森の長文/読解マラソン長文
●文章類似度判定
糸をつむぐ・機を織る η
みなさんは、『鶴の恩返し』や『瓜子姫』の話を知っていますか。どちらの話も、機を織る女の人が主人公になっています。日本の昔話を気をつけて読んでみると、女の人が機を織る場面がでてくる話がいくつもあります。
七夕は中国から伝わった話ですが、織姫は天の国で神様にささげる布を織っています。織姫に象徴されるように、日本では機を織る女の人は「神様に仕える特別な人」でもあるのです。日本の神様のことが書かれた『古事記』には乱暴者のスサノウが、神様の衣を織っている女の人の小屋に皮をはいだ馬を投げ込む話があります。スサノウはなんともはた迷惑な神様です。
ところで、西洋の昔話はどうでしょうか。
『三人のつむぎ女』では、糸紡ぎが嫌いな娘が「一日で大量の糸を紡げ」という課題を三人の紡ぎ女の力を借りて成し遂げます。『ルンペンシュティルツヒェン』では、粉屋の娘が「普通の麻から金の糸を紡げ」という課題を小人の助けを借りてやり遂げます。どちらの話も幸せをつかむために糸を紡ぐ能力が必要とされています。『いばら姫(眠りの森の美女)』のお姫様は糸を紡ぐ道具の「つむ」を手に刺したことで百年の眠りにつきます。『ホレばあさん』の女の子は、井戸に落とした糸巻きを拾うために井戸に飛び込み、ホレばあさんに会います。ここにでてくるのも、やはり糸紡ぎに使う道具です。
糸を紡ぐ女の人のことを英語では「スピンスター」と言います。スピンスターには「結婚していない女の人」という意味もあります。ここにあげた四つの西洋の昔話の主人公は、みな結婚していない女の人で、最後に王様王子様と結婚してお城で幸せに暮らします。機を織る人という意味の「ウィーバー」はとくに女の人を意味することはありません。
世界中のいろいろな国で、糸を紡ぎ機を織って布地を作ります。それなのに日本では糸紡ぎが昔話にでてくることはほとんどなく、逆に西洋の昔話に機織の場面がめったにないのはおもしろいことです。どうしてなのかその理由を考えていると、頭の中がこんがらがってきます。誰かこんがらがった頭の糸をほどいてくれませんか。