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音読の丘
 音読で、読む力、書く力が育つ。
 オンドリくんの 音読の丘
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※音読の丘は、家庭での音読の練習用として使ってください。
1.音読する文章が2つある場合は、最初の方の文章を音読してください。
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 さああまがえるどもはよろこんだのなんのって、チェッコという算術(さんじゅつ)のうまいかえるなどは、もうすぐ暗算をはじめました。いいつけられるわれわれの目方は拾匁(もんめ)(約(やく)三十七グラム)、いいつける団長(だんちょう)のめかたは百匁(もんめ)、百匁(もんめ)わる拾匁(もんめ)答十。仕事は九百貫目(かんめ)、九百貫目(かんめ)かける十、答九千貫目(かんめ)(約(やく)三万四千キロ)。
「九千貫(かん)だよ。おい。みんな。」
「団長(だんちょう)さん。さあこれから晩(ばん)までに四千五百貫目(かんめ)、石をひっぱってください。」
「さあ王様の命令(めいれい)です。引っぱってください。」
 今度は、とのさまがえるは、だんだん色がさめて、あめ色にすきとおって、そしてブルブルふるえてまいりました。
 あまがえるはみんなでとのさまがえるをかこんで、石のあるところへつれて行きました。そして一貫(いっかん)目ばかりある石へ、綱(つな)をむすびつけて
「さあ、これを晩(ばん)までに四千五百運べばいいのです。」といいながらカイロ団長(だんちょう)の肩(かた)に綱(つな)のさきを引っかけてやりました。団長(だんちょう)もやっと覚悟(かくご)がきまったと見えて、持っていた鉄の棒(ぼう)を投げすてて、目をちゃんときめて、石を運んで行く方角を見さだめましたがまだどうもほんとうに引っぱる気にはなりませんでした。そこであまがえるは声をそろえてはやしてやりました。
「ヨウイト、ヨウイト、ヨウイト、ヨウイトシャ。」
 カイロ団長(だんちょう)は、はやしにつりこまれて、五へんばかり足をテクテクふんばってつなを引っぱりましたが、石はびくとも動きません。
 とのさまがえるはチクチクあせを流して、口をあらんかぎりあけて、フウフウといきをしました。まったくあたりがみんなくらくらして、茶色に見えてしまったのです。
「ヨウイト、ヨウイト、ヨウイト、ヨウイトシャ。」
 とのさまがえるはまた四へんばかり足をふんばりましたが、おしまいのときは足がキクッと鳴ってくにゃりとまがってしまいました。あまがえるは思わずどっとわらいだしました。がどういうわけかそれから急にしいんとなってしまいました。それはそれはしいんとしてしまいました。みなさん、このときのさびしいことといったら私(わたし)はとても口ではいえません。みなさんはおわかりですか。ドッといっしょに人をあざけりわらってそれからにわかにしいんとなったときのこのさびしいことです。
 ところがちょうどそのとき、またもや青ぞら高く、かたつむりのメガホーンの声がひびきわたりました。
「王様のあたらしいご命令(めいれい)。王様のあたらしいご命令(めいれい)。すべてあらゆるいきものはみんな気のいい、かあいそうなものである。けっしてにくんではならん。以上(いじょう)。」それから声がまたむこうのほうへ行って「王様のあたらしいご命令(めいれい)。」とひびきわたっております。
 そこであまがえるは、みんな走りよって、とのさまがえるに水をやったり、まがった足をなおしてやったり、とんとんせなかをたたいたりいたしました。
 とのさまがえるはホロホロ悔悟(かいご)のなみだをこぼして、
「ああ、みなさん、私(わたし)がわるかったのです。私(わたし)はもうあなたがたの団長(だんちょう)でもなんでもありません。私(わたし)はやっぱりただのかえるです。あしたから仕立屋をやります。」
 あまがえるは、みんなよろこんで、手をパチパチたたきました。
 次の日から、あまがえるはもとのようにゆかいにやりはじめました。

(宮沢(みやざわ)賢治(けんじ)「カイロ団長(だんちょう)」)