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音読の丘
 音読で、読む力、書く力が育つ。
 オンドリくんの 音読の丘
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※音読の丘は、家庭での音読の練習用として使ってください。
1.音読する文章が2つある場合は、最初の方の文章を音読してください。
2.はじめに、音声入力を始めるのボタンを押してください。
3.音読が終わったら音声入力を止めるのボタンを押してください。
4.音声入力を止めたあと、結果を送信するのボタンを押してください。



 【1】一人一人の話が、みなそれぞれに違っ(ちが )ているからこそ面白いのだが、その一人一人の違う(ちが )話を聞いているうちに、「宇宙飛行士たちは、やはりみんな、宇宙で、ある共通の体験をしているな。」と私は確信するようになった。
 【2】ただ、たぶんその共通体験は、ほとんど無意識のうちに、直観的になされるものだから、必ずしも彼ら(かれ )自身が認識しているとは限らない。地球に戻っ(もど )てから宇宙体験の話をするとなると、どうしてもそこに、宇宙飛行士一人一人の、この地球での個人的な歴史や価値観、現在の環境(かんきょう)などが関わってくる。【3】だから、話の表面のディテールが違っ(ちが )てくる。しかし、その表面的な違い(ちが )にとらわれず、その話の奥(おく)に秘めたものを注意深く探ってみると、そこに共通体験が見えてくるのだ。
 【4】結論を先に言ってしまうなら、彼ら(かれ )はみな、宇宙で『私』という個体意識が一気に取り払わ(と はら )れるような体験をしている。
 この体験を最もわかりやすく話してくれたのは、アポロ9号の乗組員だったラッセル・シュワイカートだ。
 【5】彼(かれ)が、月面着陸船のテストを兼ね(か )て宇宙遊泳している時のことだった。
 彼(かれ)の宇宙空間での仕事ぶりを宇宙船の中から撮影(さつえい)するはずだったカメラが突然(とつぜん)故障し、動かなくなった。【6】撮影(さつえい)担当のマックデビッド飛行士は、シュワイカートに、そのまま何もせず五分間待つように言い残して宇宙船の中に消えた。
 シュワイカートに、突然(とつぜん)まったく予期しなかった静寂(せいじゃく)が訪れた。
 それまで、秒刻みでこなしていた任務が一切なくなってしまったのだ。
 【7】地上からの交信も途絶え(とだ )た。
 そして、真空の宇宙での完全な静寂(せいじゃく)。
 彼(かれ)は、ゆっくりとあたりを見回した。
 眼下には、真青に輝く(かがや )美しい地球が拡がっている。
 視界をさえぎるものは一切なく、無重力のため上下左右の感覚もない。【8】自分はまるで生まれたままの素裸(すっぱだか)で、たった一人でこの宇宙の闇(やみ)の中に漂っ(ただよ )ている、そんな気がした。
 突然(とつぜん)、シュワイカートの胸の中に、なにか言葉では言い表すことのできない熱く激しい奔流(ほんりゅう)のようなものが一気に流れ込ん(なが こ )できた。【9】考えた、というのではなく、感じた、というのでもなく、その熱い何かが、一気にからだの隅々(すみずみ)にまで満ちあふれたのだった。彼(かれ)は、ヘルメットのガラス球の中で、わけもなく大粒(おおつぶ)の涙(なみだ)を流した。この瞬間(しゅんかん)、彼(かれ)の心に、眼下に拡がる地球のすべての生命、そして地球そのものへの言い知れぬほどの深い連帯感が生まれた。
【0】「今、ここにいるのは『私』であって『私』でなく、すべての生きとし生ける者としての『我々』なんだ。それも、今、この瞬間(しゅんかん)に、眼下に拡がる、青い地球に生きるすべての生命、過去に生きたすべての生命、そして、これから生まれてくるであろうすべての生命を含ん(ふく )だ『我々』なんだ。」
 こんな、静かだが、熱い確信が彼(かれ)の心の中に生まれていた。
 シュワイカートが宇宙空間で体験したこの『私』という個体意識から『我々』という地球意識への脱皮(だっぴ)は、今、この地球に住むすべての人々に求められている。

 (龍村仁(たつむらじん)の文章による。)