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音読の丘
 音読で、読む力、書く力が育つ。
 オンドリくんの 音読の丘
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※音読の丘は、家庭での音読の練習用として使ってください。
1.音読する文章が2つある場合は、最初の方の文章を音読してください。
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 美しい景色(けしき)をみて思わず、「きれいね」と口にでて、たのしい思いになる、それでもう十分とも思いますが、そのたのしい思いにさせてくれるものの姿(すがた)を、たしかめてみましょう。
 美しいものと、美しくないものと、わたくしはいま自分の部屋を見まわして、よりわけてみました。
 机(つくえ)の上のペン皿にあるえんぴつ、何本かのえんぴつの中で美しく目にうつるのは、けずりたてのえんぴつです。シンがまるくなったり、折れ(お )たままのは美しいとは思えません。
 お皿に盛っ(も )たバナナは、あざやかな黄の色をしていて美しい。でも実をたべてしまった皮は、皮になった瞬間(しゅんかん)に、もう美しいとは思えませんし、色もまたたちまち黒ずんできたなくなってしまいます。
 けずりたてのえんぴつが美しく目にうつるのは、「どうぞ、いつでもすぐに使えますよ。」と、すぐに役にたつ姿(すがた)を見せてくれているからでしょう。
 バナナの皮も、中に実をつつんでいるという、使命をもっているときは美しいのですが、その使命が終わって皮だけになった瞬間(しゅんかん)に美しくなくなります。
 こうしたことを思うと、人に心よい感動をあたえる美しさとは、そのものが役にたつという姿(すがた)を見せているところにあるのではないかと思われます。
 花が美しい、木々が美しいというのは、その命の美しさを感じるところにあります。命とは活動することであって、つまり、役目をはたしている姿(すがた)です。花も木も、せいいっぱいに生き、そして自分たちの子孫(しそん)を永続(えいぞく)させるために、花を咲かせ(さ  )、実をならし、その命を充実(じゅうじつ)させて、活動しているのです。
 わたくしたちは働く(はたら )人を美しいと見ます。どんなにどろんこでも、汗みどろ(あせ   )でも、働く(はたら )姿(すがた)は美しい。どろんこも、汗(あせ)も、働く(はたら )姿(すがた)の美しさを引きたてます。これは、働く(はたら )という行為(こうい)が、活動そのものであり、役だつ使命をはたすことであり、汗(あせ)もどろんこもまた、そのためにあるからです。
 でも、働く(はたら )ことをやめて、食卓(しょくたく)にむかったときの、汗みどろ(あせ   )、どろんこは、きたない、もう美しくは目にうつりません。このときの、どろんこや汗(あせ)は、労働(ろうどう)という中味をとってしまったあとの残りもの(のこ   )、バナナの皮みたいな存在(そんざい)になってしまったからでしょう。食事をするという行為(こうい)に、どろんこは不要(ふよう)です。そこで、きれいにさっぱりと洗い(あら )おとさなければなりません。
 ですから、同じものでも、そのものが、そのものとして役にたたない場所にあるときは、美しく目にうつりません。
 髪の毛(かみ け)は、髪(かみ)にあるから美しい。ぬけおちた髪の毛(かみ け)が、食物の中にでもはいっていたら、とてもゆううつです。
 ショーウィンドーの商品がみな美しく見えるのは、「このとおり、役にたちますよ」と、マネキンに着せてみせたりして、たのしく、わかりやすく飾ら(かざ )れてあるからでしょう。
 わたくしたちのおしゃれや、動作、マナーなども、その場にふさわしく、役にたつかたちであるとき、美しく見えるのです。
 急ぐときは、きびきびした動作が美しく、人にものをたずねるときは、その人に教わるという気持ちをあらわすのに必要(ひつよう)な謙虚(けんきょ)な動作、教えるときは相手によくわかるようにする動作が、気持ちよく美しくうつります。
 ここでひとこと、気づいたことをいいそえますと、必要(ひつよう)と実用とは少しちがいます。
 たとえば道を教わるとき、わたくしたちは、「すみませんが」ということばをそえますが、実用という面からいうと、このことばはなくてもよいわけです。「東京駅はどっちですか?」といえば、用はたせます。でも、それではぶっきらぼうです。「すみませんが」といいそえることで、心のあたたかみが伝わり(つた  )ます。「どうぞお茶をお飲みください」のときの「どうぞ」も同じで、こうしたやさしさがあって、ことばも、動作も美しくなります。
 「必要(ひつよう)」と「実用」とを、どうぞ、まちがえないでください。
 わたくしたちが生きてゆく上では、実用的(てき)な衣(い)・食・住のほかに、遊ぶことも、たのしむことも、安らぐことも必要(ひつよう)です。そうした精神(せいしん)的(てき)に必要(ひつよう)なものとして、やさしさや美がつくりだされています。
(高田敏子(としこ)「詩の世界」)