
 音読検定

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2026/9/22

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 【1】首飾りくびかざ というものは、まず第一に財貨であり、第二に地位や富の象徴しょうちょうであり、そして第三にお守りである。といったさまざまな機能をもってきたようだし、今日もなお、これら三つの機能はそれぞれにはたらき続けている。だが、この第三の機能は、さらに世俗せぞく化して第四の役割をも受けもっているように思われる。【2】もちろん、真珠しんじゅのネックレースとか、高価な宝石をちりばめたペンダントとか、要するに貴金属というカテゴリーにはいる首飾りくびかざ もたくさんあるし、宝石店をのぞいてみると、何百万円、ときには何千万円、といった値段のついたおどろくべき首飾りくびかざ がならんでいたりする。【3】どういう人が買うのか、見当もつかないけれども、こういうものを首にかけるご婦人はおそらくそれを見せびらかし、わたしはこれだけお金持ちなのよ、ということを無言のうちに語ろうとなさっているに違いちが ない。
 【4】しかし、たとえば、パチンとフタのひらくロケットといったようなものを考えてみよう。それは決して高価なものとはかぎらないけれども、ロケットのなかには、愛する人の写真などがひそかに入っているものであるようだ。【5】このごろの世相は、そんなにロマンチックなものではないかもしれないけれども、昔はそういうものであったらしい。あるいは、母からむすめへと伝えられる首飾りくびかざ なども、それと似た性質をもっている。たとえそれが小さな銀のチャームであっても、それは母親という特定のひとの思い出とつながっているからだ。【6】貴金属としては全く無価値であっても、特定の人間が特定の人間とのかかわりのなかでかけがえのないものとして主観的に絶対の価値をあたえるもの――そういう種類の首飾りくびかざ もある。【7】ややほろ苦い感傷をこめてこうした種類の首飾りくびかざ をえがいた小説があったし、またグレン・ミラーの作曲になる「真珠しんじゅ首飾りくびかざ 」などもあった。この種類の首飾りくびかざ は決して財宝でもなく、富の象徴しょうちょうでもない。それはどちらかといえば、お守り系の首飾りくびかざ である。【8】とはいうものの、これは神様からの加護という意味でのお守りではない。それは特定の人とむすびついた人間的な記憶きおくや感情にかかわるものであって、しいて名づけるなら、安心型の首飾りくびかざ とでも呼ぶべきであろうか。【9】それを首にかけることで、空間的あるいは時間的にへだたった特定の人間が、擬似ぎじ的存在として感じられるからである。その擬似ぎじ的存在感は安心の根源になってくれるのだ。別段、特定の人間だけがそうした安心の根源になるわけではない。【0】たとえば、旅先でみずから買い求めたペンダント、などというものもあるだろうし、なにかの折の記念に、と贈らおく れたチャームなどもあるだろう。そういう首飾りくびかざ は、その場だの、できごとだのの思い出をたぐりよせるための糸口として作用するのである。
 なんでもない「物」に深く思い入れをしてしまうことを哲学てつがく用語では物神崇拝すうはい(フェティシズム)という。そして物神崇拝すうはい馬鹿げばか たこと、と断定する人たちもすくなくはない。しかし、ぞくに、イワシの頭も信心からという。第三者からみて、全く無価値、かつ無意味であるようなものが特定の人間にとっては、絶対の価値と意味をもつこともすくなくないのだし、われわれはおしなべて、なんらかの物神崇拝すうはいの対象をもっているものなのだ。いや、わたしにいわせれば、むしろ物神崇拝すうはいの対象をなにも持っていない人こそが、実は不幸なのだ。

加藤かとう秀俊ひでとし「衣の社会学」より)