森の長文/読解マラソン長文  ●文章類似度判定


 マッチ箱の動物園 λ
 ジェリー・ダレルは動物が大好きな男の子でした。ある日、家にお客様が来ました。ジェリーのお兄さんは、お客様のたばこに火をつけてあげようとして、テーブルの上にあったマッチの箱をあけました。次の瞬間、お兄さんもお客様も大声をあげて逃げ出しました。マッチ箱に入っていたのは、マッチではなくて、生きたサソリの親子だったのです。きっとジェリーのしわざだな、とお兄さんはおこりながらも、あきらめました。
 大人になったとき、ジェリーはこう言いました。
「これが私の持った最初の動物園でした。サソリの親子の入ったマッチ箱が」
 さて、サソリの親子を手始めとして、ジェリーはどんどん動物を集めました。大体は二階の自分の部屋で飼っていたので、そこが次の「ジェリーの動物園」になりました。ジェリーのお父さんは早くになくなっていて、家族はお母さんと大きいお兄さんが二人、若いお姉さんが一人いました。みんな、「ジェリーの動物園」の動物たちがふえていくことには、文句を言いましたが、ひとたびジェリーが新しい動物を持って帰ると、みんなもかわいいと喜んで、飼うのを許してしまうのでした。
 ある時など、「ジェリーの動物園」にはこれだけの動物がいました。
 三種類のフクロウ。ハイタカ。ハヤブサ。マグソタカ。セグロカモメ。カササギ三羽。三匹の犬、羊、二十四匹のスッポン、八匹のミズヘビ。一匹のクモ。その上にお百姓さんに生き埋めにされて殺されかかった十二匹の子犬まで助けて帰ってきたこともあります。
 大人になるとジェリーは、動物園に送るためのめずらしい動物をアフリカまで行ってつかまえる仕事を始めました。動物園に送るのですから、つかまえた動物はみんな元気で生かしておかなければなりません。アフリカの村の人たちと協力して、ジェリーはそのころは珍しかった動物を一生けんめいつかまえようとしました。ある時はヤマアラシの針に全身をさされ、ある時は三メートルはあるニシキヘビがおりから逃げて食堂中が大騒ぎになったりしました。でも、帰りの船にのせるときには、動物たちのおりは百箱にもなっていました。それはまるで、「ノアの箱船」のようでした。ノアの箱船には、大洪水から助かるために、世界中の動物たちがひとつがいずつ乗っていたというのですが、それくらいたくさんの動物だったのです。ジェリーはどの動物もかわいがり、気持ちよくいられるように世話をしました。ところが、いざ動物園に送られることになると、ジェリーはがっかりしました。せっかく仲良くなった動物たちと別れなければいけないばかりか、動物園では飼い方もわからず、ひどい生活をさせるようになったところもあったからでした。その上アフリカでジェリーは、人間によって動物たちが住むところをなくしたり、ぜいたくをするために殺されたりしてほろんでいっていることを知りました。
 そこで、ジェリーはたいへんな努力をして自分の動物園を作ることにしました。それは、絶滅しかけた動物を保護し、ふやし、それから生まれ故郷に返す動物園でした。さらに、生まれ故郷の人々に、どんなに動物が大切か教育し、動物たちが住めるように自然をよみがえらせる仕事もする動物園でした。ジェリーはその「夢の動物園」を作るお金を集めるために、今までの経験をおもしろく本に書いて売ったり、いろいろなところで話をして、寄付をもらったりしました。
 ついに動物園の計画は実現しました。ジャージー野生動物保護動物園です。世界中からその動物園に協力し、勉強する人たちが集まってきました。動物園は今もありますが、二十五周年記念のとき、ジェリーは動物園で働く人たちから、すばらしいプレゼントをもらって、大声をあげました。
 それは、銀のマッチ箱に入った、金でできたサソリの親子の人形でした。
 誰もが、ジェリーの「最初の動物園」のことを知っていたのでした。