森の長文/読解マラソン長文  ●文章類似度判定


 働く犬・犬の嗅覚 τ
 犬を散歩に連れて行くと、しょっちゅうあたりのにおいをかぎまわっています。においをかぎ分ける力を「嗅覚」と言いますが、犬は人の百万倍もの嗅覚を持っていると言われています。また、犬は音にも敏感で、人に聞こえない音を聞く力も持っていますが、目はあまり良くなくて、遠くがよく見えないし、色もあまり見えていないようです。しかし、昼間よりも、夜など暗いところでは、人よりもよくものが見えるようです。犬は、人間ほど目がよくない代わりに、においや音でまわりの様子を感じ取っているようです。
 犬の鼻には、においを感じる細胞が、およそ二億個もあるそうです。これに対して、私たち人間は、およそ五百万個ですから、犬には人の四十倍もの、においを感じる細胞があることになります。
 犬が特に得意なのは、「酸」というもののにおいです。たとえば、台所にある「お酢」のにおいもその一つです。この「酸」のにおいなら、犬は人の一億倍ものかすかなにおいまで、かぎ分けることができるそうです。このすぐれた鼻を生かして、犬は私たちの社会でもとても役に立つ仕事をしてくれています。犯人や行方不明者のにおいをたどる警察犬、土砂崩れや地震の現場で生き埋めになった人を探す災害救助犬、外国からの荷物を検査する麻薬探知犬などがいます。
 人間を含めた哺乳類の汗や涙には、この「酸」のなかまがふくまれています。警察犬や災害救助犬は、このにおいをたどるよう、訓練されています。くつの底を通して、地面についたかすかなにおいまで、たどることができるそうです。
 また、六千人以上の死者が出た一九九五年一月の阪神淡路大震災の際、スイスやフランスからやってきてくれた災害救助犬がたいへん活躍し、多くの人を見つけてくれました。この時、日本ではまだ災害救助犬のことがあまり知られていなかったため、海外からのチームが空港で足止めされ、三日経ってからようやく現地に着いた、などということも起こりました。この反省から、現在では日本でも多くの災害救助犬が育てられるようになっています。
 麻薬探知犬は、空港や港など、外国から旅行者や荷物がたくさん入ってくる場所で活躍しています。麻薬とは、それを飲むと気持ちがよくなる代わりに、体にたいへん害があり、ふらふらしたり性格が変わったり、乱暴になって人に危害を加えたりする、とても危険な薬です。法律で禁止されていて、持っていたり、かくしていたりするだけでも逮捕されてしまいます。しかし、外国からこっそり持ち込もうとする人がいるので、麻薬探知犬の出番となります。麻薬探知犬は、麻薬のにおいをおぼえていて、隠されている麻薬を探し出すのです。
 また、最近では、「癌探知犬」の研究も、進められているそうです。犬が、癌にかかっている患者の吐く息をかぎ分けることができるかもしれない、というのです。
 このように犬の嗅覚はとてもすぐれていますが、それだけでは私たち人間のためになる仕事をさせることができません。犬がこのようにとても役に立つ仕事をしてくれるのは、彼らがとても遊び好きで、人間が好きだからです。犯人のにおいを追っている警察犬も、生き埋めの人を探している災害救助犬も、犬たちはたぶん、ゲームでもしているつもりなのでしょう。早くお目当てのものを見つけて、ほめてもらいたいのです。それは、犬と人間との、お互いのしっかりとした信頼関係があって初めて、りっぱな仕事になるのです。こんなに科学が発達した世の中になっても、機械がこの犬たちの仕事を代わりにこなすことはできません。
 そう、犬は、とても「ワンだふる」な、人間のパートナーなのです。