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音読の丘
 音読で、読む力、書く力が育つ。
 オンドリくんの 音読の丘
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※音読の丘は、家庭での音読の練習用として使ってください。
1.音読する文章が2つある場合は、最初の方の文章を音読してください。
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3.音読が終わったら音声入力を止めるのボタンを押してください。
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 【1】中国には、数限りなくいっているし、ベトナムにはこれで三度目だ。北朝鮮(きたちょうせん)ははじめてで、近くて世界で最も遠い国には興味があった。報道で伝えられてくるものは、情報としてはともかく、肌(はだ)ざわりが感じられない。【2】そこにはどんな空気が流れているか、闇(やみ)の濃(こ)さはどのくらいであるかと、物書きには実感が大切だ。実感ばかりに頼っ(たよ )て歴史の大きな流れを見落としがちになるという欠点は充分(じゅうぶん)にわかっているつもりで、小さな真実のようなものを拾い集める旅をしてきた。【3】駆け足(か あし)で通り過ぎていく旅人にはそれしかできないからなのだが、旅というのは表層をかろやかに浮遊(ふゆう)するというようなものだろう。旅の快感に身をひたすということなのかもしれない。それが昔から私がとってきた方法なのだよ。
 【4】君の年齢(ねんれい)よりもう少し若いぐらいの時から、私はリュックを担ぎゴムゾウリをはいて、アジアの大地をぎらぎらと巡っ(めぐ )てきた。最初に踏みしめ(ふ   )たのは下関から船に乗ってたどり着いた韓国(かんこく)の釜山(ぷさん)で、次は横浜(よこはま)から留学生船と呼ばれるフランス郵船の貨客船に乗って上陸した香港(ほんこん)とバンコクだった。【5】バンコクからプノンペンに飛んだのが、生まれてはじめて乗った飛行機だったよ。
 あの頃(ころ)、せいぜい遠くまでいったといえるのが、インドだった。結果的にアジアにこだわってきたといえるのだが、その理由は安くいけるということからだ。【6】運賃も近いから安いし、食う寝る(ね )も安くすんだ。安くて心が充たさ(み  )れるというのが、当時の私の方向感覚であった。もちろん今もそれはたいして変わっているとはいえない。
 あの頃(ころ)のアジアには変わらないことへの安らぎというようなものがあった。【7】悠久(ゆうきゅう)の時に充足(じゅうそく)してたゆたっているような感覚があり、高度成長期にはいり経済活動に邁進(まいしん)しはじめた国からやってきた若者には、なくしてしまった過去を訪ねるような趣き(おもむ )があったよ。ソウルやバンコクの路地から、子供の私が駆け(か )てくるような雰囲気(ふんいき)があったのだ。
 【8】今、アジアの国々はそれぞれの道を歩いている。当時、先頭を全力疾走(しっそう)していた日本は少しくたびれ、未知の世界を前に立ち暮れているような風情である。一方、北朝鮮(きたちょうせん)以外の国々は歩調をあわせ、同じ方向に向かって走りだした。【9】それは日本が走ってきたと同じような道で、その功罪を知っている私は一定の危惧(きぐ)を禁じ得ないのである。あんまり速く走るとまわりの風景も見えないし、疲れ(つか )て余裕(よゆう)もなくなってしまう。【0】それに、物質的な満足など、人の喜びのほんの一部なのだ。衣食の足りているもののいう言葉だといういい方もあるが、今私たちの国をおおっている虚ろ(うつ )さを彼ら(かれ )にどう伝えたらいいのだろう。
 君たちはこれからどのように生きようとしているのか、と考えると、私は暗澹(あんたん)としてくる。時代はいつも暗澹(あんたん)としていて、ことに若者は暗澹(あんたん)としている。私は暗澹(あんたん)のリュックを担ぎ、アジアの大地を一歩また一歩と暗澹(あんたん)として歩を運んでいたといえる。これからは君たちの時代なのだが、アジアの人たちと暗澹(あんたん)たる気分を分けあっていくよりしょうがないのではないかと思う。これから無限に希望のある時代とはとてもいいがたいのだ。(中略)
 温暖化している地球で、ことにアジアは熱い場所だ。将来の地球の運命を決める場所といってもよいかもしれない。若い君に、いまだ固まらない熱い岸辺を歩くことを、私はすすめたい。