森の長文/読解マラソン長文
●文章類似度判定
たなばた祭り Κ
春の終わりごろ、すでに東の空にみえはじめてきた、はくちょう座、こと座など、夏を代表する星たちが、よくめだってきます。かんむり座は高くのぼり、南東の空からは、さそり座がすがたを見せています。
春の星座は、あたまの真上から西の空へうつりはじめ、長くよこたわったうみへび座は、あたまから西空へしずもうとしています。さすがに冬の星座はほとんどしずんで、ぎょしゃ座のカペラ、ふたご座のポルックスとカストルが低い空に光っているだけです。つゆにはいると、雨が多く、しばらくは美しい星空も見えない日がつづくかもしれません。
七月七日の晩、ささの葉に、願い事を書いた紙をつるしたことがあるでしょう。たなばたの主役は、おりひめ(こと座のベガ)と、彦星(わし座のアルタイル)です。この二つの星が天の川をはさんで光っていて、一年に一度、七月七日の晩に会うというのです。
たなばたの星まつりは、日本では平安時代に、身分高い人が庭に香をたき、五色の糸や、麦、そうめんなどをそなえ、たんざくに願い事を書いたのが、はじまりです。いっぱんの人々が星まつりをやるようになったのは、江戸時代からです。もとになった織姫と彦星の話は、中国から伝わってきたものです。
天帝(天をおさめる王さま)のむすめ織女は、うしかいの牽牛というりっぱな若者と結婚しました。二人はたいへんはたらきものなので、天帝もよろこんでいたのですが、結婚すると毎日遊びつづけ、あまり仕事をしなくなりました。天帝はおこって、二人を天の川の東と西にひきはなしてしまいました。しかし、織女があまりにもなげきかなしんでいるのを見て、まじめに仕事をするなら、一年に一度だけ会うのをゆるす、と約束しました。七月七日の晩、天の川の岸にくると、大きなはくちょう座(かささぎ)がとんできて、天の川の橋の役目をしてくれます。ところが、雨がふると、かささぎがとんできてくれません。そこで、中国の人は、一年にたった一度なのだから、会わせてあげたい。どうか、七月七日は雨がふりませんように、と願い、たなばた祭りを行ったのです。
では、たなばたの星の主役を探してみましょう。こと座のベガは、青白く光りかがやく一等星で、正確にいえば、一等星の二倍半の明るさの〇等星です。たなばたは七月七日ですが、ベガは五月の終わりごろには、もう東の空に美しく光っています。全天一のダイヤモンドともいわれ、とてもよくめだちます。
ベガのそばの二つの小さい星を、日本では「たなばたの子ども星」とよんでいますが、有名な羽衣の伝説にあわせて「天女の子ども星」とよんでいるところもあります。羽衣伝説というのは、地上におりてきた天女が、松の枝に羽衣をかけておいたところ、それを漁師にかくされたため、天へ帰れなくなった話です。この話は、けっきょくは、漁師に羽衣を返してもらった天女がよろこんで天へ帰るのですが、星の伝説の方では、そのとき、漁師の家でうんだ二人の子どもをつれて、天に帰ったという話になっているため、たなばたの子ども星とよばれているのでしょう。
たなばた星の彦星、わし座は、ベガにくらべ、一ヶ月ほどおくれてのぼってきます。たなばたの七月七日ごろでも、まだあまり高い空にはみえません。彦星はアルタイルという一等星ですが、ベガほど明るくはありません。さがすには、ベガとアルタイルと、もう一つ、はくちょう座の一等星デネブとできる大きな三角形をめじるしにします。この三角形は、デネブのところが直角で、夏の直角三角形と呼ばれています。
おりひめと彦星を見つけることができたでしょうか。なぜか、雨が多い梅雨の時期のたなばた祭り。わし座のベガが一番かがやく八月七日がたなばた祭りだったらよかったのに、と思い、七月七日の晴れを願う今日このごろです。