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音読の丘
 音読で、読む力、書く力が育つ。
 オンドリくんの 音読の丘
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※音読の丘は、家庭での音読の練習用として使ってください。
1.音読する文章が2つある場合は、最初の方の文章を音読してください。
2.はじめに、音声入力を始めるのボタンを押してください。
3.音読が終わったら音声入力を止めるのボタンを押してください。
4.音声入力を止めたあと、結果を送信するのボタンを押してください。



 子どもたち全員と学校の裏手の雑木山に出かけました。日かげの沢(さわ)にはまだ汚れ(よご )た雪が残っていましたが、陽だまりは枯れ葉(か は)が柔らかい(やわ   )熱を含み(ふく )、そこを歩くときに頬(ほお)に暖かみを送ってきます。子どもたちは歓声(かんせい)をあげ、木に登ったり、蔓(つる)にぶらさがったり、カタクリを摘ん(つ )だりしました。教室にいるときとは別人のようでした。
 枯れ草(か くさ)に腰(こし)をおろしていると、六年生らしい女の子が寄ってきました。頬(ほお)に赤い痣(あざ)のあるひっそりとした感じの子でした。女の子はだまってわたしのそばにすわり、しばらく枯れ草(か くさ)を引き抜い(ひ ぬ )ては編んでいましたが、やがてぽつりと言いました。
「こんどの先生ァ、男先生も女(おな)ゴ先生もいい先生だね。」
「…………。」
 わたしはとっさにはこたえることができませんでした。今の今まで村や分校や子どもたちをよく思っていなかったような気がしました。わたしは小さな狼狽(ろうばい)を押し隠し(お かく )ながら、女の子の名前や家の仕事のことや兄弟のことを聞きました。里枝というその女の子は、一言一言恥ずかし(は   )がるように言い淀み(い よど )ながら自分のことを語りました。訛(なまり)の強い方言は、わたしには耳ざわりなはずでしたが、おとなしい里枝の口からそれが洩れる(も  )と、素直にわたしのからだの中に溶け(と )こんでいくようでした。
 先生! とだしぬけに後ろから背中をたたかれ、わたしは思わず悲鳴をあげました。どんぐり眼(まなこ)の一年生の明が、眼をいっそう大きく見開き、息をはずませていました。
「先生ァ、おらァ卒業するまでいてくれるね。」
「どうして?」
「ほだって……。」
 明は後ろをふりかえりました。明をからかったらしい背の大きい男の子が朴の木(ほう き)によりかかり、照れ笑いを浮かべ(う  )てこっちを見ていました。
「兼吉(けんきち)がな。ハイカラ先生などァ一年で分校なんかやめて、すぐ町サ帰るって……。」
「先生はハイカラじゃないよ。」
「ハイカラださァ、金色の眼鏡かけてェ。」
 わたしは思わず笑いました。女学校の卒業記念に、役場の書記をしていた父が買ってくれた旧式の金縁(きんぶち)の眼鏡を、わたしは大事に使い続けていたのでした。

(三好京三「分校日記」)