森の長文/読解マラソン長文  ●文章類似度判定


 ハト時計 μ
 一時間ごとにハトが小窓から顔を出して「ポッポポッポ」と可愛らしい鳴き声で時刻を知らせてくれる「ハト時計」は、人気があります。カラクリ時計の元祖とも言えるこのハト時計ですが、じつはこの「ハト時計」というのは日本だけのものらしいのです。「ハト時計」は、昭和の初期にドイツから日本に入ってきた「カッコウ時計」がもとになっています。日本に入ると「カッコウ」から「ハト」に変身してしまったのは、どうしてでしょうか。
「カッコウ時計」の歴史をたどってみると、最初に作られたのは一七三〇年ころのドイツ南西部に広がるシュバルトバルト(黒い森)に囲まれたトリベルグ付近です。この地方では冬になると雪で閉ざされるため、家の中で作業のできる木工作りが盛んで、「森のモミの木に止まって鳴くカッコーの姿」を時計にあしらいました。
 そして、このカッコウの姿のある時計に、鳴き声がつくようになりました。最初に考えられた鳴き声は、にわとりのものでした。コケコッコーでは、目覚ましにはなりそうですが、かなりにぎやかな時計になります。評判があまりよくないために、カッコウの鳴き声にもどすと、それが大当たりになり、カッコウ時計が完成となりました。
 そして、日本に掛け時計として「カッコウ時計」が輸入されました。今の時代でもそうですが、掛け時計というのは、家を新築した時や、お店ができた時に贈り物として使われることが多いようです。つまり、縁起の良い時計だったのです。ところが、「カッコウ時計」の場合、「カッコウ」を漢字で書くと「閑古鳥」となります。閑古鳥とは、日本では「閑古鳥が鳴く」といって寂しく商売などが流行らないようすを意味するものでした。縁起が悪くて、売れないと判断して、日本で売る時に「カッコウ時計」から「ハト時計」に変身させたと言われています。それにカッコウの色は灰色で、白のハトに比べると地味でした。ハトが平和のシンボルと言われたことも理由の一つでしょう。
 こうして、今でも「ハト時計」は日本の掛け時計の定番として売られています。時間ごとに鳴く声が「ポッポッポー」というより「カッコー、カッコー」に近いように思えるのは、そういう理由があったのです。