森の長文/読解マラソン長文  ●文章類似度判定


 アジサイの花の色 τ
 うっとうしい梅雨の季節をいろどってくれる花に、アジサイがあります。この花は、いろいろな色に変化することで有名で、そのせいか、花言葉には「移り気な心」などというものもあります。その他の花言葉、「強い愛情」や「家族の結びつき」は、きっと、小さい花がたくさんあつまって咲いているところからきたのでしょう。
 アジサイの花の色は、咲き始めの緑がかった白っぽい青色から、薄いピンク、紫、そしてしだいに濃い紫や藍色に変わっていきます。この、色がついている部分は、じつは花びらではありません。葉が変化したもので、「がく」と呼ばれることもあります。本当の花は、このがくの真ん中に、ちょこんと小さく、丸くついています。このようにがくの部分が美しい花を「装飾花」といいますが、南国の花として派手な花を咲かせる、ブーゲンビリアやランもそうです。
 では、アジサイの花は、どうして色が変わるのでしょうか。
 どんな色のアジサイも、その色の素になっているのは、「アントシアニン」という色素です。この色素は、条件によって、赤い色を出したり、青い色を出したりすることができるのです。ここで、色の鍵を握っているのが、アジサイが土の中から吸い上げる、「アルミニウム」という金属です。これは、一円玉を作っている金属のことですが、土の中には、アルミニウムを始め、いろいろな金属が目に見えない形で溶けています。これを、植物の根が吸い上げるのです。
 アルミニウムが入ってくると、アジサイは青くなります。逆に、アルミニウムが少ないと、赤くなるのです。その中間は、紫になります。このアルミニウムは、土の性質が酸性だと、とてもよく吸い上げることができます。ですが、土の性質が中性か、アルカリ性だったら、アルミニウムがあまり溶けていないので、吸い上げることがむずかしくなり、花の色は赤くなるというわけです。こうして、土の性質によって、アジサイの色は変わるのです。ですから、おとなりのアジサイの色が気に入って分けてもらい、わが家に植えても、同じ色になるとは限らないのです。
 同じ木でも、花の色の出方がちがうのは、枝によって、このアルミニウムの吸い上げられ方がちがうからです。また、咲いている間に色が変化するのは、花の生長や老化に従って、色素の量が変わってくるためです。
 ところで、日本のアジサイを世界に紹介したのは、江戸時代の終わりころに日本にやってきたドイツ人の医者、フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトでした。この時代の日本は、「鎖国」の状態で、人も物も、自由に外国と行き来することはできませんでした。しばらくのあいだだけ日本に暮らした彼は植物にもたいへん興味を持ち、日本のいろいろな植物を持ち帰りましたが、その中でもひときわ大きくてきれいなアジサイに、「オタクサ」という名前をつけました。これは、シーボルトが日本にいる間に愛した女性、「お滝さん」の名前です。
 人間も、好きな人の前では赤くなったり、宿題を忘れて青くなったりしますが、これはアルミニウムとはまったく関係ないですね。