未ログイン ログイン
音読検定
 楽しくできる音読で、読む力、考える力が育つ。
 音読検定

★このページは、現在工事中です。しばらくお待ちください。
2026/9/22

1.はじめに、音声入力を始めるのボタンを押してください。
2.音読が終わったら音声入力を止めるのボタンを押してください。
3.音声入力を止めたあと、結果を送信するのボタンを押してください。




 【1】例えば市町村で残酷ざんこくな仕打ちをしている地方警察の暴力行為こういのようなものから、IMF(国際通貨基金)やG7、世界銀行といった総合的な中枢ちゅうすう機構に至る、政治を操って、社会の基本的政策を決定する組織まで。【2】まず大切なことはそういう組織が存在しているということを認識し、そしてそれらと戦うということさ。――レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン「機械に抗するこう  怒りいか 」とでも訳すことのできる、このロックバンドは、たかだかまだ二枚のアルバムをリリースしたにすぎない。【3】だが、彼らかれ は文字通り、怒りいか を発し続けているバンドである。アメリカン・インディアンの男性で、FBIの捜査そうさ官を殺害した容疑で長期拘留こうりゅうされているレナード・ぺルティエや、【4】元ブラック・パンサーのメンバーで黒人ジャーナリストのマミア・アブジャーマルの解放のために活動し、ネオナチ反対のコンサートを開いたり、あるいは、コンサート会場で売られる高すぎるTシャツに抗議こうぎし、検閲けんえつ制度にプロテストしたりもする。【5】ただやみくもに抗議こうぎしているだけではないか、と言うのならば、その通りと答えなければならぬかもしれない。【6】あらゆる権力、あらゆる制度に対して否定の行動を起こすことこそロックであるとする、書いていて思わず赤面するほどの古くさいロックの定義を今でも信じているバンドにすぎないのではないか、と言われれば、彼らかれ がある意味でストレートすぎるほどの政治的なメッセージを隠そかく うとしないハードロックバンドであることは認めなければならないだろう。
 【7】だが彼らかれ にはアクチュアリティがある。
 アメリカやヨーロッパの社会が抱えるかか  諸問題のうち、主として若者層の病巣と考えられる幾ついく かの問題に対して、彼らかれ はその切迫せっぱくした事態を正確に感受している。【8】そして事態に抗議こうぎする歌詞を書き、轟音ごうおんの中に挿入そうにゅうし、アルバムをリリースするという戦略を実践じっせんしているのである。事実、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンほど戦略的なバンドはいない。【9】それはあらゆる文化は政治的であるというテーゼを、強く彼らかれ が信じているからである。「文化そのものが政治的だということを否定しないということは、とても重要なことだと思う」と彼らかれ は語っている【0】自分たちの音楽それ自体がすでに一個の政治であり、抗議こうぎする対象もまた政治である。ここで私たちが注目しなければならないのは、戦う相手である政治が、「機械」と名指されていることだ。バンド名は虚飾きょしょくではない。権力の末端まったんで起こる暴力から、権力の中枢ちゅうすう神経である総合的な組織化まで、すべてが「機械」と呼ばれているのである。ここでの「機械」は国家と等号で結ばれる存在ではない。そうした枠組みわくぐ では捉えとら られぬ、私たちの首をじわじわと締めつけるし    、ごく具体的であり、同時に、捉えとら どころのない途方とほうもない拡がりを待った存在こそが、「機械」と名づけられている。(中略)
 ちょうど百年前になる。ヴァレリーは一九世紀末、こんなことを書いている。「方法」が制覇せいはするのだ、と。方法は、個人の自由な裁量権の及ぶおよ 範囲はんい狭めせば てゆく。いや、その範囲はんいを限りなくゼロに近づけてゆくことこそが、「方法」の理想なのである。(中略)
 「方法」はだれにとっても反復可能なものであり、いかなる人間でもその「方法」さえ用いれば、同一の結果に到達とうたつする。このとき「方法」を用いる側の個体性も、破壊はかいされる。優秀ゆうしゅうな人間の施すほどこ 術が、優秀ゆうしゅうな結論を招来するという、神話が崩壊ほうかいするのである。英雄えいゆうと呼ぶに相応しい大文字の個人などいなくなり、均質化した個人だけがまるで砂漠さばくの砂のようにあらゆる領域を埋めう 尽くすつ  ような事態――。「模倣もほう可能なものだけ模倣もほうされれば凡庸ぼんよう後継こうけい者の手段を増やすだけ」のものが、方法としてそこにあり、次第に世界はこうした「方法」に制覇せいはされることになるだろう、とヴァレリーは予言していた。(中略)ここで語られる「方法」は、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンが語っていた「機械」と同じである、と私は思う。あらゆる機構の細部にまで浸透しんとうし切った「機械」こそが、私たちから個体性を剥奪はくだつする「方法」にほかならない。

野後史「機械に憑かれつ  、そしてこうする」)