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音読の丘
 音読で、読む力、書く力が育つ。
 オンドリくんの 音読の丘
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※音読の丘は、家庭での音読の練習用として使ってください。
1.音読する文章が2つある場合は、最初の方の文章を音読してください。
2.はじめに、音声入力を始めるのボタンを押してください。
3.音読が終わったら音声入力を止めるのボタンを押してください。
4.音声入力を止めたあと、結果を送信するのボタンを押してください。



 Kがのぼれるかぎりの高いところまでのぼりついて、ほっとひと息ついたとき、かん高い声で話しあう水夫(すいふ)たちの声がしだいに近づいてきた。
 Kは枝(えだ)のしげみに、身体をかくすようにして彼ら(かれ )の声に注意を配っていた。
 水夫(すいふ)たちが、家の前にあらわれた。
 水夫(すいふ)たちは、声高にしゃべりあっていた。
 ひとりの黒人が、入り口の戸があいているのを発見して、指をさしながら大声で仲間(なかま)に告げ(つ )ていた。
 水夫(すいふ)たちは雨戸をたたいたり、交互(こうご)に入り口から中をのぞいたりした。しかし、だれ一人として一歩も中に入ろうとする者はいなかった。
 Kはそれを見て、彼ら(かれ )が悪者でないことを心に感じとった。
 家の中から、何の返事もないので、水夫(すいふ)たちはすごすごと通路にひきかえし、また、つぎの家へおしかけていこうとした。
 水夫(すいふ)の一群(いちぐん)の中で、いちばん最後(さいご)に、入口をのぞいた男が榕樹(ようじゅ)の樹(き)の下を通りすぎようとして足をとめた。その男はズック製(せい)のからバケツをさげていた。ほかの水夫(すいふ)たちより少し年をとった白人であった。彼(かれ)はズックのバケツを下におき、ポケットからしわくちゃのハンカチをひっぱりだして、顔や、首や、シャツからはだけた胸(むね)や、腕(うで)の汗(あせ)をふいた。オールのように太い腕(うで)は日やけして、金色の毛がいっぱいに生えていた。この水夫(すいふ)は榕樹(ようじゅ)のかげで少し涼ん(すず )でいくつもりらしかった。
 あんのじょう、彼(かれ)は煙草(たばこ)をとりだして火をつけた。
 Kは息をのんで、見つめていた。
 男は、煙草(たばこ)をうまそうに、ひと口すいこむと、ふいに上を向いて、榕樹(ようじゅ)を眺め(なが )まわした。
 Kがあわてたしゅんかん、持っていた枝(えだ)がゆれて、葉が、かすかではあるが、音をたてた。
 Kと西洋人の水夫(すいふ)は、視線(しせん)をあわせてしまっていた。
 水夫(すいふ)は、両手をさしのべて、Kをうけとめてやろうというようなしぐさをした。そして目にはやさしい笑い(わら )を浮かべ(う  )ていた。
 Kは決心をして、そろそろおりはじめた。
 おりている途中(とちゅう)、西洋人が何か一言、二言いった。きっと、「気をつけなさい」といってくれているのにちがいなかった。
 Kは地面におりたって、きまり悪そうな顔をしていると、船員はほほえみながら、手をさしだした。腕(うで)には金色の毛が生えている。
 男は、ズックのバケツを指さして、何か話した。
 Kは、言葉にはわからなかったが、水をほしがっているのだということに気がついた。
 Kは、バケツを持って井戸(いど)ばたへ案内(あんない)した。
 その男は、大声を出して仲間(なかま)を呼び(よ )集めた。水夫(すいふ)たちは騒ぎ(さわ )ながら、ひきかえしてきた。彼ら(かれ )は、大げさすぎるほどの表情(ひょうじょう)で喜び(よろこ )の気持ちをあらわしていた。
 Kがつるべで水をくもうとすると、水夫(すいふ)たちは、いっしょに手伝っ(てつだ )て、勢い(いきお )よくくみあげた。そしてズックのバケツにいれて、かわるがわる馬のように水を飲んだ。何べんもつるべでくみあげて、全員がたっぷりと水を飲んでから、バケツに水を満たし(み  )てひきあげた。帰りぎわに、Kはもう一度、少し年をとった水夫(すいふ)と握手(あくしゅ)した。
 エビア号の船員たちは、三週間ほどたって、村から姿(すがた)を消した。
 Kは最初(さいしょ)の夕方、エビア号を見て以来(いらい)、美しい帆船(はんせん)の姿(すがた)を二度と忘れる(わす  )ことはできなかった。

(庄野(しょうの)英二(えいじ)「白い帆船(はんせん)」)