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音読の丘
 音読で、読む力、書く力が育つ。
 オンドリくんの 音読の丘
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※音読の丘は、家庭での音読の練習用として使ってください。
1.音読する文章が2つある場合は、最初の方の文章を音読してください。
2.はじめに、音声入力を始めるのボタンを押してください。
3.音読が終わったら音声入力を止めるのボタンを押してください。
4.音声入力を止めたあと、結果を送信するのボタンを押してください。



 【1】日本は豊かな国である、という。
 一九八八年、日本人一人あたりのGNPは、名目で三百二万六千円(二万三千六百二十ドル)。すでに、一九八六年以来、アメリカを追いこしている。
 【2】日本の国土面積は、アメリカの二十五分の一しかないのに、地価の総額は、アメリカ全土の四倍以上(一九八七年末、千六百三十七兆円)であるという。
 日本人の個人貯蓄(ちょちく)合計は、約五百八十兆円。一年間のGNPをはるかに超える(こ  )。【3】法人企業(きぎょう)の交際費は、年間約四兆二千億円(一九八七年、国税庁しらべ)、一日に百十五億円の支出である。
 こんな数字をいちいち持ち出すまでもない。店頭にあふれるかずかずの商品。セリーヌもバーバリーも、ごくふつうに色とりどりの服装をした若者たち。【4】毎日の食事と残飯の山。捨てても捨てても、すぐいっぱいになる屑(くず)かご。粗大(そだい)ゴミ捨て場の家具や電気製品。
 海外旅行の日本人は空港にあふれ、旅行だけではこと足りずに、海外の不動産や美術品を買いあさる。【5】若者たちの結婚(けっこん)費用の平均が七百万円以上とか、政治家の一夜のパーティーに何十億円もの政治資金が集まる、などときけば、日本の社会は上から下まで金あまり現象であふれかえっているようにみえる。
 【6】そんな日常の経験を通して、私たちは、いやでも日本が金持ちの国であることを知らされている。
 もともと経済活動は、人間を飢え(う )や病苦や長時間労働から解放するためのものであった。経済が発展すればするほど、ゆとりある福祉(ふくし)社会が実現されるはずのものであった。
 【7】それなのに、日本は金持ちになればなるほど、逆である。人びとはさらに追い立てられ(先進国で最も長い労働時間)、子どもは偏差(へんさ)値で選別され(世界中の子どもを取材している絵本作家ビャネール多美子さんは「日本の子どもほど自己決定権を奪わ(うば )れたかわいそうな子はいない」と言う)、自然はなおも破壊(はかい)されていく。
 【8】効率を競う社会の制度は、個人の行動と、連鎖(れんさ)的に反応しあっているから、やがては生活も教育も福祉(ふくし)も、経済価値を求める効率社会の歯車に巻きこまれるようになる。【9】競争は人間を利己的にし、一方が利己的になれば、他の者も自分を守るために利己的にならざるを得ないから、万人は万人の敵となり、自分を守る力はカネだけになる。
 【0】そんな社会では、人間の能力は、経済価値をふやすか否か、で判定され、同じように社会のために働いている人であっても、経済価値に貢献(こうけん)しない人は認められることが少ない。
 ある財界人は、「日本は企業(きぎょう)の優劣(ゆうれつ)を、利潤(りじゅん)の大小によって序列づけしてしまい、たとえ良心的、個性的、創造的というような独特な社風を持つ企業(きぎょう)があっても、利益が大きくなければ、評価されない」と嘆い(なげ )ていた。
 そんな日本で、福祉(ふくし)のために献身(けんしん)的に働く人を高く評価するわけがない。その仕事が、どんなに社会的に必要なものであっても、経済価値に無縁(むえん)な老人や身体障害者や精神障害者のために働く人への社会的評価は、きわめて低い。福祉(ふくし)事務所で、保護を必要とする人たちのために親身になって働く職員よりも、生活保護を申請(しんせい)する困窮(こんきゅう)者を水ぎわ作戦として追いはらう職員の方が有能と評価される。それは、つまり、経済価値にとってマイナスである社会保障に対して、財政支出を抑制(よくせい)するのが能吏(のうり)だ、という考えに立っているからである。

 (暉峻淑子(てるおかいつこ)『豊かさとは何か』より)