森の長文/読解マラソン長文
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ホタルの光 γ
毎年五月の終わりから七月にかけて、ホタルのすがたを見ることができます。夏の夜、水辺の草むらなどで、ホタルが光っているのを見た人もいるでしょう。ホタルは夕方、西の空がだんだん暗くなって星の光が見えはじめるころから、少しずつ光りはじめます。風がなくて空気が生あたたかい、月明かりのない夜に、多く飛ぶのが見られます。その光はとても美しく幻想的(げんそうてき)で、多くの人の心をとらえてきました。ではホタルは、何のために光るのでしょうか。
ホタルの光は、恋人と知り合うための信号です。ホタルのオスとメスは、真っ暗な夜に相手がどこにいるのか探します。しかし暗闇の中では、お互いのすがたを見つけるのは大変です。そこでホタルは、光で合図を送って、相手のすがたを探し出すのです。
まずはオスが一生懸命光を出して、暗闇のどこかにいるメスに信号を送ります。そして、それを草の陰から見て気に入ったメスは、自分も光を出して「オッケー」のサインを返します。そうしてオスはメスの光をたよりに、ゆらゆらと近づいて行くわけなのです。
ところがこの信号を利用して、オスのホタルをだますものがいます。それは、同じホタルのなかま、フォトゥリス属のメスです。このホタルは、別の種類のオスボタルが光ると、その種のメスの光りかたをそっくりまねして光るのです。すると、「オッケー」のサインと思いこんだオスが、喜びいさんで近づいてきます。フォトゥリス属のメスは、そんなオスボタルをつかまえて、ムシャムシャ食べてしまうのだそうです。
幸い、このフォトゥリス属のホタルは、日本には住んでいません。ですから日本のホタルは一安心、と言いたいところですが、まだまだ他におそろしい敵がいます。クモがそのひとつです。ホタル見物に行って、光りっぱなしで少しも位置の変わらないホタルは、たいていクモの巣にひっかかったホタルです。また、コウモリもホタルをとらえて食べると言われています。しかし、ホタルの最大の敵は、何と言っても人間です。
人間はホタルの住む小川の水を汚したり、水田に農薬をまいたりして、環境を破壊してきました。それだけではありません。ホタルが舞う季節になると、車に乗って大勢でホタル見物にやってきます。そして、車のヘッドライトや懐中電灯の光でホタルを照らします。中には、カメラのフラッシュをたく人もいます。ホタルにとって、これはとても迷惑なことなのです。ホタルは暗闇で光ることによって、恋人をさがします。そこに別の光がふりそそげば、うまく恋人を探せなくなり、その結果卵も産まなくなってしまうのです。
こうして、ホタルは年々その数を減らしています。あの美しい光を見る機会がなくなることは、人間にとっても不幸なことです。環境を美しく保つのはもちろんのこと、ホタルの恋をじゃましないで、そっと静かに見まもってあげたいものです。